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時代に合わせたマネジメント

ヴェルディカレッジ第7講では、東京ヴェルディクリエイティブセンター長の熊本浩志さんが登壇。
東京ヴェルディ・バンバータのGMの一面も持つ熊本さんより、バンバータでのマネジメントや、これからのスポーツのあり方について語っていただきました。

執筆

メディアプロモーショングループ:山野 竜晟(2期生)

講師紹介

熊本さん

熊本浩志
1999年 東芝入社2002年 株式会社リアル・フリート(現amadana株式会社)設立 代表取締役就任
現在 amadana / amadana SPORTS ENTERTAINMENT 代表取締役社長
東京ヴェルディクリエイティブセンター長
東芝では家電商品の販促企画、商品企画を担当。amadanaでは、自社ブランドのブランドマネジメントの他、さまざまな企業のクリエイティブ戦略に従事。野球チーム、東京ヴェルディ・バンバータGM。

バンバータ流マネジメント

東京ヴェルディ・バンバータ(ベースボールチーム)フィロソフィー

バンバータは元々2008年に発足したアマチュア野球クラブでした。『3年間で日本一を獲らなかったら解散』という大きな目標を掲げ、公約通り3年目に全国優勝。その後、幾度も全国優勝を果たし、2019年より総合クラブ化を進める東京ヴェルディと提携し、東京ヴェルディ・バンバータとして新たなスタートを切りました。
そして、こちらが東京ヴェルディ・バンバータの掲げるフィロソフィーです。

バンバータフィロソフィー2

これはヴェルディへの参入前から掲げてきたものです。

野球界のこれまでの課題

そもそもバンバータは、なぜこのようなフィロソフィーを掲げているのでしょうか。それについて、「野球界では社会的リーダーシップが取れない人材が生まれやすいことが関係している」と熊本さんは言います。

なぜこのような現状が起こっているのかというと、野球界はセオリーが大好きだからです。監督の影響力が大きく、指示を待ち、指示通りに行動する。常に答えがある状態では考える機会がなくなります。

世の中では、創造性や提案力といった新たなスキルが必要とされている一方、野球界ではそのような人材が生まれないことを危惧しているのです。この現状を変えるべく、バンバータのフィロソフィーにもあるように、社会でリーダーシップを取れる人材を生み出すことを大切にしていると言います。

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野球とビジネスの両立
では、実際にどのような取り組みをしているのでしょうか。具体的に挙げられる取り組みは、座学の実施です。定期的な座学やワークショップにより、実践的ビジネススキルを身に付けられる環境を提供しています。

プロ野球では選手として野球にフルコミットすると、セカンドキャリアの問題があり、社会人野球でも野球にコミットしすぎるとビジネスマンとして遅れをとってしまう。そんな中、バンバータでは野球とビジネスの両立をする、ハイブリッド型クラブを目指していると言います。バンバータで得た人脈を営業に活かすなど、パラレルに活動することで、野球においてもビジネスにおいても活躍する選手が実際にいるそうです。

このような体制を明確にするために、権利と義務は明文化しています。中でも特徴的なのは、選手評価制度。アマチュア界では曖昧になりがちな部分を明確化することで、公正な判断を下しています。評価制度導入の目的は、以下の通りです。

バンバータ選手評価制度目的

監督や他の選手による有機的な評価と、パフォーマンスのスタッツやメディア露出などを数値化したものから得られる無機的評価、そしてアカデミーへの貢献度を足し合せることで、公正な判断が可能になっているのです。

バンバータ選手評価制度

アフターコロナの日本スポーツ界

ここからは、上記のチーム内の座学の中でも触れたと言うアフターコロナの日本スポーツ界について見ていきます。しかし、その前に日本と欧米のスポーツクラブの在り方の違いを整理します。

日本型クラブと欧米型クラブ

日本型クラブと欧米型クラブの大きな違いは、収益構造にあると言います。企業スポーツからスタートした日本は、独自の収益構造をもっています。

日本と欧米のクラブ誕生の違いは前講でも触れています。
ヴェルディカレッジ第6講後編

日本のスポーツクラブの収入の柱は、「チケットとスポンサー」。赤字になってもメイン企業による補填があり、その補填は損金算入できる仕組みです。つまり、親会社のメリット前提のエコシステムとなっています。

一方、独立企業として経営を行う海外のスポーツクラブの収入の柱は、「放映権」。観てもらうことが前提のエコシステムを築いています。

おかね

また、クラブと選手のスタンスも大きく異なると言います。日本型クラブは、個人がクラブに依存しており、クラブの秩序を重視するようなクラブありきのスタンスです。

それに対して、欧米型クラブは、選手がクラブを利用する形で、選手それぞれの個性が重視されている、選手ありきのスタンス。そのため、欧米ではどんどん新たなビジネスが生まれるのです。

アフターコロナの日本スポーツはどう変わるのか

コロナ禍において、このような日本型クラブと欧米型クラブの収入構造の違いが大きな影響を及ぼします。なぜならば無観客で試合を行う場合、欧米型クラブは放映権でのビジネスが主なため、一定程度の収益が見込めるからです。

しかし、日本型クラブはチケット収入が入ってこないため、大きな赤字となってしまいます。これでは、親会社による補填でも間に合わなくなってしまう。そのために、ミルク補給(※)頼りにならず、どうやって新しい収益化モデルを作るかが大切になってくるのです。

※ミルク補給とは、親会社等による、クラブの赤字補填。 
野球界では特に、1954年の国税局通達によって、
「子会社である球団に生じた欠損金を親会社が補填するために支出した金は、損失額を限度として『広告宣伝費の性質を有するもの』として取り扱う」とされている。

そのために必要となるのは、これまでとは違う総合的なクラブの形です。選手・チームと企業との関わりだけでなく、多様なステークホルダーと関わることで、主体的に価値創造し、社会貢献が出来るクラブになること。

また、体育からスポーツへの変革をすることで、遊びや楽しみの要素を付加していくことも求められます。その中でアフターコロナの日本スポーツにおいて、いかにエンタメ性を取り込むかが、その1つの方法であると言えます。

エンタメ

質疑応答

今回は、質疑応答の時間が比較的長かったため、多くの学生から質問が投げかけられました。
以下では、その一部を紹介します。

Q.「ブランディングを行っている中で、そのブランドイメージをサッカーで表すことは難しいと思いますが、スタジアムでそれを表現するようなことはお考えですか?」

A.「1番はスタジアムを所有するかどうか。ヴェルディの場合、味スタは借りてる。そうすると障害が多い。好きにいじりにくい。エンタメからは離れる方向にお金が必要になる。日本のスタジアムはそもそも公共的に作られてるのが基本。民間で専用スタジアム作るのが早いかな。
あとはキャパシティのコントロールが大切。ヤンキースも席を減らしたことがある。そして熱狂度アップして、売り上げ伸びるっていうのがトレンド。」

Q.「スポーツと行政が関わると、みんなで公共的に利益をあげないといけないですよね。その中でスポーツとしての利益を求めるのは難しい気がします。そう考えると、スポーツ×民間のほうが発展しやすいと思いますが、どう思いますか?」

A.「行政にもとってもいいことある。スタジアム周りに人が集まって潤うし、地価も上がる。トレンドでは球団が作ることだけど、民間と自治体で作るの手法もあった。
稼働率的には、せっかく作っても専用にすると稼働率下がる可能性がある。だからこそ複合型や周辺ビジネスをして派生させていくことが重要。」

まとめ

考え

講義の冒頭で、コロナ禍の今、日本の経済は激動期であるとのお話がありました。これまでのやり方はもはや通用しない。新しい時代を生き抜くためには、過去の成功体験に固執するのではなく、思い切った姿勢が求められると言います。

しかし驚くことに、この激動期という発想は、昭和39年に生まれていたもの。経済は必ず栄枯盛衰を繰り返し、うまく行く時間も長続きしません。その中で生き抜くためには、熊本さんのように、時代に合わせたマネジメントが必要になるのです。

次回、第8講では東京ヴェルディ、ファンディベロップメント部のお2人、鈴木雄大さん・菊地優斗さんが登壇です。



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