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「豊かさ」とは何か。ネパールのコーヒー生産に取り組む村で、考えてみた。

こんにちは。3月上旬になり、ネパール・カトマンズはかなり暖かくなってきました。長袖のシャツとパーカーだけで、快適に過ごすことができています。

さて、今回は、前回の記事に引き続き、ネパールでのコーヒー生産についてお話ししていこうと思います。農家さんの想いに触れ、「豊かさ」について考えさせられる旅でした。

話し手:那波多目健太
1996年生。東北大学農学部卒。学生時代、Colorbathのインターンシップとして、3ヶ月間ネパールに滞在。コーヒープロジェクトやDOTSなどで、現地からのサポートに携わる。帰国後、新卒で㈱坂ノ途中に入社。世界各国のコーヒーを取り扱う事業部に所属。現在は、コーヒープロジェクトやキャリア支援など、主にネパールでの雇用創出を目指したプロジェクトを担う。

Thulo Pokharaへの2回目の訪問

Colorbathの「持続的なコーヒープロジェクト」の生産地であるThulo Pokhara。2回目の訪問の目的は、「コーヒー豆の乾燥度合いのチェック」でした。(※1回目訪問の様子はこちらから)

12月〜3月は、「収穫」「精製(赤い果実の部分を取り除く)」「乾燥」の3つのプロセスが行われている

山間部の天候の変わりやすさもあり、理想的なペースで乾燥が進んでいるわけではありませんでした。それでも、「品質の良いコーヒーを作りたい」と頑張ってくれている農家さんや現地パートナーの頼もしさに支えられ、粘り強く取り組んでいこうと思うことができました。

帰国後も、オンラインにはなりますが、丁寧にコミュニケーションをとっていきたいと思います。

そして、今回の訪問には、もう一つ目的がありました。

それは、「コンセプトムービーの撮影」です。コーヒー生産の様子はもちろん、農家さんの表情、生活風景などを撮影して、「豊かさ」が伝わる映像作品を制作したいと思っています。今回はカメラマンさんにも同行してもらい、相談しながら撮影を進めていきました。

農家さんの声に、耳を傾けてみて

今回の滞在中、何人かの農家さんとお話をする機会がありました。
その中でも印象的だった2人とのエピソードについて、お話ししたいと思います。

1人は、パンチャマヤさんという方。
撮影中に自ら声をかけてくれて、「コーヒーの育て方や収穫の仕方を知らなかったけれど、わざわざ遠いネパールまできて、良いコーヒーの作り方を教えてもらえて嬉しい」と話してくれました。

パンチャマヤさん自身の言葉で想いを伝えてくれたことが、とても嬉しかったです。

パンチャマヤさん

Thulo Pokharaには、パンチャマヤさんのように、「教えにきてくれてありがとう」と話しかけてくれる人がたくさんいます。その温かさに、コーヒープロジェクトは支えられているなと改めて感じました。

もう1人印象に残っているのは、一緒にお茶を飲みながら、収穫作業についてお話ししたベクラルさん

品質の良いコーヒーを作るには、きれいに赤く熟している豆だけを収穫する必要があります。一つの木に実る豆がいっせいに熟すわけではないので、正直かなり大変な作業です。

そこで彼に、「大変だと思うけど、収穫の作業はどう?好きですか?」と聞いてみました。気になる答えは…「Some」。楽しいときもあるけど、ちょっと面倒かなという感じでした。

すると周りの人たちが、「彼は面倒くさがりだからね」と冗談っぽく声をかけてきて、それをきっかけに笑いが起こり…。この時の雰囲気、やりとりが、人間味が溢れていてとても素敵だなと思いました。

真ん中の男性がベクラルさん。

農家さんたちは、家畜の世話や野菜の栽培、家事や子育てなど、他の仕事もある中でコーヒー生産に取り組んでいます。また、コーヒーに対する熱意やモチベーションも、もちろん、ひとりひとり違います

他の作物を育てづらい冬の季節に、コーヒー栽培を通して収入を得ることのメリットは大きいですが、かといって「コーヒーを作ること」を農家さんに押しつけるのではなく、農家さんの生活に根ざした形で、プロジェクトを進めていきたいと思っています。

もうひとつのコーヒープロジェクトの拠点・Sarsyukarka

そして、今回は「Sarsyukarka(サルシュカルカ)」という村も訪問しました。

ここには、コーヒーの脱穀や選別、パッキングをするための工場があり、「持続的なコーヒープロジェクト」のはじまりの地でもあります。

ここには2年前に苗を植え、コーヒーの木の栽培を開始しました。

しかし、Sarsyukarkaでは、まだコーヒーの栽培が農家さんたちの間に根付いておらず、うまくいかないことも少なくありません。

もともと野菜の栽培が盛んな地域であることや、コーヒーは苗を植えてから収穫できるようになるまでに3年かかり、すぐに収入にならないこと。

農家さんにとっても私たちにとっても、すべてが初めての挑戦なので、Sarsyukarkaでは、農家さんとじっくり対話をしながら、やりたいという人からサポートを始め、だんだん広げていくというやり方をとった方がいいと気づきました。

現地の人とのコミュニケーションをさらに見つめ直した出来事が、滞在中にありました。コーヒー栽培のノウハウを共有するセミナーを開くとき、Thulo Pokharaであればたくさん集まるはずの農家さんが、あまり来なかったのです。

よく聞いてみると、ネパールではセミナーを行う際、チア(甘いミルクティー)やお菓子が出るのが一般的。少しでも多くの人に集まってもらおうとする場合には、そういったものの用意が必要でした。

一方で、本当にモチベーションのある人にだけ今回は話をしたいというなら、チアやお菓子は必要はないという考え方もあります。

現地の文化や習慣を知り、目的と照らし合わせて一つずつ決断すること。その大切さを実感した機会でもありました。

Thulo Pokharaと、Sarsyukarka。コーヒー生産を始める前提や時期、農家さんたちの個性も二つの地域で全く違うということを、改めて感じた旅でした。

「生産地A」「生産地B」ではなく、「Thulo Pokharaにいるあの人たち」「Sarsyukarkaにいるあの人たち」と捉えることができるようになったことが、現地に行ったからこその収穫だったと思います。

豊かさとは、「人間らしさ」なのかもしれない

この世界の豊かさを人から人へ

ネパールの貧困を解決するためではなく
ネパールの素晴らしさをより多くの人に

一杯のコーヒーに、ネパールの豊かさを込めて。
一本のコーヒーの木に、未来への希望を込めて。

ヒマラヤの恵みが詰まったコーヒーを通して
豊かな人のつながりを

オンラインストア「Himalayan Luxury Beans」トップページより

これは、ネパールコーヒーを販売しているオンラインストアのトップページに記してある、私たちからのメッセージです。

今回、コーヒーの生産地に実際に足を運び、農家さんたちと過ごした時間の中で、この「豊かさ」について何度も考えさせられました。

「豊かさ」は、「人間らしさ」と表裏一体なのかもしれません。

「収穫作業は楽しい?」と聞いて、「まあまあかな」と答えた彼のように、ネパールの人は、自分の良いところだけではなく、ちょっとダメなところも、ごく自然に伝えてくれます

その在り方は、「自分のダメな部分は隠さなくてはいけない」と心のどこかで信じて育ってきた私にとって、とても新鮮なものでした。

「プラス」「マイナス」のレッテルを貼って表面的に物事を理解するのではなく、曖昧な部分、必ずしも好きではないことも含めて受け入れ、自分自身に素直でいる。

ネパールや、共に過ごした人々から感じた「奥行き」が、私に「豊かさ」の意味を少しだけ教えてくれた気がしました。

これからも、ネパールの農家さんと共に、一歩一歩、「持続的なコーヒープロジェクト」を進めていきます。

(聞き手:櫻井かおり)

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