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夏の終わりと台風

仕事を再開してあっという間に二週間が過ぎた。
9月ももう半ばとなり、夏の終わりを感じさせる空気が漂い始めている。
夜の涼しげな風のおかげで空調なしに過ごせる夜。
一日中、服を体に張り付かせる絶え間ない汗。
そういったものが少しずつ日常から離れていく。
この季節に、僕はいつも寂しさを感じる。
やはり僕にとっては夏がいちばんの季節で、その価値は変わることがないみたいだ。

今年の夏はコロナの影響もあり、いつもと違った夏になった。
子供たちは夏休みをどう過ごしたのだろう。
お出かけや遊びに行く機会が減ってつまらなく感じていたりするのだろうか。ちょっとかわいそうだけど、ちょっと変わった思い出の一つとして残れば、あとで楽しく振り返れる日も来るかもしれない。むしろ親が家にいることが多くなって、小さい子は嬉しく思ったりもしている様子もTwitterとか見てるとちらほら伺える。これはこれで環境に馴染んだ過ごし方が浸透していくのかもしれない。

通常、8月のお盆の時期に田舎に帰省するのが慣例だと思うが、僕にとって夏休みは9月にとるものになっていた。
お盆休みに関われないような仕事ばかりしてきたことや、この時期の航空運賃の高さを避けたいという理由から、時期をずらして9月に帰省することが多かったのだ。
そして9月の思い出といえば、なんと言っても台風だ。

台風は9月に発生するものが多い。
僕は自分の夏休みとして9月に有給休暇を取得して帰省するようにしていたが、その飛行機のタイミングが台風とぶつかったことがある。
飛行機は飛ぶには飛んだが途中で進路を変え、福岡に着陸し、そこから陸路となる。空港で幾らかの返金を受けて電車に乗るのだが、田舎の宮崎までの道のりはかなり遠い。九州の一部は線路が全く発達していない。特急電車が単線なのだ。対向路線の電車とすれ違うのも、各駅停車の電車を追い越すのも、どこかの駅で一旦停止することになる。
周辺は大雨強風なので速度も出せない。
川が増水して鉄道橋の高さギリギリまで迫っているところを徐行するので、非常にスリリングな電車旅となる。というか流されたら間違いなく死ぬ。

この状況が過去、4年連続で起きたことがあった。
いったん何の因果でこんな目に合うものなのかと、雨男ならぬ台風男ぶりに我ながら呆れていた。仕事の将来や自分が何をしていくべきかということに延々と悩み続けている時期でもあった。
僕はこの妙な運を都合よく(?)解釈し、
(これは誰かが俺に「今は帰るべき時ではない」と諭しているのだ)
と考えるようにした。
無意識な状況の正当化でもあるが、自分に発破をかける材料にしようというのもあった。

それからしばらく、僕は実家への帰省をやめた。
ちょうど30歳になった時だった。
なかなか成長しない。

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