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顧客維持のための解約分析:データドリブンアプローチ

現在、日本をはじめ多くの国で人口減少が進んでおり、市場の急成長は期待できません。このため新規顧客獲得だけに頼るのはリスクが高くなています。金融、流通、通信、サービスなど、多くの産業が一過性の取引よりも長期的な顧客関係を重視しているため、「解約分析」が重要になっています。この内容を、HEARTCOUNT AnalyticsのオフィシャルパートナーであるCOKOOZ合同会社の東(あずま)がご説明します。


解約分析の基本アプローチ

顧客ストックが重要になりつつある

特に、米国のテック企業がSaaSモデルを採用し、既存顧客の維持を基盤に急成長していることが注目されます。このような企業の成功の背後には、顧客の解約動向を把握し、解約分析(チャーン分析)を行うことが重要な役割を果たしています。
これは新規顧客よりも既存顧客のストック収入が読みやすく、伸び率が高く安定しているといるというのも理由です。これはテック企業だけではなく、金融やサービス、流通でも同じようなこと言えるでしょう。そのためには顧客の流出を防ぐ必要があります。

「解約予備軍の予測」と「解約を分析する」ことの違い

解約分析を行う際、「解約者のデータだけを集めればよい」という誤解がありますが、これだけでは解約理由のバリエーションしかわかりません。重要なのは、全顧客の中で解約する顧客と継続する顧客の違いを特定することです。

そのため、継続顧客と解約顧客の両方のデータを扱うことが必要です。これらのデータを基に、機械学習やAIを使って「解約顧客と継続顧客」の違いを明らかにします。

解約には「任意解約」と「強制解約」の2つのシチュエーションがあります。前者は顧客が自らの意志で解約する場合、後者は企業側の判断で解約となる場合です。これらを区別して分析することが重要です。

さらに「誰が解約するか」を予測することは機械学習などのアルゴリズムが重要ですが、「解約する理由や原因・要因は何か?」を追求するには、ビジネスアナリティクスやEDAツールが必要になるでしょう。適切な技術選定が重要です。

データドリブンでの解約分析のアプローチ選択

解約分析には主に2つのアプローチがあります:

  1. 解約リスクの高い顧客の早期発見と対応策の展開(予測)

  2. 解約の背景や理由をデータから分析し、総合的な対策を立案(EDA)

解約リスクの高い顧客を特定し、割引やクーポンで引き止める場合には「1」のアプローチを選びます(機械学習による顧客の行動予測)。一方、”解約”の要因を深く理解し、新しい対策を考える場合には「2」のアプローチを採用します(EDAとデータの組み合わせによる洞察の発見)。
ここで大事なのはいずれも「思いつきや過去の慣習(決まりごと)ではなく、データによる確認と決定を行う」ということが共通しています。

携帯電話会社の決定木による解約要因の探索。「契約タイプ」、「インターネットサービス」、「勤続年数」が影響していることがデータからわかる。業務知見から言えることは何か?

データドリブンによる解約分析の手順

一般的な解約分析の手順は以下の通りです。基本的には以下のようなプロセスがサイクルで何度も繰り返されていくと考えた方が良いでしょう。業務の一部に組み込まれていく必要があります:

  1. 目的の設定:解約のタイプ(「強制解約」「任意解約」「ローテーションチャーン等」)を決め、対策を明確にします。データ分析のプロジェクトで最も重要で、ミスをすると最後まで尾を引くのがこの段階です。

  2. データの選定:目的に合った関連データを特定します。顧客情報や利用履歴などを含めます。ここも重要です。

  3. データの収集:選定したデータを収集し、自動収集と更新の仕組みを構築します。

  4. データの確認と前処理:収集データの品質チェックを行い、不具合や欠損値を処理します。

  5. モデルの構築:機械学習を用いて解約者の特性を把握するモデルを作成します。

  6. モデルの評価:モデルの性能を評価し、予測精度や汎用性を確認します。

  7. モデルの実用化:モデルの予測結果を業務に活用し、具体的な施策を策定します。

  8. モデルの継続的な改善:定期的にモデルを更新し、最適化を図ります。

上記のフェーズで注意が必要なのが「2.」「3.」です。「とにかくありったけのデータを集める」となりがちですが、大半が目的もなくとりあえず集めたデータは結局利用もされず、ノイズになります。まずは「この辺りのデータが必要だろう」と仮説を立て、そのデータを活用してクイックに進めていくことが必要です。そして結果を見てやり直す。まさにこれが「スモールスタート」となります。

データドリブンでの分析結果の例

探索的な分析・EDAでは以下のようなアウトプットを見て、どのような対策を打てば良いか洞察が必要になります。以下はデータはKaggleのChurn分析用サンプルデータになります。可視化でも色々な洞察を得ることができます。

解約分析例:解約者のグループ(右グラフ)は、勤続年数の中央値が短いことが箱ひげ図でわかる。さらに、インターネットサービスの種類(デジタル・光)によっても傾向が異なる。
業務知見とデータの両面から対策の検討を進める必要があります。

機械学習の分類モデル等では「解約しそうなのは誰か?」「他のプランに入りそうなのは誰か?」といった打ち手の対象を選定する「誰か?」のターゲティングは非常に有効です。
ただ、「解約」そのものを理解し、特徴を把握して、打ち手のヒントにする場合には、EDAやビジネスアナリティクスツールなどが有効になるでしょう。

基礎と実践の組み合わせ

解約分析は「高い精度を持つモデルの構築」と「打ち手に使えるアイディアと洞察」が重要です。解約しそうな顧客に「やめないでください」とクーポンを送ることも重要ですが、解約を分析してサービスや製品自体を改善することも重要です。
データサイエンティストやデータアナリストのように、求められた結果を正確に導き出すことが重要ですが、彼らに分析を依頼するマーケティング担当者やマネージャーは明確な目的や要件をデータから見つけ、的確な依頼をすることも重要でう米個別。

また解約分析は、顧客の維持やLTV向上のプロセスがうまくいかなかった結果としても捉えられます。このため、明確な戦略と、データドリブンによる戦術を検討する人材の重要性が増しています。普段から顧客とのエンゲージを高めていくという長期的目線が重要でしょう。

まとめ

ツールを理解して使い分ける

顧客を維持し、解約を食い止めたいという場合、「解約者の予兆を発見する」という機械学習による分類モデルと、「解約そのものの理由や特徴を把握したい」という探索的データ解析(EDA)の組み合わせが重要になります。
何か、ボタンを一回押せば予測をしてくれるという機械学習ツールを導入したけど、何も業務に変化が起こらないとしたら、EDAによる分析とその対策案の立案できていないからです。

普段からの顧客エンゲージも大事

お客様を解約しそうな状態になるまで放置したとなると、MAやSNSを活用したお客様とのエンゲージが足りていなかったためであり、むしろ普段の対策が必要になると思います。

是非、そのような実効性のあるプランと、機械学習・EDA・MAなどのデジタルソリューションを組み合わせた、現実的なソリューションをご検討ください。

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