ど素人が、大型特殊免許(農耕車限定)を取得した話し
今回のウクライナ戦争では、ウクライナの農民がロシアの戦車をトラクターで牽引している映像をたまに見かけます。
少々シュールな印象も受けますが、そのたくましさは素晴らしいものがあります。
切手にもなっているようですね。
さて、僕の実家でもトラクターがあります。畑仕事の様々な局面で、父が使用していますが、僕はほとんど乗ったことがありません。とはいえ、父は簡単に乗りこなせているので、「その気」になれば自分でも簡単に扱えるだろうと思っていました。
ところが!
今年のはじめに軽い気持ちで乗ってみたら、予想と全く違っておりました。レバーやアクセル類が、自動車の比じゃないぐらい多いんですよね。単に乗ること自体はできますが、乗りこなすには程遠くて、悔しさとモヤモヤした気持ちが心の中に残りました。
そこで、冒頭のウクライナの戦争です。
トラクターの活躍を見る度に、悔しさが蘇ってきました😅
父も忙しいので、僕を教えている暇はありません。
なんとか習熟できないものか? と思っていたら、農業大学校でトラクターの免許が取れることを発見!
「農業機械利用技能者養成研修」です。
早速書類を揃えて申込みました。
研修は、「講義」と「トラクター運転研修」の2つになります。
講義
道路交通法やトラクターの機能など基本的なことを座学で学びます。また、刈払機の使い方なども併せて講義がありました。
知らないことばかりだったので、勉強になります。
なお講義の2日目のラストには、筆記試験があります。
これに合格しないと、次の運転研修へ進めません。
試験に出そうな箇所を集中的に暗記していたのですが、試験の手応えはイマイチでした。
不合格だったかも……と悶々とした日々が過ぎ去ります。
スケジュールを確認すると、もうあと少しで運転研修が始まるタイミングです。
まんじりともしない気持ちが募る中、ようやく「合格」の通達を受け取りました!
トラクター運転研修
意気揚々と運転研修に臨みます。
しかし、早くもピンチが訪れます。
最初は乗り方などを懇切丁寧に教えてくれるものだと思いこんでおりましたが、いきなり免許試験の本番コースを走ることになったのです!
僕はトラクターも、数回しか乗ったことがなく、扱い方も覚束ないです。
僕以外の研修生は、皆さんプロ農家でトラクターをふだんから乗っているような人たちです。
もしかして、トラクター素人は自分ぐらい!?
かなり焦りまくりましたが、見よう見まねでなんとかコースを一周できました。
ですが、一周するだけでは研修になりません。
信号や踏切、障害物などの本コースを走ることになりました。
ここからが、僕のボロボロタイムです😭
耳元の無線から、教官の「あ~何やっているんだよ!」といった怒鳴り声が聞こえてきます。
僕もこの年齢になると、人から怒鳴られるということはほとんどありません。
こちらも感情的になるのを抑えつつ、「人間修行」だと思うようにしました😟
そうこうしているうちに運転研修初日が終了です。
課題は山積み。
そもそもコースを憶えなくては、どこを走ってよいのか分かりません。
家に帰ってからは、イメージトレーニングに励みました。
しかしテキストには、走行の進路や注意書きが記載されているので、確認用には良いのですが、トレーニングには向いていません。
仕方がないので、GoogleMapの航空写真を見ながら、コースを頭の中に暗記させます。
また、このコースは農業大学校が他の団体から借りているものなので、その団体のHPに行ってみます。すると幸運なことにトラクターでコースを走らせているYouTube動画がありました!
これはイメージトレーニングにもってこいです。
YouTubeでVRモードで再生したりして、なんとか頭の中にコースを叩き込みました。
おそらく、ここまでおこなっている研修生はいないでしょう😁
妙な自信も少し付いたので、2日目の運転研修に臨みます。
2日目は、僕よりもパニックに陥っているオジさんもいて、勝手に仲間意識を感じたりしました。
また、そうしたオジさんについて、教官が僕に話しかけてきました。
教官「どうしてあーなるんだろうね?」
僕「緊張しているからだと思いますよ」
教官「いや、ボケーっとしているからだよ」
それまで教官は研修生のためを思って、わざとスパルタにしているのかなと思っていたのですが、ただの口の悪い人でした😆
2日目も終了し、次の日は補講です。
できの悪い受講生を集めての研修になります。
もちろん僕も該当します。
補講では、初日や2日目よりも、落ち着いてトラクターを運転できました。
もちろん細かい左右の確認ミスなどもありましたが、だいぶ慣れたてきたと自分でも実感があります。
これならば、免許試験も大丈夫かもしれません。
そして本番当日です。
あいにく雨が降っています。
ですが、中止にはなりません。カッパを着て試験をおこないます。
緊張感漂う中、自分の番が回ってきます。
緊張は……ほとんどなかったです。ここで失敗しても命を取られることもなく、再チャレンジすれば良いだけですし、そう考えるとリスクはゼロ。今までで一番リラックスして運転できました。
結果は、合格。
当初はどうなることやら、果てまた逃げ出そうかなとも脳裏よぎったこともあります。
しかし、ちゃんと努力したかいがありました!
研修を終えて
結果良ければすべて良しという感じですが、コースを憶えるのは、トラクターを安全に運転する技術とは別だと思いました。コースについては多少の誘導があった方が、研修生の余計な負担が減りそうです。
あと募集要項は、もう少し丁寧に書いて欲しかったなと。
今回参加した研修の別日程は、いきなり本番コースを走らせるのではなく、小さいコースで段階を踏んで展開すると、あとになって分かりました。
僕のようなど素人は、本来こちらの方に参加すべきだったのでしょう。
まあ今回の研修に限らず、農業全般に言えることですが、意外とハードルが高いんですよね。農業をやろうと思っても、ふつうの人は「農地」を借りることさえもできません。会社を転職するような手軽さは全くなく、ゼロか100かのような決断が迫られることもあります。「半農半X」のような中間をやりたい人も多いはずですが。
……ちょっと話しがそれてきました😅
色々と感じることはありましたが、総じて受講して良かったですね。
今回の研修では、女性や外国の方もいらっしゃいました。年齢もバラバラです。逆に考えると、年齢や性別、国籍を超えた人たちが日本の農業を支えているとわかりました。
すべての研修を終えて農業大学校を振り返ると、先程までの雨が上がって晴天が広がっていました。
心の貯金が一つ増えた気がします。
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