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コーヒーがわからない日

「なにこれ、美味しくない」

ここ数日、コロナの後遺症により
私は味覚が大幅に狂っていた。
一番驚いたのは、コーヒー。

体調が少し回復したのを機に、ウキウキと
大好きなコーヒーを淹れたのだが…おや?

黒豆茶のような、トウモロコシ茶のような
謎の香ばしい汁の味しか感じなかった。
はっきり言ってマズイ。悲しくなった。

(ああ、これが、味覚が変わるってやつ)

噂には聞いていたけど、こんなに変わるのか。
1~2週間で味覚が戻る人が多いという。
おそらく私も、ころりと戻るのだろう。

でも、もし、このままの味覚だったら・・・

私の世界からコーヒーが失われるかもしれない。
頭によぎっただけでとても悲しくなった。
みっともない。とてもみっともない。

いや、みっともなくていいから
コーヒーの味をもう一度味わいたい。
もう一度美味しいって飲みたいよ。

そうなのだ。
あたりまえのことなんて、ない。

コーヒーがいつも美味しいという
“あたりまえ”の恩恵を私はずっと受けていた。
気付けただけでも良かったのかもしれない。

でもやっぱりまた、美味しく飲みたい。
ここ数日そればかり考えて生きていた。
自分勝手でみっともない。自分の本性。

・・・

今日、おそるおそる専門店でコーヒーを頼んだ。

おいしい。
コーヒーの味がする。
これだよこれ、と小さくガッツポーズ。

思ったより早く味覚が戻った。とてもうれしい。
うれしくて嫁ちゃんにも報告した。
よかったね、と言ってくれた。

自宅でもコーヒーを淹れてみた。ひさしぶりに。
やっぱり美味しく感じる。これは間違いない。
ようやく安心したのか、ため息が出た。

大げさかもしれないけど
コーヒーがわからない日のあいだずっと
覚めない悪夢の中を過ごしている感覚だった。

嫁と、本と、コーヒー。
きっとどれが欠けても私は絶望してしまう。

もしかして好きなものではなくて
どっぷりと依存しているだけなのかも。

考えられるきっかけになってよかった。
今まで以上に大切にしていこうと思う。

コーヒー、いつも美味しくて、ありがとう。

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