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今年のお名前つけはごいっしょしましょ

私は今、ほんの少し怯えた気持ちで過ごしている。

双子の娘たちの小学校入学を3ヶ月後に控えている我が家。入学前説明会ももうすぐ開催される。娘たちは幼稚園生活が残り少なくなってきたことを寂しがりながらも、新しい生活が始まるのを楽しみにしている。

でもね、親にはお名前つけという、恐怖の作業があるんです。

幼稚園入園前、2人分の園グッズに名前を書いた。それはそれは大変で、作業のあいまに白目を剥きそうになった。

当時の娘たちは体格がほぼ同じ。制服のサイズももちろん同じ。お揃いのものを持たせなくてはケンカが勃発していたから、巾着やらタオルハンカチもまったく同じものにした。

この状況でなにが起きるかというと、名前のつけ間違いだ。

制服の上衣が2着。本来なら1着は長女の名前、もう1着には次女の名前をつけなくてはならない。

なのに私は、うっかりどちらの上衣にも長女のフルネームを縫いつけてしまったのだ。アホですか、と自分に詰め寄りたくなる。深夜、「ああああー……」という呻き声がリビングを這っていく。

昼間の仕事で疲れていたのか、こういうことをなん回かやらかした。もう気が狂わんばかりの絶望感だ。しかも、名前をつけなければならないアイテムの数が多い(なんであんなに多いの……?)。頭を抱えたくなる手をなんとか下ろし、作業を進めるうちに夜が更けていったのが、3年前の早春。

小学校入学にあたっての説明会では、名前つけについてどういう指示があるのか、戦々恐々としている。子育ての先輩でもある友人たちは「幼稚園のお名前つけに比べたら、いくらかましじゃないかなあ」と励ましてくれるけれど。

ただ、今回のお名前つけ大作戦には、夫を巻き込むと決めている。3年前はなぜか一人でこなした作業に、今年は夫婦で取り組むつもりだ。夜中の孤独でしゃにむなあの作業は、一人でやりたくない。

しんと静まり返ったリビングで、黙々とネームタグをつけ、娘たちの名前を書きこむ時間。「なんで私だけがこんな……」と恨みがましい思いにがんじがらめになっていく瞬間。あれって健全じゃなかったなあ、と思うのだ。

「母親なのだから全部やらなくてはならない」という呪縛みたいな思いからいつのまにか解放された私は、前回より少しはうまくやれるかもしれない。母親業7年目にしてやっと、私にとっての子育ての敵は孤独だと気づいたから。

ちょっとくらいヘマをしたって、「どんまい! やりなおそう」と言ってくれる人といっしょなら、きっと心は軽い。

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