「愛がなんだ」


GW最終日。10連休ではないけどなかなかに連休をいただいたGWも終わり。最終日に家でだらりと過ごすのもな、、と思い立って、映画館へ。

とても気になっていた「愛がなんだ」を鑑賞しました。

エンドロールを見つめながらぼくの脳内にあったことはひとつ…

愛ってなんなんだ~~~~

テルコは純粋だ。純粋ゆえに周りからは理解されないし、理解を得られなくても構わないスタンス。
マモルは純粋にテルコに甘えてる。

電話は絶対に出るし、夜中でも駆けつける、マモルが気持ちよくテルコを利用できるように気遣って嘘だってつくし、会社だって休む。
マモル中心の生活というか人生?
小説だから誇張している部分はあるけれど、恋愛にのめりこんで周囲が見えなくなってしまう人はたくさんいる。
ぼくの周りにだっている。
「恋は盲目」とはよくいったものだ。

この映画でまともなのはナカハラだけだったかもしれない。
葉子と友達以上恋人未満の関係を続けて、「寂しい時に思い出して呼び出してくれる存在であればばいい」と言っていたのにもかかわらず
途中で辛くなってしまって葉子との関係を自ら断ち切る。
テルコは仲間だと思っていたナカハラの”片想い離脱宣言”に怒っていたが、どう考えても正常な判断で、彼はとてもかっこよかった。

長年思い続けることが美徳なわけでもない。
好きな気持ちを抱えながら違う人と付き合うことが悪になるわけでもない。
「愛」の形はそれこそ千差万別なんだろう。

ナカハラ…かっこよかったな…


この映画は
テルコ→マモル→スミレ→テルコ(恋愛的な意味合いではないかもしれない)
ナカハラ→葉子→?
という関係図が成り立つわけだが、

テルコは葉子に、
葉子はマモルに、
スミレはナカハラに、
それぞれ最低だと叱咤する。
全員が全員、自分のことを棚にあげる面白い画だった。

他人のこととなると客観的にまともな意見ができるのになぜ自分のことになると見えなくなってしまうのだろうって考えたときに、
自分のことでないときは損得勘定で物事を図れるのだろうと気づいた。
自分のこととなると損得関係なく、自身の感情が優先されてしまう。
でもこれってかなり人間的に当たり前のことなんだよなあ…とか思ったり。


冷静にテルコの行動は異常だ。
だけれどテルコに怖さや異常性を感じず、この映画をホラーではなく群像劇として見れたのはテルコが辛そうではないからだと思う。
この手の物語は努力しても報われない主人公が悲劇的に描かれることが多い。
だが「愛がなんだ」ではタイトル通り「愛」を蹴散らしてしまう。

「愛」がなんだというのだ。
好き・恋・愛・嫉妬・依存・執着
もうなんだっていいのだ。
その人が欲しい、近くにいたい、もはやその人になりたい。

テルコは好き勝手やる。
報われなくても傷ついても、辛そうな描写はない。
世界を恨んだり自分の人生を後悔したりしない。
むしろマモルに関われないことが彼女にとって1番恐怖なことなのだろう。
だからこそこの映画は面白い!
ハッピーエンドでもバッドエンドでもない。
ドロドロもしていない不思議な物語。


愛とはなんだろう。
人は時に相手のためというけどすべては自分のために生きている。

テルコは傷ついても報われなくてもマモルに関われる人生を、
ナカハラは報われない想いを抱くことが辛くて葉子との関係を断ち切り自分の夢へ、
マモルはコンプレックスを抱えつつ自由奔放で憧れる人物スミレへの思いを抱き、
葉子はナカハラを検索するほどナカハラへの想いを持って探し出す。

それぞれ自分がしたいようにする。
それが人生だ。自分の人生だ。

ぼくは恋愛相談をされることもよくあるのだけど、人って本当に不思議なもので。
友達への顔と恋人への顔ってまったく違う。

かっこつけることも自分へ厳しくすることもできないのが恋愛なのかもしれない。
だからマモちゃんもテルコに甘えてしまうんだ、きっと。
みんな弱い自分を誰かに受け入れてほしいから。
誰かに受け入れられないと耐えられない寂しさが日常に潜んでいるから。

この映画はきっと自分が今現在置かれている立場・環境で観方が変わるのだろうと思う。
ぼくはこの感想をどこかに書き留めて保管しておいて、10年後とかにもう1度映画を見て、10年前のぼくと語り合いたい。

普段は皆さんのレビューや感想を拝見して、へぇ!おもしろい!なるほど!と勝手に感じて完結しているのだけれど、この映画に関しては色んな人の感想や考えを直接聞いてみたいなと思った。ぜひ感想聞かせてください。




「愛がなんだ」

綺麗事じゃない。
みんな、勝手に生きよう。


ちなみにこの映画の素材周りを担当されている木村和平さんという方がぼくはとても好きになってしまいました。
昔使っていたフィルムカメラをまたとり出してパシャパシャし始めてしまったよ・・・



※テルコが会社を辞める時に同僚の子との会話が印象的でした
明確に一語一句覚えているわけではないけれど、こんな感じだったはず…

同僚「おかしいよね」
テルコ「何が?」
同僚「いまどき男のことで会社辞めるなんて」
テルコ「そうかな~」
同僚「普通できないよ。でもそういうまともな人がいるから世界は回るのかも」
テルコ「あはは。でもなぁ、私、世界を回すために生きてないから」