数学ダージリン #毎週ショートショートnote
「ダージリンてどんな紅茶だっけ?」
珍しく助手席でスマホをいじる妻に
何気なく声をかけた。
はたとスマホをしまい顔を上げた妻は
長い睫毛を瞬かせて視線が宙を彷徨う。
「今朝私が淹れたのがダージリン。
わかった?ダーリン」
僕が言うのもアレだけど妻は美人だ。
スタイルも抜群にいい。自慢の妻だ。
でも妙な言い回しで喋るところがある。
「“ダーリン”なんて普段呼ばないだろ」
「あら。じゃあ“アナタ”にする?」
「いつもみたいに名前で呼んでよ」
「わかった。数学の“センセ”」
「その呼び方もやめてよね…」
僕は昔から数学が好きだ。
数学を人に伝えることに生きがいを感じる。
妻と出会って生きがいが増えまくっている。
「数学ダージリン」
不意に妻が言った。なんのことだろう。
「貴方は数学が好き」
「うん?」
「私は紅茶が好きでしょ」
「うん」
「お互いの好きなものをひとつずつ、ね」
そう言って妻は大きなお腹を慈しむ。
・・・ん?
・・・キラキラネームってこと?
たらはかにさんの【毎週ショートショートnote】企画に参加させていただきました。いつも素敵なテーマをありがとうございます。
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