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【アンコンシャスバイアス大賞インタビュー vol.1】マラウイで見つけた、正解のない「当たり前」との向き合い方

2023年1月31日、第1回「アンコンシャス・バイアス大賞」の授賞式をオンラインでおこない、4つの受賞作品を選出しました。

アンコンシャスバイアス大賞とは…
Colorbathが2022年から取り組む「おずもなラジオ」発のリスナー参加型プロジェクト。
「アンコンシャスバイアス(無意識に持っていた、物事への凝り固まった視点や考え方)」への気づきを、恥ずかしいものや直さなければいけないものとしてではなく、他者とのコミュニケーションに役立てていこうというメッセージを込めている。

みなさんからお寄せいただいたメッセージを読み、対話をしながら、私たちもこの賞を続け、社会にインパクトを届けていく意義を噛み締める時間となりました。

そして今回「総合部門」「社会メッセージ部門」「途上国ラベリング部門」「行動変容部門」の受賞者4名の方に、インタビューを敢行。

エピソードの背景や後日談だけでなく、Colorbathと出会ったきっかけや、今後の歩みまで、さまざまなお話を伺うことができました。

第2回「アンコンシャス・バイアス大賞」は、来たる4月に実施予定。
日常生活の中で「当たり前が変わった瞬間」に想いを馳せるきっかけにしていただけたら嬉しいです。

■清水良介さんの応募作品

私は、アフリカ・マラウイの首都リロングウェで働いています。
オフィスの周りには、ストリートチルドレンがいて、私を見つけるといつも悲しそうな顔で「お腹が空いているからお金がほしい」と声をかけられていました。
私はここで働いているので、一度お金をあげてしまうと、お金をくれる外国人としてすぐに顔を覚えられてしまい、ずっとお金をあげ続けないといけなくなると思い、目も合わせずにいつも冷たくあしらっていました。

ある日、オフィスの外で休憩をしていると、2人のストリートチルドレンが私に近寄ってきて、いつものように悲しそうな顔で「お金をちょうだい」と言いました。
私はその日、なぜか彼らと話してみたい気持ちになり、彼らの名前や年齢を聞いたり、住んでいる場所や学校の話をしました。
それからバナナ売りのおばさんからバナナを3本買って、彼らにも1本ずつあげました。するとひとりの子が「バナナはいらない。バナナを食べたらもっとお腹が空いちゃうから。」と言い、もうひとりの子が2つ食べました。「え、お前、2つ食べたの?1人1つなのに!」と冗談を言うと、「もう食べちゃったもん!」と言って笑っていました。

その日の夕方、バナナを食べなかったもうひとりの子が私を見つけると、「さっきバナナを食べなかったから、その分のお金がほしい」と言ってきました。
私は「自分はバナナはあげるけど、お金はあげないよ」と言うと、「わかった!じゃあまたね!」と言ってどこかに行ってしまいました。
私は間違ったことをしてしまったのかもしれないと思いました。

しかしその次の日、彼らが私を見つけると遠くから笑顔で「ボス!」と言って、走って近寄ってきて、また少し世間話をしました。彼らは私に「お金ちょうだい」とは言いませんでした。
私が彼らの名前を呼ぶと「名前覚えてくれていたんだ!」と、とても嬉しそうにしていました。
彼らが友達のストリートチルドレンを連れてきて、私に紹介してくれたりもしました。
私と彼らは、"外国人"と"ストリートチルドレン"の関係から、"歳の離れた友達"のような関係になりました。

私は、日本でも年下の後輩にはご飯を奢りたくなってしまいます。
彼らにも、お腹が空いているなら何か食べさせてあげたいと思うようになりました。
物を与えてばかりでは、彼らの根本的な問題は解决しません。
でも、彼らにだって、外国人で奢りたがりの年上の友達が1人ぐらいいてもいいんじゃないかと思うようになりました。

自分のこれまでの考えが大きく変わった瞬間でした。
自分が正しいことをしているとも、いいことをしているとも思いません。
ただ、自分のことを慕ってくれる年下のかわいい友達ができたことが嬉しく、その日から彼らに会うのが楽しみになりました。

授賞式の際は「絵本になりそう」という声も挙がったこちらの作品。
清水さんは、マラウイでColorbathの吉川・椎木と出会ったことをきっかけに、Twitterをフォローしてくださっていました。そこで「アンコンシャス・バイアス大賞」のことを知り、すぐにこのエピソードを思い出したそう。

マラウイでのお仕事や、Colorbathの活動をみていて感じることなどのついても、お話をお聴きしました。

■マラウイでのお仕事

JICA青年海外協力隊派遣をきっかけにマラウイと出会った清水さん。
マラウイの人たちの素朴な温かさに惹かれ、「ここに住みたい」と考えるようになりました。

ただ、プロジェクトごとの派遣となると任期が決まっており、長く住み続けることは難しいかもしれない。そこで、現地で起業することを決め、今年で5年目を迎えたそうです。

ビジネスパートナーのグラフィックデザイナーの方も、隊員出身。

現地では、デザイン=デコレーション、チラシや看板をかっこよく見せるためのものといった考え方がまだ一般的で。でもデザインには、コミュニケーションを助けるツール、会社やプロジェクトの強みを可視化する意味がある。根本を変えたいという想いに共感して、「デザインでマラウイを変える」を会社のミッションにしています。

マラウイでもスタッフを雇用し、デザインに加えてその出口となる印刷業、コロナ禍をきっかけに旅行雑誌やビジネス雑誌の出版業も始動。今後は広告やマーケティングにも力を入れていきたいと話されていました。

1、2年で変わるものではないので、10年、20年かけて少しずつ、変えていければいいなと思っています

■Twitterでの情報発信と、考えていること

ふだん、Twitter上で発信活動もおこなっている清水さん。
マラウイの日常を鮮やかな写真つきで切り取ったツイートが印象的で、いつも楽しみにみています。


1日1ツイート、写真つきでというルールを決めています。
マラウイの貧しいところや、逆にキラキラしたところだけではなくて、住んでいるからこそ見れる視点や、日本とも共通しているところも含めて伝えたいなと思っています。

この話題をきっかけに、Colorbathの広報担当でもある櫻井との作戦会議がスタート。笑

対話の中で、ほんとうに伝えたいメッセージを届けるには、ふだんよく関わっている人以外も巻き込めるような言葉選びやメディア選びはもちろん、みた人の心の中で何かが芽吹くことへの信頼感も大切、と感じました。

清水さんがお仕事にされているデザインと同様、SNSも想いを持って使うことで、さまざまなバックグラウンドをもつ人同士のコミュニケーションを助ける存在になれるはず。

清水さんとはTwitter上でも、今後もさまざまなカタチでコラボしていければと思います。

■Colorbathとこれから

「おずもなラジオ」のリスナーでもある清水さんから最後に、「他の人の意見を否定せずに、前向きに変換して言葉を返しているのが印象的。それはどこからきているものなんですか?」と逆質問をいただきました。

リモートワークのメンバーが多く、働き方やリズムも多様だからこそ細かな工夫をしていることはもちろん...基本的に相手の話をジャッジ(評価)せず、まずは受け止める姿勢を徹底しているのだなと、新たな気づきがありました。

思えば清水さんが「アンコンシャス・バイアス大賞」に寄せてくださったエピソードからも、「正しい」「正しくない」で分断するのではなく、自分と他者の行動をありのままに受け入れる心の姿勢が感じられます。

マラウイ、デザイン、コミュニケーションと、Colorbathの在り方にも多く重なる部分が多い対話となりました。

そして...3月には、Colorbathスタッフの吉川・椎木・小野寺が、実際にマラウイにいる清水さんにお会いしに行く予定です。その模様もお伝えさせていただくので、ぜひお楽しみに*

【第2回アンコンシャス・バイアス大賞エピソード募集中】

「アンコンシャス・バイアス大賞」とは、日本・ネパール・マラウイの3カ国を拠点に教育とソーシャルビジネスに取り組むColorbathが主催する、「3分で参加できる」エピソード応募型企画です。

今日、世界は変わらないかもしれないけれど、ささいなきっかけを掴めば「物事の見方」は変化します。物事の見方が変化すれば自然と、次に何をすればいいか見えてきます。

日常生活の中で、または誰かと会話をしている中で、「はっと気づいたこと」「自分の持っていた当たり前がわかったこと」はありませんか?

・一見ミスや失敗と思えたことが、時間が経つと違う意味合いを持って現れたこと。
・感情が揺さぶられたけれど、その分学べたこと。
・誰かと話していて、考え方の違いを乗り越えて、理解し合えた・つながれたと感じたこと。

みなさんにとってのそんな瞬間を、ぜひ私たちに教えてください。

一緒に味わい、シェアしていきたいなと思います。

▼応募はこちらから