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【ライブレポート】宇都宮生まれの新鋭ポップシンガー「秋山黄色」、完全覚醒「一鬼一遊ツアー」Zepp Tokyo 2021.3.10

先日発売されたアルバム「FIZZY POP SYNDROME」を提げたツアーが開幕。

以前より知っていた「Caffeine」とTHE FIRST TAKEの「猿上がりシティーポップ」で完全にどハマり。突如頭角を現した途端、次々とメディアタイアップでさらに才能を開花し続ける次世代アーティストの部類で頭ひとつ分飛び抜けたその才能を堪能すべく、まだワンマンは4回目という彼のライブに行ってきた。

ちなみに私は秋山くんのライブはフェスでも見たことないので初ライブである。

ライブレポート

バンドメンバー4人が登場、秋山はオーバーサイズの白いロングTシャツにスキニーとラフな衣装。演奏を始める前に、噂通りシンセサイザにぽつんと置かれたポケットティッシュからティッシュを取り出し鼻をかみ、一呼吸置き準備をを整える。

最新アルバム「FIZZY POP SYNDROME 」の一曲目を彩る「LIFE on」からトップギアでスタート。しっかりと密度が高く、ぎっしり尖っていた。続けて知名度を一気に上げた「サーチライト」「とうこうのはて」を駆け抜けるように颯爽と歌いきり、まだツアー3本目にも関わらずばっちりと仕上げてきたサウンドを見せつける。

こんばんは、秋山黄色です。ツアー3本目、一番鼻の調子がいいです。ライブに来てくれたり来れなかったり、今はライブをやるのがすごく難しくて、主催から伝わったと思うけど、無事三本目です。

挨拶を挟むとアルバム曲からベースのイントロが耳を引く「Bottoms call」、どこから気怠げな「宮野橋アンダーセッション」は息のぴったりあったサビと遊び心を感じた。

シンセサイザを操りはじめれば「ホットケーキ・ホットバニラ」でスイートなタイトルとは裏腹にエッジが効いた曲を、「月と太陽だけ」は突出した色があるわけではないが落ちサビのファルセットに磨きがかかっており、美しい景色だった。

「夢の礫」では椅子に座りバラードアレンジで披露。厳選された日本酒のようなパンチの効いた純度の高い歌声が響く。”僕の知らないその顔は〜”のイントロが印象的な「モノローグ」はアッパーな雰囲気の中、ゆったりと壮大なバラード要素を含んだ情緒的な歌。「アイデンティティ」もトゲのある抽象的なイントロから意志のはっきりしたメロディへ、まさに曲の”アイデンディディ”が確立されていた。

途中「大幅に休憩しします」と何するかと思ったらドラム前の段に寝っ転がり、スマホをいじり、水を飲み、その間誰も何もしゃべらず、ただ彼の日常を眺めているだけのシュールな時間が生まれていた。ちなみにママに電話していたらしい。

「Caffeine」で空気がひり付いた。彼のライブは甘ったるいレモネードというよりは、炭酸が強いレモンサワーを嗜んでいる気分だった。誰もが知っているレモンの酸っぱい味、バチバチとはじける炭酸、だんだんと音に酔いしれるこの感じ。いつの間にか秋山黄色が生み出した音の海に溺れていた。

怒涛の快進撃は止まらず「猿上がりシティーポップ」はとんでもない爆発力を起こした。轟かす地鳴りのようなドラムに始まり、あれよあれよと全力疾走全力投球、そのポテンシャルは前回のワンマンライブの会場で会った名ライブハウス・O-Crestの300人、ZeppTokyoはコロナで実際入れた人数は600人ほどだと思うがZeppは本来3000人近くを収容する超大型ライブハウス、10倍のキャパを軽々と超えた。

キャパの半分でさらに拍手しかできないライブハウス、確実にぽっかりと穴が開いているにも関わらず、フロアは完全に私たちが知っているライブハウスの盛り上がり方だった。

すかさず「大変な曲やらせてくれ!」と続けて1分半と短い「クソフラぺチーノ」でマシンガンを乱反射するようにクソクソと叫びながら中毒性のあるハードでアップテンポな曲をやり切る。

「いいにくいのですが早いもので最後の曲です」と前置きし、ラストはアルバムと同じく壮大でドッシリとした「PAINKILLER」で本編を締めた。

4回目のアンコールありがとうございます。みんな手拍子するの疲れると思って早めに出てきたけど、準備してないんですぐにやらないです。
自分がライブをやるのも見るのもワーッとしたいタイプで、拍手しかできないライブが想像できなくて、悩んで緑黄色社会のイッセイに電話したらスマブラやってて全然きいてくれなかった。アーティストって強いんだなって思った。
今日は友達とか共演した人とかすごいたくさんのひとがきてくれている。学生のときは音楽が1でリコーダーも合唱もクソ、でも勉強じゃないと思うとのめりこ
めた。みんながCD買ってくれるから俺はハンバーガー食べたりできる。俺は音楽以外で食っていかない、音楽で生きていく。
特に意味はないけど普段容易に感謝しないようにしている。冷めているし。変なところ尖ってて、中学生の時は前髪1cm切るのも拒絶反応があって。でもこの状況を見て感謝せざるを得ない。

上手くまとめられないのだが、最後に「続けるうえで痛みがあって当たり前、だけど痛みを受けるために生きているわけでもない」というようなことを話していた。

”曲を処方する”といいアンコールは「ゴミステーションブルース」、最後に「まだ一曲やってねえ!」と「やさぐれカイドー」の2曲を披露。

こうしてチケットはデビューまもなくしてソールドアウトという大盛況で終演を迎えた。終始楽しそうにライブしていることが伝わった、楽しくも鋭くもある、才能の痛感とライブの楽しさを同時に味わうことが出来たライブだった。

秋山黄色の爆発的快進撃

とんでもないものを見た。”ヤバイ奴が出てきた”のそれだった。

普段は音が好きでライブではサウンドを聴いていることが多い。でも秋山黄色の張りとキレのある歌声は、歌詞とともにストレートに耳に入ってくる。それはおそらく彼の書く歌詞に固有名詞や、気張らない墜落した日常的な描写が多いからだと思う。

“スタバに行ったって コーヒー飲んだって オシャレは事とかできないんだ 僕だしな” クソフラペチーノ
“シンクにレモネード 零した” Caffeine
“夜に眠る為に飲むアルコール”
“夜にモンスター飼って飲んでんの” Bottoms call
“今現在の残金と相談しよう” とうこうのはて

抜群の歌唱力に加えてまだワンマンライブは4回目、フェスなど含めて他アーティストよりライブをした本数はまだ少ない方にも関わらず感情を歌に乗せるコントロールであったり、息のぴったりあったキレのあるバンドサウンドは完全に仕上がっていた。

そして秋山黄色の生まれ持って完成されたライブはどこかで見たようなデジャブも感じた。

あ、あれだ、あの人だ、まだライブを片手で数えるほどしかしていなかった頃の米津玄師だ。

4/3に今回のライブの有料配信が決定。次世代アーティストの中でも特に突出した彼の本領を目撃せよ!


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