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暗号文で始まる恋ってアリですか? 3

中学生のお付き合いっていうのは、
手をつなぐわけでもなくいちゃいちゃするわけでもなく、
ただ一緒に居て一緒に話すことだけ。

その話が心地よかったから、今でも楽しい毎日なんだと思う。

付き合う前からも色んな話はしたけど、付き合いはじめてからはもっともっと色々な話をした。

例えば、UFOの話。
信じる?信じない?っていうことからはじまって、もしも宇宙人がいたら~とか、世の中にこう言ってる人がいる、こんな体験があったとかをお互いに話した。

例えば、空を見上げながら話す。
「いつもね、空に吸い込まれそうになるんよー」って言うと
「わかるわかる、途方もなく広いからよなー」って返ってくる。
雲って不思議よねーとか、空って面白いとか。

例えば、この地球が誰かの手の中だったらって話。
「この世の中が、例えば神様みたいな大きな大きな人の手の中の可能性ってあるよね」って言うと、
「そうそう、それ、考えたことある」って返ってきた。

例えば、人と話すとき。
私は相手が何を思っているんだろう?っていつも思いながら話すんだけど、いわっちゃんは相手が何を言うか、何を言われたいかを予想して話すってこと。

例えば、死んだあとの世界の話。
「私は死んだらあちらの世界があって、そこでも楽しくしてると思うのよ」
っていうと、同調してくれて
「それだったら、ひょっこり出てきてくれ」と言われる。

例えば、ファンタジーの話。
ファンタジーものが大好きで、エルフやトロルがいる世界が好きだったけど、その話でも盛り上がれるっていうのが嬉しかった。
「あれって、エルフみたいよね」って言うと
「エルフっていうよりシルフかもよ」って返ってくるんだから、私たちの世界は無限だって思う。

ありとあらゆる話をたくさんした。
すごく楽しい時間が流れてた。
時間が足りなかった。楽しすぎて。

学校が終わった放課後、大体いつも一緒に帰って
ちょっとした空き地や、ちょっと寄れるところでずっと話してた。

こんなに話が合う人は居ないだろうなってこの頃から思ってた。

毎日の電話がかかってくるようになったのは、付き合っているっていう実感するときなんだろうな。
何も話すことはなくても何かと話している、話すことは尽きない。毎日会ってるのにね。
私たちの中学生の頃は携帯なんかはなくて、家の電話のみの生活。
いつも緊張して夜電話かけてくれてた。

私のほうから電話かけるときは、ほとんどなかったけど
電話かけるときは本当に気を使ってかけてたのを今でも思い出せる。

手紙書いたり、電話したり、放課後や休日話したりと、忙しい毎日。

昭和から平成に変わる瞬間も一緒に過ごした。
すごく覚えているあのとき。
子供ながらもすごいことになったって2人で話したのを鮮明に覚えてる。
「この時って多分忘れることないよな」って言ったぐらい、
衝撃的な瞬間だった。

平成から令和に変わるときに一緒に居たのも同じ人。
ついこの前のあの瞬間はラスベガスで一緒に過ごした。

やっぱり今でも不思議な感じ。
日本人にとっては元号が変わるっていうのは大イベント。
ラスベガスで休暇を満喫しているときがまさにその瞬間で、
「そういえばあの時も一緒にいたよなー」って平成になったときの話をした。
2人ともよく覚えてる。

色々な話の中、いわっちゃんの小さいころの印象的なものがある。
小学生の頃にヘビに噛まれて生死をさまよったこと。
私たちは同郷だけど小学校は違うので、小学生の頃のいわっちゃんを私は知らない。この話を聞いたときはすごく驚いた。

生き物が好きないわっちゃんは、虫や両生類や爬虫類、犬猫鳥、どんな生き物とも遊んでいたらしい。
その中でもヘビ。
小学校の夏休みの初日にヘビを家に持って帰って遊んでいたいわっちゃんは、そのヘビを靴を入れる袋に入れていた。
そして、遊ぼうと手を出したら噛まれた。

どんどん腫れあがる右手。

ヤバイと思って毒を吸い出してはみたけどまったく効果なく、とりあえず手首を輪ゴムでぐるぐるにしていた。

親に言うと怒られるからってなかなか言えない。痛くて腫れあがっていった右手は、グローブのようになっていった。
親の目線にちらちらっと入るようにしていたら、やっと気づいてもらってそこからは大騒ぎ。

近くの診療所に駆け込むも、その手首のゴムを切られただけで処置できず、大きな病院に行ってくださいって言われた。
お父さんが車を走らせて病院へ行ったときには、毒がけっこうまわっていたみたいで、その病院にたまたま1本だけ血清があったのを打ってもらった。
でも、毒は止まらない。

時間がたつたびに毒が手首から肩へと向かって心臓に近づいていき、腕にマジックで線を引きながら時間を書きこまれていく。
段々と毒で腫れていく腕。

お父さんが
「この子は左利きだから、右腕がなくてもなんとかなるから切り落としてくれ」

そう、お医者様に言ってたのを朦朧とする意識の中、聞いてたんだって。

このとき、県内の他の場所に2本(それぞれ違う場所)あった血清を、その当時のいわっちゃんの家業のお客さんたちが取りに行ってくれた。

2本目を打つとスピードが遅くなったもののまだ毒は進み続け、
3本打ったところでやっと毒がとまったらしい。

そして、同じ時期に同じ県内で小学生の男の子が1人、ヘビに噛まれて亡くなったニュースがあった。
いわっちゃんはこの子の分まで命をもらったって言ってた。

もしかしたら死んでたのは、いわっちゃんだったかも。
私と出会うことがなかったかもしれない、
そう思うと
忘れることがない話になった。

今でもヘビの噛み痕が残っているので、面白い話として色々な人に今は話しているけど、中学生の私には衝撃的な話だった。

たくさんの記憶は尽きることなく
中学時代は、もう少し続きます。

to be continued


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