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●村上ラジオ2 おおきなかぶ、むずかしいアボカド/村上春樹●

私が初めて読んだ村上春樹の著書は「ノルウェイの森」だ。日常的に本を読む習慣のない両親の、数少ない書籍の中にそれはあった。発売当時に社会現象になったくらいの小説なので、そんな我が家の書棚にも鎮座してあったというわけだ。
その内容と文体から想像して、作者はすらっとしたハンサムな優男という印象を受けた。しかしその後、彼のエッセイを読んでその想像は全く外れているとわかった。とくに容姿端麗でもモテそうでもなく、安西水丸が描くイラストの雰囲気そのままの、親しみやすい普通のおじさんだった。
エッセイは小説から受ける印象とは異なり、考えたり悩んだり怒ったり楽しんだりふざけたりする内容が大変身近に感じられ、一気にファンになった。

ひとたびグッときてしまうとその作家の著作を片っ端から読みたくなる性分なので、村上春樹も大体の作品を読んだ。
しかし話題作と言われると避けたくなるのも私の性分。ノーベル賞だとかハルキストだとか騒がれるようになってからは読んでいなかった。確か「アフターダーク」まで読んでいて「海辺のカフカ」からは読んでいない。ほとぼりが覚めた頃に読もうと思っており、そろそろ何か読もうかなと古本屋に出かけて手に取ったのがこのエッセイ。

アフターダークくらいから作風が変わったと聞くけれどどうなんでしょう。このエッセイは「1Q84」の後に書かれているのだけれど、以前と変わらないハルキくんの日常がそこにあった。親しみやすいおじさんの生活と趣味と思考とくだらないことがそこにあった。

この中のひとつに「男性作家と女性作家」というタイトルの話がある。
日本の本屋の小説コーナーは男性作家と女性作家に分けられている。理由としては男性は男性作家を、女性は女性作家の作品を読む傾向が強いからのようだ。しかし欧米では分けて陳列するなんてことはまずない。なぜ日本はそうなんだろう、といった内容だ。
これについて、もしかしたら理由のひとつかもと思ったことがある。それは文体が関係しているのではないだろうか。
日本語というのは他の言語に比べて男女で語り口調の違いが大きく、それによって男性は男性作家を、女性は女性作家を好む傾向にあるのではないだろうか。
私はどちらかというと男性作家を好んで読むのだけれど、なぜなら女性作家の文体にあまり馴染めないからだ。専門的なことはわからないので上手く説明できないけれど、女性らしい文体はどこかふわふわと宙に浮いているような、現実を描いていても空想のようであり、ぴたりと私の思考にはまらない感じがする。抽象的で申し訳ないけれど、読んだそばからするりと抜けて飛んでいってしまうような感じがする。
しかし同じ女性作家でもそういう印象を受けない作家もおり、私が好んで読むのはそういうちょっと男性的な文体を書く作家なのだと思う。
というのをこのエッセイを読んで思いついた。浅学な私の思いつきであり、言語に詳しい人からすると全然違うと反論されるかもしれない。でももしかしたらと思ったのだ。皆さんはどう思いますか。

ちなみに私は会ったことのない人から男性だと思われていることが結構あります。文章が男性的なのかな。やはりこれは文体が関係しているんじゃないかと思うのです。

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