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次元上昇

何かが終わろうとしているのを感じる。
錯覚でも勘違いでもない。
とても穏やかな気分で、朝陽を眺めて微笑んでいる。

昨日訪れた店は、音楽が静かに流れ、様々な人の手を経たであろう本たちが、ひっそりと歌をうたっているような、そんな場所だった。
店主は言葉少なだが丁寧に対応してくれて、巡礼、ということばがとても似あう美しい珈琲を出してくれた。

なぜここに今、わたしは独りなのか、いくら考えてみても答えは出ない。
でも出ないということが答えで、そこに理由などないのである。
理由がないなら仕方ない。
わたしはそれをただ、両手を広げて受け入れるだけである。

気付くのが遅すぎる。
気付いてもいないことに気付くのも遅すぎる。
「人生はいつもちょっとだけ間に合わない」とは是枝監督の映画のキャッチフレーズだったか。

でもそのちょっとだけの遅れが、取り返しのつかないことになる容赦のない時間が連続しているのが現実なのである。

仏には慈悲がある。
でも神様ははっきりと終わりを宣告してくれる。

わたしが、愛する小さな世界に手を振る日はそう遠くはないだろう。

笑えねぇんだよ馬鹿野郎。


わこ


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