見出し画像

現役地域おこし協力隊が本制度の現状として感じていること

突然ですが、「地域おこし協力隊」という仕事はご存知ですか?
日本でも少しずつ認知が広まっているのか、仕事柄知っている方にお会いすることが多いのか、私自身は、知っている方の方が多い印象を受けます。

ググればすぐに詳細を見つけることができますが、要は、都市部に住む人材が人口減少課題を抱えている地方に移住し、定住を図る準備期間として活動できるという制度です。その時に、移住先の地方のためになるようなことしてね!っていうことで、この名前がついているのだと私は、感じています。

総務省が管轄をし、実施元は地方の自治体です。(細かくみるとこの表現が正しいのかは知りませんが、つまり地域おこし協力隊の採用や管理は地方自治体ですが、地域おこし協力隊の活動費は総務省から予算がでています)

地方自治体としては、
・人口がわずかばかりでも増える
・人材不足を抱えるニーズに新しい人材を送り込める
・前例がない新しい風が、入ってくる(のが良い、悪いは置いておいて)

地域おこし協力隊になる個人としては、
・地方に移住したかったけど、仕事がないという悩みが解決する
・憧れの田舎暮らし

大まかにいうとこのようなメリットがある制度ではないでしょうか?

実は筆者は現在、地域おこし協力隊として活動をしています。活動中によく聞かれたり、地域おこし協力隊ではない方は多分こう思ってるんだろうなぁということをまとめてみました。
ぜひ、本制度に興味がある方に参考になると嬉しいです。

①地域おこし協力隊=ただの看板


例えばA市の地域おこし協力隊とB市の地域おこし協力隊がいるとします。
A市の地域おこし協力隊は、
・役所の会計任用職員(社会保障あり)
・職場は役所の中
・勤務時間がきっちり決まっている
・スーツ出勤
・仕事内容は、役場の中で決められている

B市の地域おこし協力隊は、
・個人事業主に年間で委嘱(社会保障なし)
・職場は、役所の外(自宅や、観光協会の中など)
・勤務時間は自己申告もしくはタイムカードを押して申告
・服装自由
・自分で提案して活動をしていく

この上記の地域おこし協力隊の活動形態に意見をしたいわけではありません。隊員は応募をする前にここまで詳細をみて、同意をしてなるわけですから、問題はないと考えています。
ここで言いたいのは、A市とB市、同じ地域おこし協力隊という肩書きですが、実際の勤務形態は全く違う、もはや別業界だと思いませんか?

地域おこし協力隊が知り合いにいるという方に地域おこし協力隊なんですー!と挨拶して、その方がお知り合いを連想されると、誤解が生まれるということです。

それぞれの地域のニーズに合わせられるように、あえて細かく規定されていないのが地域おこし協力隊の良さなのかもしれません。他にも農家さんの後継者として修行されている方や、民間企業の職員として活動をされている方もいます。

もうもはや、『地域おこし協力隊』という看板だけが同じということです。

②地域おこし協力隊から連想されるイメージ

地域おこし協力隊として活動するのであれば、どんな活動をするべきだと考えますか?
例えば、地域の方がマルシェをしたいと考えていて準備も当日も人手が足りないからボランティアで手伝ってほしいと言われたらどう考えますか?

↑実際に、この依頼はよくあります。
このことを言及すると心が狭いと思われる方もいるかもしれません。
正直に言います。
知り合いからの相談であれば、もちろん手伝うこともあります。ただ、全く知り合いではない方からの依頼は断ってもいいということです。むしろ私は、断りたい。
地域おこし協力隊は一人の人間です。信頼がない方からの依頼を無償で受ける、ボランティア精神に溢れている人もいれば、身近な人や自分自身のために時間や労力を使いたいと考える人もいます。どっちが正しいとか間違っているとかではなく、両者の考えを尊重してほしいのです。

実際に活動を始めて1年目でお手伝いをした事例はこうでした。
ある日、突然Aさんがわたしの職場を訪ねてきました。
始めて、お会いする方でご挨拶をしたあと、その方はこう続けました。
「誰でも参加できるマルシェを開催したい。」
特定を防ぐために、詳細は避けますがここでいう誰でもは本当に誰でもです。(←わかりにくいな笑)
「ただ、マルシェの企画運営は初めてなので、一緒にやってほしいんです
」と言われたので、地域おこし協力隊として、地域を盛り上げたいと考える方の熱い思いは断れないと思い、お手伝いを了承しました。

当日まで、勤務時間関係なくその方と連絡を取り合い、行政とのやりとり、広告物の作成、告知、前日から当日のスタッフとしての動き、そして私がやるならと手伝ってくれら周囲の方の人手を借りて、会場設営を行いました。

元々、労働に対する対価をいただくことは毛頭にもありませんでしたので、地域おこし協力隊として地域のためなら!と全力でお手伝いをしました。
それが当たり前だと思っていました。というよりそれが当たり前だという外からの圧があると勝手に思いこんでいたんだと思います。

地域おこし協力隊は活動後の定住を目指すことが行政からも求められており、そこに同意をして、この仕事をすることを決めました。
イベントは無事に終了しましたが、この活動は私の定住には繋がっていません。そもそもイベントの企画は私のできることであって、やりたいことではありません。自分の時間やスキルは無償で提供するほど私は優しい人間ではありません。そもそも自分を大事にできない人が、誰かのために何かをすることはできないと思っています。
イベントを通して得た人脈と信頼が将来どこかで生きるとそう自分に言い聞かせるしかないのです。でもこの言い聞かせはどこかで、限界がきます。

地域のためだからと全てにイエスマンになるのは間違っている感じています。私は地域のために生きているのではなく、自分のために生きています。
もし、あなた住む地域に地域おこし協力隊がいて、その方があなたが求める通りに活動をしてくれなくても、怒ったり、悲しんだりしないでください。
地域おこし協力隊として活動をしていたとしても、所詮人です。その方の人生に責任が持てないのであれば、無償で地域のために働け!というのは本当に正しいのか一度考えてみてほしいです。

③そもそも行政がわかっていないという問題

私たち地域おこし協力隊の管理主体は、地方自治体です。
勤務形態、活動内容、全て地方自治体が決めたり、管理したりしています。
採用に至る面接も地方自治体が行います。

例えば、すごく自主的に活動をしてくれる隊員がいたとして、その方が色々な成果を残して活動を終えたとします。
そこで、行政は新しい隊員も同じように動いてくれると期待して採用します。しかし、その隊員は、むしろ行政から活動内容を具体的に指示されないことに戸惑い、不満が溜まります。

この場合、誰に問題があると思いますか?
誰も悪くないが結論かもしれません。

基本的には、この制度を取れ入れたいと考える行政は、前例のある地域の行政にまず話を聞きに行くことが多いと思います。
あっちの地域でこういう成果がでているのだったら、うちでも取り入れよう!とこういう風に新しい取り組みを始めていくことが多い印象です。
地方の環境も資源も全て違う隣の地域の成功例をうちにも!っていうこの考えが浅いと思います。それこそ、地域おこし協力隊は一人一人違う人間ですので。
行政は、地域おこし協力隊として人材を採用して終わりではありません。
そこからが大変なのです。一人一人の隊員の人となりに合わせて指示や、希望を伝えるべきなんです。
それこそ、一人一人全く違う人間であること、制度そのものに幅があるため、様々な理解や期待をしている人がいることを念頭に置いていただけるとありがたいです。

次に、地域おこし協力隊となる人は活動を始めた後、すべての活動を行政が指示し、守ってくれると考えているのであれば間違っています。
ただ、自分のやりたいことが決まっていて、それを実現したいのであれば、それだけをぐんぐん突き進むのが正しいのかというとそうではありません。
行政のそれまでのやり方は古い!!!!と反発して上手くいくことは絶対にありません。
地域おこし協力隊として活動をしていく以上、行政の協力が必要不可避だということは忘れず、普段からの関係性を構築することが、その後のやりやすさに繋がっています。


これから地域おこし協力隊を考えている方へ

募集要項をよく見てください。
どういう勤務形態なのか、求められている人材像は何なのか。
自分の希望とマッチするのか。
現役隊員同士の仲はどうなのか。
活動終了後のビジョンはありますか。

応募前にぜひその地域に遊びにいってみてください。
ぜひ、役所も訪ねてみてください。
きっと色々と教えてくれると思います。

有難いことに、私の活動している地域の行政で働く方は皆さんとても良い方です。私のやりたいこと、将来のビジョンをどう実現できるか一緒に考えてくれる方ばかりです。
地域おこし協力隊と検索する、ひどいと表現する記事を目にされると思います。でも忘れないでください。自治体も活動する人も、それぞれ同じなわけがありません。この記事のように理解の幅がありすぎる制度なんです。
これを良いように捉えて、やりがいのある環境にできるかはあなた次第です!皆さんの地方移住が素敵なものになることを願っています。








この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?