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渦中の外へ

こんにちは、齋藤紘良です。
 この記事を書いているいまは2月中旬。2月3日の節分では疫病退散の願いを込めて豆を撒き、立春を迎えてCOVID-19が日本で流行しすでに1年以上が経ったことを感じました。

 さて、みなさんにとって2020年はどのような年になりましたか?
COINNにとっては、それまでの活動が同じようにはいかないことを痛感しながら悩み、メンバー間で話し合いを続けた年でした。
 様々なところで言われていますが、COVID-19の世界流行によって直面した問題は、先送りにしていたそれまでの問題点を浮き上がらせたような印象があります。COINNの音楽活動でも、今までのCOINNライブの形式を新しくアップデートしたいという話や、メンバー間の価値観の違い、物販の在庫管理、youtubeコンテンツ、新しい音源制作の進め方など、以前から解決していなかった話題に向き合う時間が増えました。ライブ活動がなくなった分、目を向けざるを得なかったわけです。
 COINNの活動で大きく変化したのは、物理的に会う機会を制限しなければならなくなったことですね。ミーティングやライブがオンラインのみになったのは新感覚でした。個人的な別の活動も8割がオンラインになったので、人の肌の呼吸を感じることが極度に減ったのは大変化であり、正直に言うと寂しかったです。
 この大変化によって起こったのは、身体の差による優劣が極度に少なくなったことです。これまで、腕力や身体能力の差で上位にマウントをとる人々がその権力を行使しづらくなったことは新たな時代を想像するに易くなりました。先日のオリンピック組織委員会会長の女性差別的発言などは時代によって浮き彫りにされた問題です。30年前ならここまで問題視されなかったでしょう。トランスジェンダーへの差別や人種差別、目視しにくい自然環境破壊など、今に始まったことではありませんが、声の小さきものの意思がクローズアップされ増幅されるようになったのは特にここ数年であり、その流れはもう誰も止めることはできない。この人類の大変化は、地球上の物質的変化とも連動しているとも語られています。オランダの科学者パウル・クルッツェンは「地質時代区分として、氷河期後の完新世から人類主導の人新世へ移行した」と定義しましたし、

イギリスの科学者ジェームス・E・ラヴロックは、人新世の次の時代であるノヴァセンに時代はすでに突入していると唱えています。(「ノヴァセン」は僕も読みましたが、想像的提唱が多いとはいえ実に面白い論でした。)テクノロジーと人間の共生が加速する時代、ただしディストピア的な流れではなく調和を目指していく時代という論文です。

ちょっと話が壮大になりました。時を戻しましょう。
 その大変化の渦中にあって、COINNとしての僕が目指したいのは、「僕らがヒトである理由」を表現していくということです。効率を上げクオリティを高く保つことは、テクノロジーでいくらでもできるようになりました。彼ら機械はエネルギーを与えればそれだけのパフォーマンスを行ってくれます。僕らヒトは、エネルギーを取り過ぎても過多で体調が悪くなるようなある意味”非効率的”な存在です。だからこそ、
・チーム内で作品への感想を面倒くさがらずに伝え合ったり
・時間をかけても異なる意見を混ぜ合わせたり
・遠回りをしてみたり
・一緒においしいものを食べたり飲んだり
・眼を合わせてそらしてみたり
するようなことを大切にするチームであってほしいな、COINNは。と思っています。非効率の中にヒトとしての大切なものがあるのではないだろうか?
 多くのお金をかけてプロがたくさん集まって寝ずに作業して出来上がるTV番組よりも、ひとりのYoutTuberが作り上げたチャンネルの方が人の心を動かすこともあるんじゃないか?巨大タワーの上のスタジオから発信されるものよりも、素人が和気藹々と喋っているようなclubhouseのほうが魅力を感じることもあるんじゃないか?効率や熱量ではなく軽やかさや肌触りを求める人々が増えているんじゃないか?僕はそこに「僕らがヒトである理由」が潜んでいるような気がして「アイムボロット」という曲を書きました。

COINNは、2020年の間にあまり目立った活動をしませんでした。リハーサルもここ一年で数えるほどしかしていません。バンドとしてはまさに非効率。でも、こういう時だからこそ一度立ち止まって、ひとつひとつ確認しながら渦中の外へ歩んでいきたい。渦中の外はきっと晴れやかな心地よい風が吹いているんじゃないかな、という希望を込めて。

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