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「あを」を求めて、私はそっと海にいく|藍

屏風岩展望台
(京都府京丹後市)

仕事で大きな失敗をした。

最初から、嫌な予感に溢れてた。
スタート時点で、
ヨコやり、ムリやり。思いやりは
カケラもなかった。
思いがけないトラブルが、
断続的に起こっていた。

けち〈吝嗇〉がつく
何かをしようとする矢先に、いやな事が起こって、先の見通しが悪くなる

『新明解国語辞典』三省堂

運・不運というものが、
存在するのか分からないが、
悪いことは続くもの

一度コケると、坂道を転がるようにケチまみれ
どこかで押し留めんと焦るほど、
空回りは加速する。

脆くも崩れる自信の端で、
後悔だけが積もっていく。

***

そんな時、私が訪れるのがこの海。

日本三景のひとつ、天橋立からさらに車で北に約40分。
京都府の北部、日本海沿いを東西に走る国道178号線に屏風岩展望台がある。

この辺りには、高さ20mもある一枚岩「立岩たていわ」や、
明治31年建設の趣ある「経ケ岬きょうがみさき灯台」など
見どころが多い場所

そんな中でも私には、
断崖の際まで広がる棚田の緑と、
大地を削る荒波の、深く冷たい藍色が
緩急つけてせめぎ合う、
この厳しい海に、心を惹かれる。

荒波に立ちはだかる屏風岩

この藍色の海に向き合えば、私を寂寥感せきりょうかんが包みこむ。

深い深い悩みの淵を漂うときは、
優しい言葉や励ましよりも、
そっちの方が心地良い。

無理にもがいて頑張るよりも、
いっそ底まで落ち込む方が、
早く浮き上がることができる気がする。

夕暮れ時がいちばん好き


(つづく)

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