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映画『枯れ葉』

2023年 フィンランド・ドイツ
監督:アキ・カウリスマキ

フィンランドのヘルシンキが舞台。
主人公アンサもホラッパも、どちらかといえば生活は苦しく、地味に質素に暮らしている普通の人たち。そんな二人のラブストーリーだった。
物語の初めの方でアンサの勤務先スーパーの更衣室が出てきた。赤とシルバーが印象的で北欧風のおしゃれさを感じた。

顔の表情を変えない人たち。動きもあまりない。セリフは、この言語が全くわからない私には随分と棒読みな感じにも聞こえた。全体的に実験的な映画のような感じがして、初めはちょっと戸惑った。そのうちに、これがこの監督のスタイルなのかなぁと思い、その世界に身を任せてみた。しばらくすると慣れてきて、時々クスッと笑えるようなセリフやシーンもあった。お芝居に派手な表情や台詞回しや動作がないのとは対照的に、音楽や人々の歌は生き生きとエネルギーが溢れていて印象的だった。
二人が互いに思いを寄せ合いながらもすれ違ってしまうシーンでは、主人公の二人が表情を変えない分、私が二人の代わりにより一層「あー・・・、何でよー・・・」とがっかりした。


アンサの家にテレビはなく大きめのラジオだけ。彼女がそのラジオをつけるとロシアのウクライナ侵攻のニュースが流れてくる。ウクライナ侵攻のニュースとそれを聞いて苛立つアンサが、映画の世界を現実に結び付けていた。シンプルな中に北欧風のおしゃれさの感じられるインテリアの部屋は生活感はなく、どこか非現実的にも見えたけれど、急にその全てが現実の世界に取り込まれたように感じた。
映画の中のアンサと、それを観ている自分が、同じ外国の戦争のニュースに同じような苛立ちや悲しみを感じているのが、なんとなく不思議な感覚だった。

テレビドラマではではなく、映画でないと作れない独特の世界だと感じた。観てよかった。



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