見出し画像

石川県立図書館、見学メモ。

【追記】この文章を大晦日に投稿した翌日、年のあけた2024年の元旦の夕方に北陸地方で大きな地震がありました。微力ながら、日本海側の皆さま、石川県の皆さまのご無事と安全をお祈りいたします。冬場の困難もあるかとは思いますが、どうか被害が最小限ですみますように。

***

遅ればせながら、ことし見学させていただいた図書館のメモを残します。
楽しみに、金沢まで出かけて行ったのですが、さすがに素敵な図書館でした。


2023年5月下旬、朝のバスに乗って、着くとちょうど9時前。図書館の前には開館を待っている人たちがたくさんいた。土地がら、東京都心よりも、空間に恵まれているので、私からみると建物もどーんと大きい。
なんとなく脇の入口から入ってみたが、図書館といえど、カフェやその他のコーナー、食文化との連携活動がある様子。

旧知のかたを訪ねていったため、お忙しいなか、ありがたくもご案内をしていただいた。
司書と行政職、図書館サービス会社からの派遣それぞれ半々くらいの比率で80人くらいのスタッフが働いてらっしゃるそう。

ホールは棚田的な座席配置で、地域の伝統的な風景をイメージしつつも、解放感がある。

入口からのぼっていく形式でみていく展示コーナーには、司書さんがたの工夫や演出がいろいろ仕掛けられていて、観てて楽しかった。配置は凝っているぶん、返本業務は大変になるとのこと。(そこはしょうがないよね、と言ってらっしゃった)
ふつうの返本は、全部 book drop ポストで受けつけているとのこと。ドライにできるところは、省力化と、また利用者さん側にとってもわずらわしさがなく返しやすい工夫となっていると思う。

閲覧席は約500席。飲みもの、会話可となっている。
図書館としては新しい環境管理のしかたかもしれないが、意外と利用者さんはみんな受け入れてくれている様子。子ども連れも来やすくなった。
26席のみ静かにする席があって、予約制とはなっている。いま(当時)のところ、「予約が入ってくるのは半分くらいでしょうかね」、というお話だった。静かにしてほしいという人の要望が少数ではあるけど主張はしっかり(笑)、それはそれで引き続き対応が必要とされる部分だろう。

1F 興味を持ってもらう から 4F 知識の世界を深める と、上の階に上がっていくにしたがって本の世界への接し方が深くなっていく仕掛けとなっている。
4階にはとある先生の(私蔵)コレクションが含まれている。文庫とは銘打たなかったものの本格的な書誌学の観点からみてもきっと貴重な資料があることでしょう。
普通の図書館では書庫に入れてしまうような本もここのコーナーには出している。地方史、新聞など、資料から引き出された興味に応じて、調べものに使ってほしいとのこと。
時代順に小説ベストセラーを追うスペースもあり。ファンタジーのコーナーもあり、このジャンルが好きなひとはずっといられそうな感じがある。星の王子さまの多国語翻訳版がずらり、と並んだ比較文学的なコーナーも。

いっぽう、閲覧席近くには、金沢地域で盛んとされる美術や工芸作品の展示もされている。博物館みたいな、アンテナショップみたいな、文化的なものが好きな人たちには、興味をひくものがいろいろありそうな場所になっていた。
ほか、地域の情報も得られる(医療、闘病記など)実際的な機能も閲覧席近くにはある。

子ども向けには、ちょっと意外なようだが、図書館の庭の畑で取れる、玉ねぎ掘りのイベントもあったりして、季節の収穫が楽しめる。
本だけではない楽しみを提供する。たとえば、結果的に、その玉ねぎについての知的好奇心がわけば、ひょいっと図書館の図鑑などで調べて知ることが可能な環境である。そういうさりげない体験や経験の積み重ねが、文化的な生活を自然に形づくっていくと思われた。

子どもスペースの話ではあるが、ハンモック席もあって、本は自由な姿勢で読んでいいという、感じ。のびのびとした気持ちで、豊かな発想がうまれるとよいなぁ。
プロジェクター?で、投影される動く光や影を追いかけてやっつけるゲームもあって、子どもの利用者さんたちが喜んでばたばたと遊んでいた(笑)。

必ずしも静かにしないでよいというゆるいルールだと、静かにしてくださいと言わなくちゃ、というちょっとピリピリした煩わしさも無いのかもしれない。利用者さんのみならず、そこで働く図書館職員にとっても、たいへん寛容でおだやかな安心できる環境がととのえられていたと思う。全体的にもいい雰囲気だった。

書架のようすも、きれいだし(フォトジェニック)、ちゃんと本が高いところまで詰まっている充足感があった。

10年後、金沢という地域に、この石川県立図書館がどういったかたちで馴染んでいるかが、とても楽しみだと思った。
諸事情で、今回の私は写真を撮ってこれなかったので(現地での撮影じたいは許可されてたのですが)是非また行ってみたいです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?