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生成AI研修の話(1)生成AIと哲学

少し前に書きましたが、2月3月に生成AI、特に生成AIと倫理に関する研修をどっぷり受けていました。オンデマンド授業を2コース受けて、そのあと対面研修まで。面白い研修で、講師の方々は哲学系、オンデマンド授業では、人工知能やロボット工学などの先生たちが加わっていました。
オンデマンドでも対面でも、「使えるプロンプトの打ち方」みたいな実践的なものは全くなく、対面研修では連日禅問答みたいなディスカッションをひたすらしました。
そこで新しく知ったこと、生成AIとビジネス、生成AIへの誤解など、面白かったことをメモ的に書いてみようと思います。


生成AIと言えば

生成AIと言えば、人とロボットの中間みたいな女性の横顔がポスターなどに使われることが多いと思うんですけど、みなさまの印象はいかがでしょうか(笑)。
研修の主たる教員の方々は哲学専門の方が多かったんですが、生成AIと哲学がどう結びつくのか。SF小説や映画が好きな人だと理解しやすいかと思うんですが、生成AIはそもそも「人工知能」、その先には人工生命体が見え隠れするんですよね。そして、その途中には、当然人と同じように動けるロボットの開発があります。

『ブレードランナー』の人造人間

映画『ブレードランナー』は、フィリップ・K・ディックが1968年に発表した小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』が原作のSF映画です。数ある映画の中でも、特に1982年に公開されたハリソン・フォード主演の1作目が大好きで、繰り返し見ているんですが、その中にレプリカントという人工生命体が出てきます。レプリカントは人造人間なのですが、人権などはなく、奴隷のように戦闘や過酷な労働(その中には性サービスも含まれる)に従事させられているという設定です。

人造人間なので、レプリカントは皆体格、容姿に恵まれ、知的能力も高い。でも、「人造」だから、人間に勝手に使われる。人間の思惑を外れレプリカントは感情と意思を持つようになったことから、4年という短命を開発デザインされているというのが、『ブレードランナー』の世界の状況です。

レプリカントが求めたもの

映画『ブレードランナー』で、レプリカントのリーダーロイを演じたのは、ルトガー・ハウアー。私の大好きな俳優さんの一人です。法を犯して地球にやってきた彼らが求めたもの。それは、人であれば生まれ持っている当然の、最低限の権利。
ロイの最後の行動からは、人間らしさとは果たしてなんなのかを考えさせられます。(Amazonなどでも見られます。)

https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B00UMB9MBA/ref=atv_dp_share_cu_r

ロボットに人権はあるのか

ロボットは当然人が作るもの。その延長線上にあるレプリカントもそう。であるならば、それらは、人間が奴隷的に好き勝手に使っていいものなのか?
ここに、生成AIと哲学を結ぶ線があります。
『ブレードランナー』のレプリカントたちは、人造「人間」なので、作られ方が違うだけで、そのものは人間と同じです。なので、多くの人は、レプリカントの置かれた状況に憤りを感じることは簡単ではないかと思います。

では、いかにもロボット的なロボットは?

小説『ロボット・イン・ザ・ガーデン』には、ロボットの権利が書かれています。全体にほんわかした小説ですが、その権利の件で、特に性的搾取されないというところは、読んでいてギョッとしました。いやー、いくらなんでも・・・と言えないところが、人間の欲望の恐ろしいところです。
現在、ロボット開発者の中でも、ロボットに人権があるのか、認めるのかというのは、議論が割れているようです。人間が作るものなのだから人間がコントロールすべきであるというのは、理解できない話ではありません。

開発はされていく、だからこそ考える

科学者というのは科学が発展するためなら、倫理面は気にならない人も多いようです。それには、メリットとデメリットが当然あります。生殖技術然り、遺伝子操作然り、クローン技術然り。
今後、生成AIが発達し、人工知能がどんどん進歩すれば、いろいろなものに活用され、きっとロボットなども開発されていくでしょう。その時に、開発科学者は倫理を無視して行くかもしれない。だから、哲学者がそう言ったことを考えていく。開発科学者が考えない線引きやルールを、人の心を扱う哲学から考えていく。

なるほど・・・と思いました。

また、すでに企業内での活用が始まっている生成AIですが、やはり企業倫理やコンプライアンスとどう整合させていくかというのが問題になっているようで、企業のコンプラ部門などで働いている参加者の方もちらほらいらっしゃいました。

さてさて、わたしたちはどう付き合っていけばいいのかな。答えのないことを考えるのは、なかなか難しく、そして楽しいことでもあります。



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