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コギトの本棚・エッセイ

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ここでは主に随筆や独り言を取り上げてお届けします。
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2021年11月の記事一覧

【コギトの本棚・エッセイ】 「アウトプットは尊いか?」

先日、国立近代美術館で熊谷守一を観た。
ちょうどその日岡﨑乾二郎氏の講演があるということで楽しみに出かけていった。
まず絵を観た。ほぼ年代順に網羅してある大量の展示だった。
熊谷守一の絵は、いわゆる晩年になればなるほど、一枚だけ取り出して見ても、それはどうも安直なものに感じられやすい。
例えば、まさに僕がその通りに思っていたわけだが、講演の冒頭で岡﨑氏が言った通り、熊谷守一の絵は、およそ百貨店など

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【コギトの本棚・エッセイ】 「豚足」

油断していたらすっかり年の瀬です。
無暗に今年のことを振り返ったりしますが、さて何か一つでも成し遂げたことがあったのでしょうか。自信がありません。

年頭に一つ決めたことがあります。
仕事柄、本を多く読まねばなりません。元々活字を読むことは大好きなのでこんなによいことはないわけですが、よく考えてみると、ここ数年仕事にまつわる読書にまったく快楽を感じていない自分に気づきました。
仕事読書は、読書とい

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【コギトの本棚・エッセイ】 「努力は報われない?」

昔からスピリチュアルの類にどうしても苦手意識があります。前世とか占いとかそういうヤツです。
別に憎んでいるというほどファナティックではないのですが、同席相手が目をキラキラさせながら、「霊感が強い」などと話し出すと、途端に白けてしまう自分がいます。

ただ僕が片田舎を飛び出しどっぷり今いる業界に漬かりだして驚いたことは、意外なほどこの世界にはスピ系が好きな人が多いという事でした。
もう十年以上前、プ

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【コギトの本棚・エッセイ】 「トイレフリー」

忙しいのか忙しくないのかいまいちわからない毎日を送っています。最近シナリオを一本書きました。必ずやよい作品になるでしょう。

実は明確に『お盆』というのがいつなのか、いまいちわかりません。とにかく八月の中旬はなんとなく世間は夏休みなんだなぁというくらいで、周囲がいつからいつまで休みで、いつから仕事を始めているのかいまいちつかめないので、物事があまり動いていないような感覚になります。
僕も先日『お盆

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【コギトの本棚・エッセイ】 「翻訳文学」

先日、この『本棚』を監修してくれているN氏と呑んだ。
現在のN氏はなにしろ勤勉で読書に余念がない。先日話題に出したバルトの『明るい部屋』を早速読んだかと思えば、現在はローティに手を出しているという。ドストエフスキーも五大小説のうち四つ読んでいて、五大小説以外の『地下室の手記』を特に気に入っているという。聞くところによると『ホメロス』も『ファウスト』も読んだらしい。
話題はドストエフスキーの翻訳を手

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【コギトの本棚・エッセイ】 「AI」

先日、ご飯を食べながら七時のNHKニュースを見ていたらこんな話題に出くわしました。
「心を持ったAIロボット」、なんでも人の感情を察し喜怒哀楽の『仕草』を表現するロボットが発売されるのだとか。確かに、ニュース映像の中でそのロボットは、人間が笑えば、搭載されたカメラがその表情を読み取り、喜んだ『仕草』をしたり、反対に無表情だとじゃれついてきたりする『仕草』を表現していました。
先に断っておくと僕には

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【コギトの本棚・エッセイ】 「忘却について」

先日、シナリオ作家協会の総会というものに参加しました。一応協会員ですし、シナリオライターがたくさん集まる場所に訪れる機会はあまりないので、野次馬根性(というと怒られてしまうかもしれませんが)丸出しで参加したのでした。

さて、先日、メディアが言うところの『共謀罪』、つまり「テロ等準備罪」法案が可決されました。それに先だって、あまり知られてませんが、わがシナリオ作家協会は(も?)、この『共謀罪』こと

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【コギトの本棚・エッセイ】 「Why do like it?」

最近、再び美術館巡りが再熱しています。先週も、どうしても観ておきたくて、豊田市美術館でやっていた岡﨑乾二郎による『抽象の力』に会期ギリギリに飛び込みました。
展示は盛況(下の階で東山魁夷がやっていたということもありますが)、久しぶりにじっくり時間をかけねばならないものでした。

20代、働くようになって、どうしてか触れなくなったのですが、中学生・高校生の頃、心の支えは本と共に美術作品でした。
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【コギトの本棚・エッセイ】 「不在証明」

本音を言えば電話が嫌いだ。
携帯電話をもって久しく、もう固定電話だけの時代の感覚を忘れたが、今や電話をかけてくる相手が誰かわからなければほとんど着信に応対することはない。
相手がわかっても、下手すれば気乗りがしない場合取らない。仕事上やむを得ない場合はもちろん応対するが、取らずに済むならできるだけ電話したくはない。
と言って、電話で話すこと自体が嫌いなのではないらしい。とにかく、その時間、その場所

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【コギトの本棚・エッセイ】 「座読書 一月〜四月」

昔、誰か忘れたけど小説家だったか評論家だったかが、「小説家には二種類ある、それは書くべきことを見つけないと書けない人間と、書くことがなくなってからしか書けない人間だ」とか言っていたような気がする。
内田百閒とかは後者かもしれない。
井上靖とか前者のような気がする。

なにが言いたいかというと、今、僕にはあんまり書くことがないということ。
別に強制されているわけではないから、書かねばいいだけの話だが

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【コギトの本棚・エッセイ】 「地毛証明書」

とりあえず、何か書こうと思って、タイトルを『地毛証明書』とタイプしたところで、僕は途端にゲシュタルト崩壊しそうになっていることをここに報告せねばなりません。
『地毛証明書』
おそらくは、現在この頭から生えている毛髪が地毛であることを証明するための書類かと思われますが、パッと見ると、公証人役場(これがなにをするべき場なのか僕にはさっぱりわかりませんが)かなにかに提出するしかるべきお固い書類のような字

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【コギトの本棚・エッセイ】 「五月三日」

昨日は憲法記念日でした。
夜七時のNHKニュースを見るまでの僕は「ああ、今日は憲法記念日だなぁ」くらいにしか考えていませんでしたが、ニュースを見て俄然「今日、憲法記念日じゃん!」に変わりました。

日本国憲法は1947年5月3日に施行されたそうです。その前までは、そうです、大日本帝国憲法だったわけです。
つまり戦争が終わっても、2年余り、日本は大日本帝国憲法下にあったというわけですね。
当り前っち

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【コギトの本棚・エッセイ】 「WEB風俗童貞認定」

自分じゃ自分のことがわからないというのは、まことにその通りです。
もともと僕が文士にあこがれたのは小学生時代。以来、あれやこれや読んだり書いたりしてきたわけですが、にも関わらず僕の文章を書く才能は他の人に比べて著しく低いということを自己認識させられた一件が数年前にありました。

きっかけは妻です。
モノを書いたら近親者に読ませて意見をもらいたくなるものなのですが、結婚して以来、料理で言うところのそ

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【コギトの本棚・エッセイ】 「ムード」

短い文章が苦手。というか、恐怖しているといってもいいです。
普段文章を書いておいてなんですが、それともだからなのか、本当にそう。
でも今の世の中かなり短い文章を求められる場面が多いじゃないですか。
ラインとかもそう、ツイッターもそう、フェイスブックとかもあんまり長いと、ダルいと思われがち。
「いや、昔はポケベルというのがあってだな」と思うかもしれませんが、あれは文章じゃなくむしろ「本日晴朗ナレド浪

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