術式が死んでいる

内側から出る言葉もうなにもなし。文章の書き方も忘れた。仕方ないので素案を提出するとするならば、ここ3ヶ月の唯一の読書が中村汚濁さん(エモい)と華倫変の3冊という学習の無い結果で過ぎ終わって行く一年でしたが、華倫変はそこそこ好きだったので無学浅学ながら感想を書きます。
(何も知らず高速回線から読んで、順番的にはカリクラから読むのが正しいと後から知った。作者の経歴を勉強したり気にしたりするのもサボる。サブカルも漫画も知らないので元ネタがどうとかも何も分からない。)

★高速回線は光うさぎの夢を見るか?

◎忘れる
『一日8時間以上 眠ると 脳細胞は死んでいくのだという 眠り過ぎると 脳も腐るのだ そのせいか私は いろんなことを忘れる』
8時間以上寝ると脳細胞が死にますという事実を初めて聞いたので急に不安になった。実際なんでも忘れて嫌になるので一理ある。ゆるやかだが余白の無い6P漫画で今までtwitterで読んだ4P漫画と美しさの格が違う。『せつないという気持ちだけは忘れない』と締めているがそれに関しては疑問。普通に忘れると思う。
◎あぜ道
◎下校中
◎木々
『彼女は岡山三奈と言った ただそれは彼女の「器」の名前に過ぎない』『その話は誰もが持ち合わせていて そして誰も答えることの出来ないことばかりで 話したってどうにもならないことばかりだった』
『良かった 消えてあげる』
3重人格の岡山三奈さんの3部作ですが、彼女がとてもよかった。人格名が『芳子』『玉江』ときて『ミレマ』なのがまずかっこよすぎる。芳子がオタク受けのしそうな口達者のいい性格で、それにミレマの豹変のギャップ(境遇がえぐいので萌えとはつかない)に加えて玉江の不憫さの混ざり合いが最高。3者とも全員不幸には変わりないのですが。主人公が玉江派というのもまた分かる気がする。と言っても圧倒的に芳子が好きです。岡山三奈の人格の結末があっさりすぎてそのオチでいいのかという虚しさはあったが、全体的には理知的かつ王道の恋愛漫画で好印象でした。エモかった。
◎ねむる部屋
一編通してガーンの漫画記号の印象しか残らない話。淡々とというわけでもなくどうすんのこれという悲壮感のニュアンスで不幸な境遇が延々と続いてそのまま終わるのでギャグ漫画寄りなのかなちょっと笑う。この絵柄で女の子をこれだけ可愛く見せられるのが凄いと気付く。
◎コギャル 危ない放課後
『そうですねー皆殺しですよ団地ごと皆殺しですよー』
一個前のねむる部屋と似たような話で不幸な境遇語り漫画だけどこっちの方が更に境遇がエグく語り口も淡々としているうえ、偏見ながらいかにもその境遇が想像できそうなビジュアルなので猶の事救いがない。
◎酒とばらの日々
『みんな 私をいじめるんだ 知ってる? 私 どこいってもいじめられるんだよ 私がいじめられない場所って どこにあるの?』
twitterで見たスクショがこれかーの漫画。話の流れが正直よく見えなかったけど理解ある彼君エンドでいいのかどうか。
◎とかく現世はくだらなすぎる
『かわいそうだけどあなた一生救われないね』
『まあ餓鬼に何言ってもわかんないのはわかってたんだけどね…』
高速回線の収録話の中で一番好きな話だった。単行本の表紙にもなってる元委員長さんが主役。差し込まれる蝶のカットがとても良い。儀式の内容は衛生観念的にマジで無理だし結局元委員長の主張自体は通して薬でキマッテル末端の人間の妄言に過ぎないのですが佇まいにとてつもない凄みがあるのは事実。能書きを垂れる記者の下半身に拳銃を押し付けて本能で語ってみろよと嘲笑う。それが確かに何やら真理がありそうなものだと錯覚しそうになる程かっこいい。漫画を知らないので委員長がフッと笑うシーンを見て宿儺!?になった。別に元ネタがこれとは限らないよくある書き方かもしれないがそう思うと『結果はトータルの「果」によってすべては表される』も呪術のナレーションに見えてくる。
◎高速回線は光うさぎの夢を見るか?


元ネタのある話であるし、今が2023年なので古いなーという第一印象も当然と思う。話の内容にそれほど感じる所はなかったが、上の語りは好き。

★カリクラ(上巻)

◎究極タイガー ボンバーナイツ
台詞が多い割に読みやすい。嫌らしくなく流れるような自然体の伏線回収だとか、シンプルなコマ割りと1ページ使って名乗る見せ方に王道感があって上手く見える。
◎赤い鎖骨
『ただ自分にとって仕事しているっていうのがいかにつらいかってのがわかってきたんです・・・・最近・・』
前振りはあるとはいえ唐突な猟奇コース。偏見に溢れたことを言うとこの話を読んだ時に一瞬作者の性別を確認した。前半のOLの語りなど良かったと思うが後半で全部飛んでしまった。この話に限らないがこの作者の漫画はモノローグがやたら繊細だと思う。
◎AV
三好という苗字が前話と繋がっていて混乱したが、作者の中に三好というそういったキャラクター性の概念があるらしいということを知った。実在がどうかということは考えないことにする。三好というキャラクターを描きたいためだけの話で特に含蓄やストーリー的な物はなかったように思え、それほど語ることがない。
◎張り込み
特にメッセージ性はなく夏の空気感と昼ドラ的緊張感を楽しむエンタメ的な話ですが純粋に面白かった。序盤でオチを読ませているだけに警官がいつ奥さんに殺されるのかという緊迫感とそれを上回る警官のやり手感で満足度が高い。
◎スウィートハネムーン
『ちくしょう!!どうせ国籍とったら売春とかするくせに!!金のために日本に来てるくせに!!』
空から美少女が降ってきても何も変わらなかったという話。同人誌的な雰囲気があって良かった。ここまでの短編の流れからいって主人公の大学生がヤバイ事件に巻き込まれるかとも思ったが特に劇的なシーンはなく、喧嘩から仲直りまでのシーンは良かっただけに結末がこうなると読後感としては何も残らず虚しい。考えてみれば『AV』もまあまあ平和な終わり方だったとここにきて思う。
◎映研

カリクラ上巻の中では一番好きな話だった。岡田くん一番いいキャラかもしれないとも。ギャグ寄りの作風で主人公と岡田と田中さんの三者の掛け合いがよく、田中さんのオチも悲しいが正直笑ってしまう。ラストはなんとなくほんわか安心するいい話。いい話ではないが。
◎電車がこない
『人に銃口は 向けちゃいけないんですよー』
『赤い鎖骨』の流れからまた猟奇コースかと思ったがそこを外してくる。ただこういうエグいのを期待させてなんともいえない穏やかな結末、煙に巻くようなオチで終わるハズし、の入る短編が複数目に付くとそれが逆に食傷気味になってくる。単体で見れば、色彩感や間の取り方がよく、解釈に困るがなんとなく切ない気分になる良い話のはずである。女の子が涙を流しながら上記の台詞を言うコマだけで十分な満足感もある。
◎燃えよアニメ
俗な哀愁のあるしょうもないコメディで短編としては普通に面白い。アニメーターがこういうブラック境遇だと分かっていてもちゃんと好きな物を仕事にして打ち込める姿には妬みを覚える。呪術廻戦を気にするようになってからは余計にそう思います。
◎ピンクの液体
序盤の流れから綺麗に純愛テイストで締めるのは想定外で2回目の作者の性別確認。短編としては普通に名作の域に入るレベルではあると思うし実際作者の作品の中で見ても評判がいいらしく、サブカル方面に人気がある理由がなんとなく分かった。

★カリクラ(下巻)

◎フルカワとウサギ
こういったような感情移入もオチもなにもなく、コマごとに一瞬は笑えても終わってみると何も残らない話は読む方としてあまり得意ではないと認識。
◎桶の女
『もちろん そんなことで 病気を うつした お坊さんを許せなかったし・・・・ お坊さんは平気なのに私だけが日に日に弱っていくことも・・・ こんなところで商売するしかない自分の過去も こんなところで死んでいく自分の みじめさにも腹が立ったし・・・ それにきっと 死んだ後は何もなくなるのだろうけど・・・』
グッズも出る程の名作。ガチで良い話。不学なので放下着(ホーゲジャク)という単語の意味をここで初めて知った。良い言葉ですね。守る自己に対し、捨てる自己。すべて捨ててしまえ。(ここで呪術廻戦の回想のターン)最後のシーン、最後の台詞には本当に救われる心地がしました。こういう描写を受け入れられるようになっていること自体が魂の折損に他ならないので複雑ですがそれもまた呪術廻戦を読んだ影響でもあります。
◎大林寺先生
『ただ弱い者たちが泣く・・・そんな世の中になって欲しくないだけだ!!』(じゃあなんで子供を殴るんだろう)

カリクラ下巻の中では一番好き。どこかで見たようなギャグの寄せ集めの印象で元ネタがありそうなのだが重ね重ね無学のためわからない。ギャグを保ちつつ救いのないオチも良い。
◎殺しのナンバー669
一ページ目でチェンソーマンかと思いました。良い感じのギャング映画の良い感じのシーンをそのまま抜いてきたような印象であまり好きではない。露骨な死亡フラグを立てに行くバイトはちょっと笑ったけど。最後の黒塗りENDのコマからしてわざとそういった演出にしているのでしょうが。女性店員も死んでた方が好みだったと思うけど、ラストのシーンも書きたそうだったので仕方ないのかもしれない。
◎バナナとアヒル
twitterにありそうなLGBT漫画ですがギャグとエグみとほんわかの具合がちょうどよく普通に良かった。スティーブのキャラが好き。良い話。
◎テレフォンドール TALK1
三好を描きたいだけのバカみたいな話なので割愛。
◎テレフォンドール TALK2
この姉ちゃんはめちゃくちゃ良いです。裏の顔・ビデオすり替える前後の真顔・普段の白々しい建前の笑顔の謎めき加減に最後まで謎を暴けずに終わるお預け感は頭狂わせる。沼田も好き。
◎テレフォンドール TALK3
こう他人のコンプレックスの混ざった繊細な感情とかの話を読んでなんと言えばいいのかはよく分からない。
◎テレフォンドール TALK4
救いが無さ過ぎて悲しいです。安っぽい言葉で言うとこの世は残酷。かなりエグめの話なので好みではある。
◎LAST TALK
内容というよりグロテスクな雰囲気重視らしく、蟲の描写や背景色を反転させる演出がとても良かった。

◎後書き・コラム
漫画を単行本で読むと割とよくあることですが、コラムや後書きの文章が上手いので悲しくなる。西尾維新の文字数がすごいのはよく言われるが、スピードそのものより頭のどこにそんな文字数が詰まってるのかの方が無理ゲーだと思う。脳がスカスカすぎる。


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