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猫との生活。安心と依存。

実家の猫が行方不明になったらしい。

行方不明になったのはカナという猫だ。僕が実家を出てから飼い始めた猫なのでほとんど面識がない。

実家では猫が家の中と外を自由に出入りできる様にしている。街中では恐ろしくてとても出来ないが田舎ということもあり、そのスタイルで今まで特に問題が起こったことは無かった。

外に出かけていても食事時や寝る時間には帰ってくるのだが、その日は帰ってこなかったらしい。最初のうち、家族はすぐに帰ってくるだろうと思っていたが帰ってくる様子がない。さすがに心配になり、近所のコンビニに探し猫のチラシを貼らせてもらったりしたが有益な情報は特に無い。

1ヶ月ほど経過し、さすがに諦めてコンビニのチラシを剥がした翌日、カナは自力で家に帰って来た。戻ってきたカナの姿はガリガリに痩せていたらしい。カナは元々、車の中に入るのが好きで、知らない車に乗り何処か遠くまで行ってしまったのでは無いかと母は言っていた。

僕はこの話を、妻から聞いた。妻が僕の母と電話をした時の話題なので又聞きだ。又聞きにも関わらず僕はこの話の最後、カナがガリガリに痩せて帰って来たと聞いた時に涙ぐんでしまった。

僕たち夫婦も猫と暮らしている。もし、うちの猫が同じ状況になったらと想像したら涙が出てきてしまったのだ。切なさ、辛さ、健気さ、それらが混ざった様な感情で心がいっぱいになった。いや、もっと単純に家族がそんな状態になったらと思うだけで涙が出てしまう。

うちの猫はみよ子という名前で、年齢が8歳くらいの三毛猫の女の子。誕生日が分からないのは道端で保護した猫だからだ。みよ子は生後数ヶ月のまだ子猫の時に車道をヨチヨチしていた。たまたま通りかかった僕たち夫婦は、車が止まっている隙にその子猫を保護した。最初は近くに母猫がいないか探したが全然見つからず、道路沿いに置いておけないのでそのまま連れ帰った。

みよ子はアレルギー持ちで目元や鼻がぐじゅぐじゅだったのだが、動物病院で見てもらい世話をしているうちにどんどん元気になっていった。その当時、僕たちはペット禁止のアパートに住んでいた。なので、友達や親族に飼えないか聞いてみたが良い返事は得られない。だったらと、僕たちはみよ子と暮らす事を決めた。すぐに引っ越すことは出来ないので最初はこっそりと。

あれから8年が経ち、みよ子は大きくなった。今は体重が6.5kg近くある。本当に大きくなった。みよ子は室内だけで生活をしているし、僕らの暮らす部屋はマンションの3階なので外に出ることはない。でも万が一、みよ子が外に出てしまい行方不明にでもなったら気が動転してしまう。耐えられない。もしみよ子が行方不明になった1ヶ月後にガリガリになって自力で帰ってきたら。喜びと心配で号泣してしまう。

そんな事を想像するだけで、涙が出そうなる。だから僕はみよ子の腹に顔をうずめる。みよ子のフワフワした腹に顔をうずめていると安心感に包まれる。みよ子の事で心配になり、みよ子の腹で安心を得る。

これもひとつの依存なのか?と、僕はぼんやりと考える。顔面に大量に付着したみよ子の抜け毛を取り除きながら。

#エッセイ #コラム #生活 #猫

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