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家系図の「女子」とは?

 私がモノを知らないだけなのかもしれません。この方面に明るい方がいらっしゃれば、ぜひ教えてください。

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 福岡県柳川市は、水郷柳川の川下り、北原白秋ゆかりの地、有明海苔に鰻、さげもんと呼ばれる工芸品など、掘って楽しい歴史に事欠かない。その最たるものが、立花宗茂を中心とした立花藩の物語ではないだろうか。
 関ヶ原の戦いに敗れた大名で唯一、旧領への復帰を果たした大名であり、また、妻の誾千代(ぎんちよ)は7歳で女城主、その後、女武将となったことから「戦国最強の夫婦」と謳われる。

 そんな、ちょっと萌える立花藩の歴史を伝える施設「柳川藩主立花邸 御花」は、江戸〜明治期の浪漫あふれる建造物だ。この夏、伝統工芸×文化財として、妖怪を描いた提灯を展示するイベント「怪奇夜行2023」が開催されていた。夜の文化財を、提灯の薄明かりが照らし出す。よく見えないからこそ、却って意匠に目を凝らしてしまう。そこに浮かぶ妖怪たちは不気味というより和風コミカル、ゆるキャラならぬ古キャラとった具合で、怪談風味を味わいつつも、どちらかといえば文化軸での納得とエンターテイメントを享受させてくれる、趣深い体験だった。

御花「大広間」の展示風景
御花「西洋館」の展示風景


 この催しの受付カウンターで、まず最初に案内されたのが「立花家資料館」。展示をより楽しむために、先に資料館をご覧ください、とのことで言われるままに覗いてみると、これまた大変状態の良いかつての大名道具の数々が所蔵されており、とても楽しめる内容だった。のだが。

 気になることが一つある。資料館の展示スペース入ってすぐ、大々的に掲示されている立花家の家系図について。一目見て大作だと分かるサイズと内容だが、この家系図に羅列される「女子、女子、女子」の文字。夭折したから?とか、名前が判明していない?とか、考えてみるものの、どこどこの誰々に嫁す、みたいな傍記も多々見られ、一概にそうとは言えないようだ。一応、その日唯一の職員と思しきカウンターの女性に「大名家の家系の流れに関係あるのは男性、ということでそのように表記しているのか」と意図を質問してみたが「そういったことは分かりません」とのことだった。(まあそうですよね)

 調べてみると、この立花家の家系図を2012年に作成した資料館の職員の方のブログが見つかった。家系図の全体も、ここから見ることができる。

 「やたらと戒名が詳しいこちらの系図」とあるが、その元気が「女子」の名前の記載に割かれることはなかったのだな、としみじみ。

 なんというか、家系図の目的を鑑みれば、確かにこの時代の大名家の家系、一族の系譜を概観するのに必要なのは、男子方の名前だけなのかもしれない。しかし、その裏側に「女子」による姻戚関係の功績があることを否定する人はいないのではないだろうか。さながら「誰の稼ぎで食っているのか」とか言って怒鳴ったりする前時代の遺物っぽい家父長主義的な価値観、はたまた、実際に歴史上の偉人はほとんど男性だとか言ってお茶を濁してみたりする言い分を、勝手ながら感じ取ってしまうのだった。

 例えば、夫婦が離婚する場合の財産分与が制度として定められたのは、日本においては第二次世界大戦後のことだ。その後、時は流れて平成8年、婚姻制度のあれこれについて審議を続けてきた方々の民法改正案要綱なるものの提出によって、裁判実務上の財産分与は夫婦公平に半分ずつ、ということになっている。夫婦の財産は、実質的に夫婦双方の頑張りによってつくられている、ということが法規的にも明らかにされたのだ。しかし、いかに制度を整えようとも「誰の稼ぎで食っているのか」意識を社会的、文化的に「そんなダサいこと言ってー、落ち着きなさいよー」と宥めていくには、まだまだ時間がかかるのか。およそ30年。長いのか、はたまた短いのか。

 数日寝かしてみたが、疑問に思うことに疑問だと言うのをやめてしまうのもどうかということで、件の資料館にメールで問い合わせてみることにした。回答があれば、続報を記載したい。

精進します……! 合掌。礼拝。ライフ・ゴーズ・オン。