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SCPの世界における要注意団体「第五教会」について

なんだかよくわからない要注意団体である第五教会。数々の異常存在を擁する彼らは何が目的なのか?その正体とは?

第五教会について理解を深めるための文献としては、以下の2つの解説記事が挙げられます。
なぜ、君?様の【解説】反ミーム部門と第五教会を体系的に学ぶ
よゆう様の第五教会を更に体系的に解説していく

どちらも興味深く、素晴らしい内容ですので、ぜひぜひご覧いただきたいのですが、ここでは初学者の立場から、第五教会を総論的に見ていきたいと思います。

なお、個々の第五教会関連オブジェクトやtaleについては、以下の別記事にて紹介していますので、よろしければご覧ください。

第五教会

サムネイル画像の全体。ピンク(マゼンダ)は、第五主義及びSCP-3125に関連する特徴的な色となっています。

さて、この第五教会。教会と名がつくからには、何らかの宗教的な要素、言い換えれば神のような超越的な存在や目的を有していると考えられます。
SCP-1425「星のシグナル」において、第五教会は以下のように説明されています。

第五教会(The Fifth Church)(俳優、ミュージシャン、作家、テレビ司会者、その他有名人を含む多数のセレブリティを会員として持つ有力なカルト団体)

SCP-1425「星のシグナル」

この記述だけを見ると、第五教会は芸能界を中核としたカルト宗教のように思えますが、実際はそれだけにとどまりません。
この点について、第五教会ハブの「あらまし」では、第五教会の関係者は自らを以下のように語っています。

“教会”というのはそこに集う人々が周りにブン投げて回る単語でしかない。第五主義教会、第五主義の集い、第五主義出版、第五主義サイケデリックサーフロック、第五主義リップクリーム、エトセトラ。重要なのは“第五主義者(Fifthist)”だけ。

第五教会ハブ

要するに「第五主義」を信奉する人々は自らを第五教会と称してはいるものの、呼び方や組織形態などは実はどうでもよくて、その本質は彼らが信奉する「第五主義」という考え方にある、ということです。
この第五主義については、後述します。

第五主義を信奉する組織は、時代と場所を超え、名と形を変えて存在し続けてきたことが示唆されています。同じく第五教会ハブから引用します。

一時に存在する第五主義者の宗派は常に5つであり、これらは様々な時間軸で何度も作り直されています。
(中略)
1.各宗派は人々のグループです。一例としてはカルト教団だったり、何かの愛好者だったり、バンドのファン層だったりします。
(中略)
3.第五主義者の宗派は、まず第五主義とは全く無関係なものとして始まります。その後、第五主義者の概念へとゆっくり変貌を遂げ、その時点から現実を超越 ― 或いは歪曲 ― し始めます

第五教会ハブ

この記述をSCP-1425「星のシグナル」に当てはめてみると、以下の2点がわかります。
まず1点目は、SCP-1425「星のシグナル」においては、芸能界を中心とする第五教会が確認されていますが、これは同時に存在する5宗派のうちの1つに過ぎないのだ、ということ。
実際のところ、SCP-1425「星のシグナル」事件の裏で「南部第五信徒(SCP-1982)」が暗躍していたことが示唆されています。

そして2点目は、第五主義と全く関係のない「芸能界」という既存のグループ・ネットワークを第五主義の概念が侵蝕し、変貌した結果が第五教会である、ということです。
実際、SCP-1534「最善のやり方」ではスーパーマーケットを、SCP-6775「E」では政治機構を通じた第五主義が確認されており、芸能界ルートとは別路線での勢力拡大であると思慮されます。

歴史的な面から言えば、SCP-2517「これが私がキノコの上に神を見た時」では、ギリシア文明とローマ世界において、「5つの名前の神の秘儀」または「5つ星のカルト」として知られる宗教セクト(カルト)が第五主義を信奉していたことが記述されており、古代の世界から第五主義が暗躍していたことが窺えます。

まとめると、第五教会は財団が把握した当初は「芸能界に蔓延するカルト宗教」でしたが、その後に様々な形で第五主義者が存在することが判明したことから、報告書を読み進める上では、単に「第五主義を信奉する人々の集まりの総称」と捉えて良いと思われます。
実際、日本支部におけるハブやタグの名称は「第五教会」ですが、本家のそれは「fifthist(第五主義者)」であり、より実態に即していると言えます。

第五主義

さて、第五教会の本質である「第五主義」とは、具体的にどのようなものでしょうか。
第五教会ハブ「勝手にやっとけ」には、以下のようなことが記述されています。

第五主義とは異常な思考法であり、よりわかりやすく言うのであればシータ-プライムの副産物です。

第五教会ハブ

シータ・プライムの箇所が反ミーム部門ハブへのリンクとなっています。結論から言えば、ここで言うシータ・プライムとはSCP-3125「逃亡者」を指しています。
参照:SCP-SCP-033

反ミーム部門やSCP-3125の詳細はここでは触れませんが(素晴らしい解説や動画が沢山ありますので是非!)、反ミーム部門ハブにおいてマリオン・ホイーラーは「SCP-3125は五次元の異常な転移性の、悪いミームと悪い反ミームとその中間の集合体」であると語っています。
5次元。5。見たことのある数字ですね。

つまり、(反ミーム部門ハブ内では、第五教会との関係性は直接的に記されてはいませんが)第五教会はSCP-3125の影響により副次的に生み出された存在であり、換言するならば、SCP-3125が基底現実(財団が存在する世界)に及ぼした影響・兆候の一つが「第五主義」という異常な思考法であり、それを信奉する集団である第五主義者の一派が「第五教会」であるということです。

同じくハブから引用します。

4.第五教会に関連する上位存在は直接観察されず、一般的に不可知であるという点で意見の一致を見ています。

第五教会ハブ

「上位存在」をわかりやすく「神」と置き換えると、神は直接観察されない不可知の存在であるとされています。この描写は、反ミームによる完璧な迷彩と防御機構を備えたSCP-3125の性質と一致しています。
なお、SCP-2517「これが私がキノコの上に神を見た時」では第五主義者は「全知かつ偏在する神」を崇拝しているとされ、「神」がSCP-3125へのリンクとなっています。

SCP-3125についてはこのくらいにして、話を第五主義に戻します。
第五教会ハブにおいて、第五主義は「異常な思考法」「激毒」とされ、現実を超越すると記されています。
実際、SCP-1425「星のシグナル」に曝露した人間は「オーハイ症候群」と呼ばれる支離滅裂な精神異常を発症していますし、同オブジェクトは様々な現実歪曲を引き起こし、CK-クラス世界終焉シナリオに至る寸前にまで影響力を拡大していました。

なお、前述のとおり第五主義は宗教的な要素を含みますが、SCP-1425「星のシグナル」では、「自己啓発」や「願いを叶える方法」といった形で人々を誘引し、読者を第五主義者に洗脳・作り変えていたことが示されています。

オペレーション・スターゲイザー

SCP-1425「星のシグナル」事件を経て、第五教会を脅威と判断した財団は、第五教会の無力化作戦「オペレーション・スターゲイザー(星を見る人作戦)」を開始し、第五教会に対する監視や対策を進めています。
とは言え、第五教会は周到に自らを隠蔽しているためか、現状では直接的な無力化は実施されていない模様です。
なお、SCP-3519「静かなる日々」では、同作戦の失敗と、それに伴う世界終焉が描かれています。

他の要注意団体との関連

第五教会は秘密主義的な傾向が強く、財団はもちろん、他の要注意団体との関連は多くありません。
SCP-2456「壊れた世界の夢」では、蛇の手が第五主義の顕現を妨害していたことが示唆されています。

また、SCP-2316「校外学習」の関連taleである「1975年7月5日」には、第五主義(より踏み込んで言えば、SCP-3125)の要素が見受けられることから、1976年シリーズの要注意団体「失神交響楽」との関係も疑われています。

第五教会の特徴やキーワード

ここからは第五教会の特徴や、関連オブジェクトで頻出するいくつかのキーワードを列挙します。

5及び5の倍数・乗数

第五主義者は「5に取り憑かれた連中(tale「なぜ五は七を恐れるのか?」)」なので、5を神聖視します。SCP-1425「星のシグナル」では「ラッキーナンバー」とも言われており、SCP-2456「壊れた世界の夢」では、 “5”という数字が教義を記した文書に頻繁に現れることが特徴とされています。
5そのものだけでなく、その倍数とも強い関わりがあり、特に乗数である25、125、625、3125は頻出ですし、SCP-3125「逃亡者」は5の5条なので、まさに第五教会のラスボスに相応しいナンバーです。
また、SCP-1425やSCP-3005をはじめ、アイテム番号も5の倍数になっているものが多々あります。

星、海星(ヒトデ)

第五主義者は、星を第五世界からのシグナルであるとして重要視します。「五芒星」や「五つ星」など、神聖な数である5との合わせ技も散見されます。
なお、SCP-3125「逃亡者」が存在する第五世界は「海」「水の中」と形容されることがあります。
参照:SCP-2456「壊れた世界の夢」tale「1975年7月5日」

煙、煙霧

煙もまた第五教会を象徴する要素です。煙は肉体から離れた魂を意味しています。これは、肉体を捨てて魂を煙へと変えることにより、第五世界への到達や現実を超越することを目的としているためです。
SCP-1523「アイツが魂」の他、第五教会ハブ「あらまし」、SCP-1245「星のシグナル」、SCP-3005「死んだ光」、SCP-4125「我らは帰る」、SCP-5982「煙が目に滲みる」 、SCP-5502「たなびく煙の断端」等、煙に関するものは枚挙にいとまがありません。

精神影響

SCP-1425「星のシグナル」におけるオーハイ症候群で見られるように、第五教会オブジェクトの多くは精神影響や支離滅裂な言動を伴います。
特に、ミーム災害を通じて曝露者を拡大していくのは第五教会の得意とする手口であり、これは後述する「曝露者の増加に伴い現実改変が強力になる」という特徴ともリンクしています。

現実改変

第五教会関連オブジェクトはしばしば現実改変を引き起こします。これは第五主義に都合の良い世界を作ること、もっと言えば、第五世界(及び神であるSCP-3125「逃亡者」)を基底現実に顕現させることを意図しています。
SCP-1425「星のシグナル」やSCP-2456「壊れた世界の夢」 ではCK-クラス世界終焉シナリオの危険性が示唆されています。
また、SCP-3005「死んだ光」は収容にスクラントン現実錨が用いられていたことから、現実改変能力を有していることが伺えます。

曝露者の増加に伴い現実改変が強力になる

オブジェクトは曝露者、信奉者の数が増えるほど、前述の現実改変が強力になるという性質があります。
SCP-2456「壊れた世界の夢」ではこの特性が顕著に説明されていますし、その派生バージョンであるSCP-1425「星のシグナル」も、差し迫ったCK-クラス世界終焉シナリオを引き起こす寸前まで至りました。

解読不能で子音の多い言語・発話が歪む、言語異常が生じる

第五教会関連には、読み方からしてすでにおかしい言葉が登場します。これもまたよく見られる特徴です。
以下がその例です。

「とるぉる ぷらる むるぐん ずぇい の すろん の音」「すろん とりる な とれい おぶる 第五。とら すろん ████ ぷりる とりん とろ さくぷ とれい。」

SCP-1425「星のシグナル」

「ぐずぃむむとぷるひぃ海」
「とるろぷりぃ世界」

SCP-2456「壊れた世界の夢」

また、反ミーム部門ハブの作中において、登場人物であるマリオン・ホイーラーやキム次席研究員の発音がバグるシーンが見受けられますが、本家ディスカッションによると、SCP-3125「逃亡者」の影響が及んでいることを示唆しているとのこと。

フラクタル

フラクタルとは、部分と全体とが同じ形をした自己相似性を示す図形のことを指します。よく例として挙げられるのがカリフラワーの一種であるロマネスコです。ロマネスコの先端(部分)を近くに寄って見てみると、ロマネスコ全体の形と同じであることがわかります。
要するに、寄っても引いても、全体を見ても部分を見ても、同じ形状が繰り返されている構造を指します。

第五教会の関連オブジェクトでは、このフラクタルという言葉がまれに出てきます。SCP-5800「第五の闇」において、SCP-3125の起源である五次元空間は、攻撃的なアイデアが生存競争を繰り広げる、ピンクの光とフラクタルに満ちた世界であることが示されています。

また、SCP-3125報告書では、「(SCP-3125は)Θ'次元のフラクタル位相幾何学」であると説明されており、反ミーム部門ハブ「CASE COLOURLESS GREEN」においても、マリオン・ホイーラーは自らが対峙するミーム複合体:SCP-3125の構造について「フラクタル模様の何かを掴もうとする手」の図を、鮮やかな緑のフェルトペンを用いて描き出しています。

ピンクの光

SCP-3005「死んだ光」やSCP-5800「第五の闇」等で言及されるピンクの光は、第五教会の光です。
これは人間にとって激毒であり、肉体や精神を直接的に改変する、言い換えれば人間の心身を第五主義者に都合の良い形に「作り替える」という、極めて有害な性質を有しています。
なお、第五主義の源泉であるSCP-3125自体を指すこともあり、この場合はピンクの他にマゼンダと形容されることもあります(tale「1975年7月5日」)。

緑色

上記のピンクやマゼンダとは別に、第五教会やSCP-3125「逃亡者」を示す色としては緑が挙げられます。

SCP-1425「星のシグナル」において、第五教会のトレードマークである「スターストーン」は緑色の石であるとされていますし、上述のとおり「CASE COLOURLESS GREEN」において、マリオンはSCP-3125の構造に関して、鮮やかな緑のフェルトペンを用いて描いています。

また、そもそもタイトルの「COLOURLESS GREEN」自体が「無色の緑」という意味ですし、tale「キャロル#155: 集五意識」においても、第五教会に関連して「緑がかった無色」という言及があります。

おそらく由来となったであろう「Colorless green ideas sleep furiously」は、哲学者のノーム・チョムスキーが提示した「文法的には正しいが、意味的にはナンセンスなもの」という例文ですが、「無色」や「意味的にナンセンス」を、「見ることができない」「意味を捉えきれない」と考えると、もしかしたら反ミーム特性を持つSCP-3125を示唆しているのかもしれません。

目が痛む

数は少ないですが、これも重要なポイントです。
前述した言語障害と同様に、SCP-3125の影響が及んでいる兆候であると考えられます。
参照:反ミーム部門ハブ「CASE COLOURLESS GREEN」SCP-4558「Bel1eve_1n_M1racles」

他の宗教を乗っ取る

前述したとおり、第五主義者は全く無関係の組織を侵蝕し、変貌させることで宗派を確立します。
これは他の宗教についても例外ではなく、SCP-3257「ティンブクトゥのスーツケース入り神父」 ではキリスト教の乗っ取りを、SCP-4558「Bel1eve_1n_M1racles」では壊れた神の教会の乗っ取りを試みています。

なお、SCP-2456「壊れた世界の夢」において、オブジェクトは他の宗教の信奉者を通じて拡大していることが特徴とされています。

既存の社会的ネットワークを乗っ取る

宗教を通じた拡大は上述したとおりですが、既存の社会基盤やミームを通じて影響を広げようとするのが第五教会の手口です。
前述のとおり、SCP-1534「最善のやり方」ではスーパーマーケットを、SCP-6775「E」では政治機構を通じた第五主義が確認されており、芸能界ルートとは別路線での勢力拡大であると思慮されます。

終わりに

第五教会関連オブジェクトは意味不明だったり難解なものが多く見受けられます。ごった煮な書き方になってしまいましたが、読み進める上での理解の一助になれば幸いですし、認識違いや他の解釈等がありましたら教えていただけますと嬉しいです。
さあ、星々のようになりましょう!

Author: Silberescher
Title: SCP-1425「Star Signals」
Source: https://scp-wiki.wikidot.com/scp-1425
2012年
翻訳:gnmaee
Title: SCP-1425「星のシグナル」
http://scp-jp.wikidot.com/scp-1425
2015年

Author:megalan
Title: SCP-2456「Dreams Of A Broken World」
https://scp-wiki.wikidot.com/scp-2456
2017年
翻訳:C-Dives
Title: SCP-2456「壊れた世界の夢」
http://scp-jp.wikidot.com/scp-2456
2017年

Author: ch00bakka
Title: SCP-2517「This One Time I Saw God On Shrooms」
https://scp-wiki.wikidot.com/scp-2517
2016年
翻訳: kidonoi
Title: SCP-2517「これが私がキノコの上に神を見た時」
http://scp-jp.wikidot.com/scp-2517
2016年

クリエイティブ・コモンズ 表示 – 継承3.0ライセンスに従います。


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