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嫁のようすがいつもと違う【長い話】

「財布落としたみたい・・・」

朝から珍しく嫁が取り乱していると思ったら
そりゃ取り乱して当然だ。

買い物の時点では財布が確実にあったので
車に乗り込むときor降りたときの暗がりで
落としてしまったのではないかと予想。

目まぐるしく動いて、荷物やら車内を調べる嫁。
痛々しいほどに気持ちが乱れているのがわかる。

こんなときに私ができることはなんだ?

私も大事なものを無くした経験がたくさんある。
パニック状態の人へのアドバイスは逆効果だと
身をもって知っている。
(うるさい!そんなの分かってるよ!)と
反発して撥ね退けてしまいたくなってしまう。

私の場合、何も言わずに、ただ傍にいてほしい。
分かっていたはずだけど、どうしても伝えたい。
(私はあなたの力になりたいんだ)と伝えたい。

「僕に手伝えることあったら、言ってね」

それだけ伝えてあとは必要以上に心配しない。
だって、本人が一番不安を感じているのだから。
ニュートラルな心でサポートすべきではないか。
嫁はとても大事な人だが、子供ではない。

それに経験則で私は知っている。
嫁に悪いことはあんまり降りかからないと。
嫌なことをしない人に嫌なことは起こらない。

だから、きっと、財布が見つからないにしても
なにかいい方向に向かうって漠然と信じている。
あわよくば見つかってほしい。見つかるはずだ。

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

「ううん、やっぱり無いみたい。会社行く」

可能性のあるところを全て探したけど
どうやらそれでも見つからなかったようだ。
出勤の時間が迫っているのでここまでが限界。

「そっか。じゃあ、最後に買い物した所に
僕が電話かけて聞いてみるね」

「うん・・・そっか、そうだね。お願い」

幸いなことに私は休日。
お店の営業時間を待って問い合わせてみるが
結果はダメ。落とし物は届いていません。

(んー、じゃあ警察に連絡するか)

最寄りの警察署に問い合わせてみるが
やはり、財布の落とし物はなかった。

「このまま遺失届を申請しますか?」

担当の婦警さんから提案して貰ったけど
やっぱり落とした本人からの
詳細な情報があると良いとのことで
改めて本人から連絡することにする。

やがて仕事が終わった嫁と合流。
もろもろの手続きを終えてぐったりな嫁。
こんなに落ち込む嫁は見ていてつらい。

「そうだ!寿司食べようぜ!」

そう提案して近くの寿司チェーンへ向かうが
お盆期間真っ只中ということもあって
恐ろしい行列ができていた。オーマイガッ。

「じゃ、じゃあラーメン屋に!」

恐ろしい行列が(以下略)

とぼとぼとスーパーへ向かい
出来合いのものを買おうとするが

「ねぇ、今日何食べたい?」

えっ?作ってくれるの?
いいよいいよ、出来合いのもの食べよう。

「いやー、美味しいの作るよ。
“ぺぺたま”なんかどう?ベーコン買おう」

気丈に振る舞っている。
落ち込んでいるというのに。
ならば私はサラダと珈琲を作ろう。

そして帰るなりキッチンへ一足先に入った嫁が
途端に謎のフリーズ。ピクリとも動かない。

「・・・あった」

はい?

キッチンにあったレジ袋からスルスルと
嫁の愛用の長財布が出てきたではないか。

「よかった!よかったね!!」

気付いたら嫁をハグして背中をさすっていた。
おぉうこれが無意識の行動か。

「え?なんでこんなレジ袋に入ってるの?」

全く記憶にない!と首をかしげまくる嫁。
たしかに、そんな所はノーチェックだった。

可能性としてはこう推察できる。
買い物を終えた嫁が車の助手席へ乗り込む。
無意識に助手席にあったレジ袋へ財布を入れる。
そのことを忘れたままレジ袋を持ち帰る。

・・・うっ、うーん・・・無理すぎじゃない?

「ま、まあ!とにかくごはん食べよう!」

そういって調理を開始した嫁はというと・・・

「ぎゃあ!間違ってお湯捨てちゃった!」
「うわー!“ぺぺたま”なのに卵入れてない」
「ああー!なんか、手順が、めちゃくちゃ!」

いつもクールに絶品料理を作る嫁ではなく
ギャーギャーと珍しく絶叫しまくる嫁がいた。

「ああ・・・もう、マズかったらゴメン」

料理でこんな弱気なコメントをする嫁は初めて。
こりゃ相当に心がぐちゃぐちゃになってるな。

出来上がったぺぺたまはいつも通り絶品だった。
取り乱しても料理の腕は一級品な嫁はさすが。

「ああー・・・なんで!?」
「ああー・・・なんでよ!?」
「ああー・・・はあ・・・」

食べながら自問自答モードに入る嫁。
わかる。解決した後ってこうなるよね。

「じゃあ、洗い物もするねぇ・・・」

ぶつぶつ言いながら食器を洗おうとする嫁。
これは完全に心が疲れている。

「嫁ちゃん、落ち着いて」

「え?なに?」

「君に今必要なことは、休息だよ」

「え?ああ・・・」

「洗い物は僕の担当だろう。休んでて」

美味しい豆を使ったカフェオレを作って渡すと
ちびちび飲みながら反省モードが続く。

「見つかったのは良かったんだけどさぁ
なんで私こんな所に財布入れたかなあ・・・」

「嫁ちゃん、僕は思うんだけどね」

「うん?」

「今回財布が出てきたのは、嫁ちゃんの
普段の行いが良いからだと思うんだよ」

「・・・?」

「割と真面目に“財布が無くなる未来”と
“財布が見つかる未来”の二通りがあって
嫁ちゃんが良い方を呼び寄せたと思ってる」

「・・・そうなの?」

「そうだよ」

オカルトといえばオカルトでしかないけど
この世の法則ってそういうとこあるじゃない。
悪いことばっかり思うと、悪いことが起きる。
良いことをマジに信じると、良いことがある。

そんなわけで今できるもろもろの連絡を終えて
アマプラで絶賛配信中の「ちいかわ」を
見まくって癒された私たち。

結論:「ちいかわ」は神アニメ


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