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TKfrom凛として時雨×Cö shu Nie 2019.10.9@なんばHatch

TKfrom凛として時雨のバンド編成ツアー「 Bi-Phase Brain “L side”」のファイナルが、大阪はなんばHatchで行われた。

先日のÖsterreichに続き、
今回のゲストアクトは大阪で結成された「Cö shu Nie(コシュニエ)」が出演。
Österreichと同じく、東京喰種の主題歌同士の対バンだ。

また、物凄いものを見てきてしまったので感想を綴る。

Cö shu Nie (コシュニエ)

この日は運よく整理番号が良かったので最前列で鑑賞。

音源の極彩色としなやかさのみの前情報で初めて見るコシュニエを楽しみにしていたが、初見最前で見るような音楽ではないことはこの時は知りもしなかった。

照明が落ちると「Cö shu Nie 」の明朝体のロゴが踊る映像をバックにドラム・藤田亮介がTKのグッズのタオルを掲げながら登場、続いてベース・松本駿介が姿を現し、麗しいローズピンクのロングヘアが特徴的なボーカル・中村未来が登場。

1曲目から「東京喰種:re」の主題歌として一気にバンドの知名度を上げた「asphyxia」で幕を破く。

ステージが薔薇一面に埋め尽くされた途端、
戦車のように堂々と爆弾を撃ち落とすドラム、
狙撃銃を乱反射するような攻撃力の高いベース、
強烈な衝撃を受けた。

この時点で目の前で鳴らされている音楽に対して、
既に自分の身に何が起こっているか分からず呆然とした。

両脇に強力な武器を抱えたフロントマン・中村は「お前ら、やってこい」と言わんばかりの堂々たる王女の風格で、音の信頼全てを置いた松本と藤田に次々と音の攻撃を容赦無く託す。

正直余りにも「asphyxia」が衝撃的すぎて、その後のライブの流れはよく覚えていない。とにかく鳴る音全てが雷鳴のようだった。

そんななか、1曲だけ印象的だった曲がある。
明朝体のリリックを散りばめた映像に中村と思わす女性の影が投影された曲。
確か中盤辺りで演奏されたはずなのだが、ゲシュタルト崩壊はあんなに美しく表現されるものなのかと思った。その音と映像だけ焼き付いているのだが、メロディが思い出せない。あれは、幻だったのか?

「TKさん、呼んでくださってありがとうございます、次で最後の曲です、コシュニエでした」

囁くように少しだけ喋ると、ステージにどこか自然で不気味な雰囲気を放っていた蔦の張った鳥かごが柔らかく光り、気まぐれな変拍子で転がされてあっという間に終演を迎えた。

ベースとドラムがなった瞬間に雷が落ちたような衝撃で思考と耳がショートし、
殴り返したいとか逃げたいとか、そんなことは一切考えられなかった。

ピンク色のロングヘアを振り乱し、
ノースリーブのフリルのシャツにひざ下のスカート、
10cmほどのヒールを履きこなす「大人カワイイ」ルックスの中村未来は、
ギターをかき鳴らし歌っている時だけ童話によく出てくるブラックのマントに身を包んだ魔女のようだった。

嘲笑いながら首を絞められ、四方八方から全身を容赦無く殴られる。
人が人を殺す瞬間を赤いワイン片手に眺めているような狂気を感じたのに、
メロディは宮殿のように華美だった。

ライブを見て

ライブは「音楽を鳴らす場所」と言うより、
「Cö shu Nie 」と言う作品だった。

ギターの他にキーボードも弾きこなす中村だが、
3人では手数が足りないのでさすがにピアノは音源であったものの、
仮にピアノも生音だったらどうなってしまうのだろう、と恐ろしく思った。

嵐の中航海するような荒々しさもあり、
ピーターパンとジャック船長の格闘シーンのような感じにも近い。
お伽話を引っ張り出して表現してるけど、
「Cö shu Nie 」と言う世界はそんな生半可に生き残れるような環境ではない。

お世辞抜きで凛として時雨を初めて聴いた時と同じレベルの衝撃を受けた。

曲が終わるたびに拍手を送ったものの、
その拍手する手ですらその世界にのめり込んでしまい、
いや巻き込まれていてすぐに出てこなかった。

ライブが凄いと「バケモノ」と表現するけど、
「バケモノ」どころではなく「怪物」だった。

「Cö shu Nie 」と言うストーリーは美しくて恐ろく、ライブの時間は40分ほどだったと思うが一瞬で過ぎ去った。とてつもなく圧倒的だった。

セットリスト(Twitterより拾いました)
1.asphyzia
2.bullet
3.永遠のトルテ
4.絶体絶命
5,アマヤドリ
6.迷路


TKfrom凛として時雨

セットリストは新木場とほぼ一緒だが、若干変更有り。
先日のオストライヒとの対バンレポも書いております。


転換中サポートメンバーのみ登場し、
音出しチェックを終えるといつものSEで再登場。

1曲目は「kalei de scope」からスタート。

「僕を乗せたメリーゴーランド⤵︎」

2Aメロで語尾を下げた歌い方がなんだか癖になった。
ジェットコースターが落ちる瞬間みたいで。

2曲目に角度によって表情が変わる宝石のような三角錐が出現する「Secret Sensation」、3曲目で泡沫がステージを包み、水に溺れているかのような感覚に陥る「ear+f」と新木場とは逆順で披露。

その後は「haze」「Showcase Reflection」「memento」「Fu re te Fu re ru」「Fantastic Magic」「Shandy」と軽く挨拶を挟みつつ続けて演奏した。

「haze」の風が吹くようなベースラインはとても好きで、
特に吉田さんのバキバキに仕上がった音で聴く「haze」は格段に気持ちよかった。
今回のセトリでは唯一TKがエレアコ(エレクトリック・アコースティック・ギター)を鳴らす曲だ。TKは本当にギターが上手い。特にアコースティックギターのTKの音は一音一音ハッキリと澄んでいてとても好きな音だ。

「Showcase Reflection」のリリック映像は、形成された明朝体がスピーディに交差する。文字が立体化するとどこか幾何学的に感じた。

佐藤のバイオリンから始まる「Fu re te Fu re ru」ではCメロで溜めて、
ラストのサビでワルツを感じさせるテンポの軽いアレンジとなっていた。
このアレンジがとても好きで耳に残ってしまい、音源を聴くとあれ違うな?となってしまうぐらい刷り込まれてしまった。2度しか聴いていないんだけどな。

「Fantastic Magic」のハイトーンはいつ聴いても突き抜けていて気持ちがいいし、キリっとしたピアノから始まる凛として時雨のセルフカバーである「Shandy」もいつ聴いても緊迫感に溢れていて、ライブでは絶対にやる曲だとわかっていても毎回初めて聴いた時と同じような新鮮味を感じる。

「新鮮味」そう言った意味ではTKの曲はどこか数学的な美しさを感じる。
問いに対して必ず応えがある、円周率のように割り切れない永遠が苦しくて、どう設計しているのか、構造計算が理解出来ない近代建築家が産んだ複雑で特殊な美術館のようだ。

「お久しぶりです、TKです。コシュニエ、美しくて暴力的でしたね。
もう少し暴力的な音楽にお付き合いください」

新木場は鎌野愛がサポートで歌ってくれたが、
なんと今回はバイオリン・佐藤帆乃佳が「melt」のボーカルを務めた。

新木場同様、壮大な風景映像をバックに可愛らしさを残した女性らしい綺麗な歌声が「melt」をどこまでも伸びやかにした。
音源で聴いた当初は絶対ライブで聴きたい!という曲調では無かったがライブで聴いて以来、曲の良さがふんだん引き出されていてすっかり好きになってしまった。

ここで、新木場からセットリストが変わる。

「教えてよ 教えてよ その仕組みを」

突然ここで「unravel」を投下し、東京喰種の主人公・カネキの悲痛な叫びを思わせる。「unravel」という曲はこれ以上アレンジなど加えられないほど完成しているのに、未完の艶やかさがある。

ラストは秘密兵器とも呼べる「film A moment」で本編が終了。

「kill the moment」とシャウトをしながら秒速で中指を立てると、
感情を爆発させるようにギターを鳴らしながら歌い、怒涛のクライマックスを締めくくった。
虐殺によって決壊した冬の欧州の街ような無残な心情が剥き出ているのに、
ステージは青と赤が混じる前の紫色に染まり、
音は洞窟に佇む透き通った薄浅葱色の泉のように流麗だった。

「アンコールありがとうございます。美しい歌声の方をスカウトしてきました
コシュニエから中村未来さんです」

アンコールでは特別着替えもせず、予想通り中村とのコラボが始まる。

TKから見て右側に中村未来が登場。演奏曲はなんと「katharsis」
この曲でのデュエットは言わずもがなだ。

凛として時雨が男女ツインボーカルなので珍しさは感じないものの、
アウェイかつゲストという慣れない立場で緊張しているように見えた中村を
曲で引っ張るように歌うTKが特に印象的だった。

時雨の場合、TKに345がついて行くような掛け合いが時雨の魅力であるが、
TKがシャウトで引っ張り、それに中村が引っ張られているように見えた。

緊張していても、中村のキリっとしたハイトーンボイスは健在だった。
中盤まではTKと中村で交互に歌っていたパートがラストのサビでは同時に歌う、TKも絶頂のシャウトをかまし、男女ツインボーカルでの「katharsis」は新たな一面が引き出された。
一夜限りのデュエットの「katharsis」は、
中村のボーカルが加わったことにより繊細さに極彩色が加わった。

「次で、ラストの曲になります、珍しく大阪がラストと言うことで、このメンバーでも最後ですので、自由に、自由にしてください」

そうボーカルのハイトーンとはギャップのある優しくも落ち着いた声で静かに煽ると、映画スパイダーマンの主題歌「P.S RED I」でラストを締めくくる。

東名阪という短いツアーだったものの、初日新木場から「P.SRED I」の盛り上がりは引き継いでいた。
世間ではスパイダーマンの主題歌として大きな話題を呼び、まだ産んだばかりの新曲であった2-3月に行われた「katharsis Tour」から見ている身としては「P.S RED I」は見違えるように成長を遂げていた。

Cメロで新木場同様ピックを持つ右手でフロアを煽り、
歓声と共に一気にフロアからは手が上がったように感じた。

以前はTKのライブで合唱(客側が歌う)が起こったことなんてないし、
むしろそんな人がいたら非難集中だった。
今回「PS.RED I」はその光景に全く違和感を感じなかったのは、
大阪でも同じだった。
「PS.RED I」この熱量のまま続いて欲しい。

一気に会場がヒートアップしたまま、TKがピックを客席に投げてステージを去り
「 Bi-Phase Brain “L side”」はファイナルらしく熱く終焉した。

セットリスト
1.kalei de scope
2.Secret Sensation
3.ear+f
4.haze
5.Showcase Reflection
6.memento
7.Fu re te Fu re ru
8.Fantastic Magic
9.Shandy
10.melt(with バイオリン・佐藤)
11.unravel
12.film A moment

en.1 kathars(with 中村未来/Cö shu Nie)
en.2 P.S RED I

ライブを見て

TKが中盤のMCで「Cö shu Nie、美しくて暴力的でしたね」と言った。
まさにその通りで、楽器でぶん殴るような荒々しさではなく音で殴りにかかるようで戦略的だった。

「Cö shu Nie」という世界は、もっと広まってもいいと思った。
ダークで美しいアグレッシブな轟音、殺される一歩手前を永遠に打ち付けられたようだった。自分で死ぬ勇気なんて持ち合わせていない、殺して欲しかったらCö shu Nieが殺してくれる。

Cö shu Nieはネットではたまに「女性版凛として時雨」と称されている記事を見かける。
「〇〇が好きなら〇〇も好きなのでは?」という勧めでオススメのバンドを教えてもらうこと自体は好きなのだが、アーティスト紹介記事での「ポスト〇〇」「〇〇版〇〇」と紹介されるのは誠に遺憾である。

彼女たちは独創的で摩訶不思議な世界観を織り成すライブで、
そんな他人の生温い評価をぶっ壊した。

勘違いするな、ブログアクセスのために薄っぺらい言葉を使うな、簡単に芸術を壊すな、同じ世界観にまとめるな、「女性版凛として時雨」などではない。

「Cö shu Nie」というアーティストだ。

ツアーを見て

今回東名阪3本のツアーのうち、東京は新木場、大阪はなんばハッチの2箇所に参加。大阪に至っては最前列で見させてもらい、どちらも素敵な夜だった。


TKfrom凛として時雨
österreich
Cö shu Nie

通づるものは「切なさ」「美しさ」「幻想的」「死/殺」そんな言葉が並ぶ。

正直新木場での初ライブ・österreichが素晴らしすぎて、ふわふわとした余韻が冷めぬままCö shu Nie見てもいいのだろうかという気持ちにもなっていたが、
österreichとは全く別の角度から刺された。

「österreich」は孤独だった。楽園のように穏やかだった。
「Cö shu Nie」はカオスだった。轟音の空襲を受けているようだった。

おそらく見たライブの順番が逆だったら感じ方は違ったかもしれない。

彼ら彼女らの音楽には必ず「死」が隣り合っていて
音楽で死後の行先を創っているようだった。
そんな美しい世界に行けたら、今を投げ出して死んだって良かった。


もうひとつ、österreichのnoteに先日のTKのことが書いてある。

使う言葉は違えど、自分が感じたことが共演者も根本的なところは同じように思っていたんだなと思い、少し嬉しかった。國光さんが織る言葉がとても好きなので、好きなミュージシャンが好きなミュージシャンのライブや音楽について触れてくれるのは非常に個人的だがエモい。エモいだけじゃないけど、エモいしか言葉が見当たらない。

新木場の夜も、大阪の夜も、とてもいい夜だったなとしみじみ思う。


奇跡が死んでしまった。

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