見出し画像

【期待の新星】今一番、晴れた夏に聴いてほしいバンド「クレナズム」【シューゲイザー】

クレナズムの最新曲「ひとり残らず睨みつけて」を聴いている時、アクエリアスやポカリ、三ツ矢サイダーなど夏の飲み物代表を思わすCMにぴったりだと、ふと思ったのだ。

クレナズム
福岡県出身のロック・バンド。
メンバーは萌映(vo,g)、河内(g)、まこと(b)、しゅうた(ds)の大学の同級生の4名からなる。シューゲイザーやドリームポップに影響を受けたサウンドが特色。2018年5月より始動し、りんご音楽祭などのフェスやイヴェントに出演。同年12月に1stミニ・アルバム『rest of the dusk』を発表。2019年には1stシングル「花弁/いつかの今頃」を経て、2ndミニ・アルバム『In your fragrance』をリリース。

女性ボーカルバンドとして、シューゲイザーシーンに突如現れた福岡発4人組バンド。いずれ「クレナズム」というロックバンドがJ-POPシーンを率先するのではないか、思わずそんな期待を託してしまう結成2年目のルーキーバンドだ。

そんな結成ホヤホヤのクレナズムの最新曲「ひとり残らず睨みつけて」がフジテレビ系「とくダネ!」8月度お天気コーナーMONTHLY SONGに大抜擢、いつからか夏と言えば連日35℃を超える猛暑となった日本の夏を、朝からクレナズムが涼しく彩る。

バンド史上最速BPMだという最新曲。

颯爽としたビートに、ボーカル萌映さんの聴き飽きない澄んだ声、シューゲイザー特有の幻想的で浮遊感のあるギターの音がたまらなく綺麗な、疾走感溢れる曲だ。

この曲を聴いた時、MVを見る前だったのにも関わらず、だんだん景色が、映像が見えてきた。

夏休みだろうか、部活帰りのフレッシュな制服の17歳、自転車で晴天の夏の海沿いを走る。Suicaが対応していないアナログな自販機を見つけるなり、近くに自転車を止める。すぐにカバンの中から財布を取り出し160円を数え、三ツ矢サイダーのボタンを押した。ガコン、ガコン、ガコン、ガコン。4つ分の三ツ矢サイダーの写真を撮るために、スマートフォンを片手に円陣を組んだ。「早く飲まないとぬるくなっちゃう!」とすぐさまプシュッと4つ分の三ツ矢サイダーを同時に開けた。みんなで一斉に飲む。はあ!と勢いよくペットボトルから口を離せば、4つ分の笑顔が眩しく輝いていた。青春の清い青色、無数のダイヤモンドのように太陽の光が反射する海のように輝いていた。

そんな青春ドラマのワンシーンが浮かんできた。

「あいつらの顔は見たくもない」

「過去の強がった日々はいつだって1人だ」

「1人残らず睨みつけて 僕は劣等感から逃げていく」

「1人残らず 抹殺して」

曲の爽快で軽快なビートとは裏腹に、歌詞のところどころ、過去に追われているような痛々しさを感じる。

過ちやトラウマから逃げたいけど、忘れたいけど、逃げてはいけない、逃げたら終わりだ、忘れようとすればするほど忘れられない、誰もが抱えた治らない傷、いらなくて痛い過去を、真面目で誠実な責任感の強い自分自身と闘っているようだ。

クレナズムを好きだとはっきり言えるのは、音楽療法と同じくクレナズムの音楽が荒んだ心に効く薬としてカタルシスを得るだけでなく、痛みを知った人間が書く心のうちである等身大の歌詞が、クレナズムの世界が好きなことと同じくらい好感が持てる理由であり、要因のひとつかもしれない。

「ひとり残らず睨みつけて」はバンド史上最速BPMだが、他の曲もまたゆったり時が流れており違った魅力がある。

タイトルは夏に聴いて欲しいと書いたが、クレナズムの音楽は夏に似合うだけでなく、春夏秋冬に溶ける。

別れの春、慣れぬ環境に抗いながらも大切な人に想いを馳せる時間、茹だる暑さの夏の昼間、友達とそよ風と一緒に走ったあの日、肌寒い秋の夜更け、窓を見れば空がだんだんと明るくなる朝5時、冬の夜、真っ暗なのにやけに明るいと思ったら月が綺麗だった。

日常に寄り添いながらも、シルクのレースに包まれたような、鮮やかな銀世界のような、夢幻でクリアな世界は季節を問わずに溶け込む。

全ての曲が名曲だと、胸を張って言える。

はじめてクレナズムの曲を聴いたとき、天然のパールを見つけたような錯覚に落ちた。輝いた艶やかな白で、気がつけばすっかり惹かれていて、忘れられなかった。おそらく世界遺産とか、名建築をこの目で見た時、同じような感覚に陥るだろうな、と思った。

クレナズムはもう少しすれば、あっという間に、たんぽぽの綿毛のようにふわりと日本中に飛んでいってしまいそうだ。

クレナズムの音楽はそんなたんぽぽのわたげのように、そよ風に乗って人々の目の前にふわりと現れ、人々の心を紐を解くようにゆるりと溶かす。

クレナズムの作る音楽は、きっと幸せを運ぶ音楽だ。



最後までお読み頂きありがとうございます!頂戴したサポート代はライブハウス支援に使わせていただきます。