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「仏教婦人会」を改名した話 ③

実行編|コール&レスポンス


 2022年度の始めに、全ご門徒にアンケートを配布した。

2022年に配布したアンケート

 選択肢は毎奇数月に発行している寺報で案を募集したり、日々の月忌参りや毎月の茶話会でお話しながら候補を募った。反対意見や批判的なご意見も覚悟していたが、そういった反応はほぼなく、全婦人会員数のおよそ5割から回答を得ることができた。無報酬の調査で、大金星の回収率。

 お寺のご法要や行事において、お給仕や準備・片付けなど、お世話をしてくださる方々は決まった顔ぶれになりがちだ。話を聞いていると、どこのお寺さまにもそういった傾向はある。自然科学的にはパレートの法則といったところか。では「いつものみなさま」ではない方はどうか。実際のところ、頼りになってくださる方がたくさんいる。大切なのは「お寺対婦人会」ではない、「ひとり」と「ひとり」のあいだにだけあり得る、一朝一夕にはつくられることのない関係だ。


案ずるより


 回収したアンケート結果を整理して、秋ごろ、ふたたび全ご門徒に配布した。

2022年のアンケート結果(数値ではなく傾向をみるもの)

 婦人会の決算期は12月で、婦人総会が年明けの3月に開催される。それまでに、この結果に対する意見を集約しておく必要があった。目を通してもらうことで、この先の変化について各自なんとなくイメージを持ってもらいたかった。加えて、どうしても、という意見があればきっと上がってくるだろうと思っていたが、蓋を開けてみれば変化を好意的に受け止めてくださる方々から激励の声を頂戴するのみだった。


せつない時は


 2月、婦人総会に向けて事前に内容を精査すべく役員会議を開催した。コロナの影響により2回連続で文書審議となったため、総会のリアル開催は実に3年ぶりとなる。1年前の議事録を見ながら令和4年度を振り返りつつ、アンケート結果を一つずつ見ていった。役員会議の進行は私が行い、婦人会の改名についてはどうしますか、と問うと、みんな心は決まっていたようで、すんなり「蓮華の会」でいきましょうとなった。

 面白かったのは、「役員」という肩書きの名称変更について。堅苦しく、責任を押し付けられそうに感じられるから改名しよう、という意見からアンケートをとったものの、

「今からサポートメンバーて言うたち、伝わらん」
「役員を引き継ぐ時に、説明しきらん」

と、口々に言い、結果、一周回って

「やっぱり役員のままがよか」

という結論にめでたく落ち着いた。

 役員会の意見はまとまり、婦人総会に向けて議事録を作成した。これをベースに婦人総会に臨むことになった。

婦人総会で使用するための役員会議事録


進み立つ方に


 総会当日、役員のMさんが、役員会議の議事録を読み上げた。

「仏教婦人会」の改名案について。
最も多かった「蓮華の会」が良い。頭に「湯谷のお寺」をつけるか、婦人総会にて審議。
「蓮華の会」は、爽やかで、かつ 短くて良い。
「湯谷のお寺」は昔からの呼び名で親しみが持てる。追加しても良いが長いか?
性別を問わず、門徒いかんを問わず、時代に即した誰でも参加できる組織へ。

 全会一致の拍手によって、明行寺の「仏教婦人会」は、性別を問わず、門徒いかんも問わない新組織、「蓮華の会」となった。



弔辞


 4月の終わり、第十五世坊守が往生された。百寿の年だった。大正生まれで、明行寺の第十四代から第十七代までの住職を見守られたご生涯に「蓮華の会」から送られた弔辞の文章を紹介して、この話を終わりにしたい。

 嫗坊守さま、薫さまのご往生に接し、ひとつの歴史、ひとつのご縁が紡がれたのだと感じます。それは、私たちへと繋がり、更に若い世代へと繋がって、とめどなく限りなく広がります。同時に、ただひとり、この私のためにだけ届いてくださる光であると、そんな風に感じます。

 かつて嫗坊守さまは、私たちの住まう伍位軒という地域に、この明行寺から歩いてお参りくださっていたことがあると聞いています。大人の足でも、片道2時間ほどの距離です。明行寺の第十四世・宗之住職の若き日のご往生から、第十五世・道雄住職が入寺されるまでの期間、「小さな身体に御衣を纏い、お月忌のお参りにいらしていた」とお聞きするお姿が、偲ばれます。夫たるご住職が不在の期間、門徒を思い、静かに、けれど確かに、ご自身の足で立ち、歩まれ、南無阿弥陀仏のお念仏を今、私たちにご相続くださった、そんなお姿です。

 私たちは、この春、仏教婦人会という組織の名前を「蓮華の会」と改めました。嫗坊守さまが歩んでこられた、仏教婦人という道のこれからを、私たちは今、歩み始めています。
 「蓮華」は「蓮の花」を意図して会の名前になったものですが、日本で「蓮華」と呼ばれる花は今、そこかしこの田んぼで盛りを迎えています。この花の花言葉は、調べてみると、「心が和らぐ」なのだそうです。

 花の香も溢れんばかりの輝く春の終わりに、嫗坊守さま、薫さまが、およそ1世紀に渡るご生涯をまっとうされ、光のお浄土へとお参りされたことを思うと、お寂しい中にも、まさに「心が和らぐ」のを感じます。花の香は、私たちの身へと移り、今ここに、南無阿弥陀仏のお念仏となってご一緒くださっている、と、そんな気持ちになるからです。

 季節がめぐる度、私たちは、花の香とともに、薫さまを思い、お念仏申します。

門徒葬で「蓮華の会」から送られた弔辞




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