見出し画像

雑記(店員機械)

 ブックオフ新宿店にて

A「いらっしゃいませーこんばんわー」
B「いらっしゃいませーこんばんわー」
C「いらっしゃいませーこんばんわー」

 店員の一人が声を上げると、やまびこのように店員がみんな同じ言葉を繰り返す。20分ほど滞在したが、だいたい30秒に一回はこのやまびこが店内に反響していた。完全にキチガイ沙汰である。

 これが本当にムカムカするのだが、どういう神経でこれをやっているのだろうか。歓迎の言葉ではあるが、客のためになっていないのは間違いない。うるさいだけで立ち読みにも、本の選定にも支障が出る。

 では店員のためなのか? でもこんなやまびこ、面倒くさいだけだろう。一体これはなんのためのものなのか? 

 たぶん理由はシンプルで、マニュアルにそう書いてあるから、これだけだと思う。バイトとして雇われた店員は、マニュアルにそう書いてあるから、あるいは先輩や社員の人にそうしろと言われるからただそれに従っているだけだろう。

 これこそまさにブルシットジョブだ。このやまびこで喜んでいる人はいるのだろうか? 「店員の元気がよくて良い!」と思う人がいるのだろうか?
おそらく、ほとんどいないだろう。こういうサービスはテーマパークとかでやるべきであって、みんなしてしかめっ面で本棚と向き合っているようなブックオフという空間には全く不要である。というより、不快でさえある。

 何が不快かというと、もちろん単純にうるさいというのもあるが、機械のように同じ言葉を繰り返しているのが不気味なのだ。人間の機械化をまざまざと感じる。

 とはいえ、実際に私も店員であれば、この謎の「いらっしゃいませーこんばんわー」を繰り返していることだろう。自分から最初の口火を切ることは絶対にないだろうが、他のバイトとの人間関係もあるから、しぶしぶやまびこを叫んでいると思う。

 私も飲食店でアルバイトをしてたから少しわかるのだが、こういう定型文の挨拶は、何度も繰り返しているうちに口にしみついてしまうのだ。最初はちょっと違和感のあった挨拶も、少し経てば口にしないほうが不自然に思えてくる。そうしてまた、やまびこの再生産が行われているのだろう。

 大げさと思われるかもしれないが、この人間の機械化こそが、近代の様々な悲劇の源泉になっていると私は思う。人間、なんにでも慣れてしまうものなのだ。


この記事が参加している募集

仕事について話そう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?