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珈琲、経験、人間関係

「上辺だけの関係みたいだね」と主任。何を言っているんだ、と僕。珈琲の味は人間関係と似ているらしい。よく聞いてみる。すると、過去の記憶が溢れ出るほど共感した。

サイフォンで珈琲を抽出する「とむとむ つくば店」に、今日は2回目の勤務日だった。一通りホールのことを教わる。土曜日の騒がしさが落ち着く夕方に、次は抽出を教わった。初めての挑戦、慎重な手つきで臨んだ結果、主任に言われた。薄い。

僕の淹れたコーヒーは、のっぺりとした珈琲味のお湯だった。もっと濃度のある味を実現するべきなのだ。そのために、よく珈琲豆を撹拌させる。この「よく」は3種類ある。よい角度で、よい深さでへらを指し、よい力加減がいる。よくなるために、とにかく慣れるしかない。感覚的にはまる瞬間を見つけて、身をゆだねる。思考ではなく、体に任せて弓を引くように。考えるより先にうごくサッカーのように。

話を戻すと、珈琲の味は人間関係に似ている。珈琲が薄いと、まだクラスで馴染めない転校生のような味。手が触れ合うだけの恋人のような味。珈琲が濃いと、クラスに踏みこみ過ぎて喧嘩する子の味。恋愛で言うと、同棲して、悪いところもたくさん見つけてしまった味。極端ではいけない。調和が大切なのだ。


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