行列のできるリモコン #毎週ショートショートnote
高校生になり裕貴は落胆していた。
中学時代、それなりに女友達はいたし、部活では黄色い声援を浴びたこともある。ところが今は、女子と目を合わすことすら叶わない。
特に辛かったのは、憧れの佐藤さんとすれ違った時。露骨に避けられ1ヶ月落ち込んだ。
「裕貴、購買行こうぜ」
「おー」
山田に呼ばれ裕貴は席を立った。山田はモテる。イケメンだし、一緒にいると女子からの視線を感じる。羨ましい。
「待て山田」
床に何か落ちている。拾うと小さなリモコンだった。何気なくプラスボタンを押すとプチッと音がした。
「虫を操作するリモコンだ」
山田が裕貴からリモコンを取り上げた。
「虫? あ、え!?」
突然、裕貴の前に女子達が列をなした。全員うっとりした表情だ。
何だ? ついにモテ期か!?
しかし喜んだのも束の間、一瞬にして人気が引いていく。
「何で」
項垂れる裕貴の背に山田は優しく右手を添えた。左手で、リモコンのマイナスを連打しながら。
鬱陶しい虫はすぐ追い払わないと。
(410字)
たらはかにさんの企画です。
【行列のできるリモコン】のお題で、【青春の香る】ショートショート
青春とは…