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『絵師・小粥』を紐解く

 宗教家とは、何か。
 この問いの答えの数は、宗教の数どころの話ではない。例えば仏教においては最低でも宗旨の数だけはあるだろう。個人的には、宗教に携わる者を自認する人の数だけあるような気がする。
 仏画や曼荼羅を描く絵師、小粥さんは宗教家か。私の答えは「まごうことなき宗教家」だ。


「小粥展」


 2023年2月末、個展でご一緒した。

小粥(こかゆ)さん

1985年生まれ、大分県国東市在住の仏画/曼荼羅絵師/イラストレーター。 学生時代は彫塑専攻で石膏像を制作していた。
ネパール放浪中にチベット仏画に出会い、日本とネパールを往来しながら
仏画/曼荼羅の制作を始める。壁画曼荼羅や創作仏画など、型にとらわれな
い作風と複数のタッチを持つ。2019年、悪性リンパ腫と診断され長期療養
に入るも現在は寛解している。
毎日同じスケジュール、同じ食べ物でも苦にならない。神仏問わず祈る。
ひとりでどこへでも行く。

 会場は熊本駅のほど近く、浄土宗大宝山来迎院さま。副住職で書家の小川大心さん主催。来迎院さまにご縁の深い方々を中心に多くの方がお運びくださった。二日間に渡って行われた記念イベントも大盛況のうちに終了したが、今振り返ってもご参加くださった方々のあたたかいお力添えなくしては成り立たない企画だった。お蔭様とは、まさにこのこと。

大宝山来迎院(たいほうざんらいこういん)さま

1300年の歴史がある浄土宗のお寺。
熊本駅のほど近く、万日山(まんにちやま)の麓にあり、熊本市指定有形文化財の活人形『 聖観世音菩薩像 』が祀られている。本尊は鎌倉期に造られたとされる阿弥陀如来像。
お寺は人々が集い、つながる場所。誰もが気軽に「ふらっと立ち寄れるフラットなお寺」として多世代が集まる地域のサードプレイスを目指している。
( http://www.raikouin.or.jp/ )

小川大心(おがわだいしん)さん

來迎院副住職。1978年生まれ、熊本市出身。
約13年の会社勤務を経て、2016年から來迎院の副住職を務める。
僧侶と一緒に楽しみながら書を学ぶ、大人のビギナーズ書道サークル「お寺de書楽」を主催。
その他、様々なイベントを毎月開催。

 会期が二日と短いため、イベントは両日行うことにした。1日目は小粥さんと私(codama)のトークイベント、2日目は小粥さんのライブペインティングと遇々による御念佛ライブ。そんなイベントの様子を動画におさめている。

codama(こだま)

アーティスト。ピアノの弾き語りや、音楽ユニット「ブランコノリ」での楽曲制作の他「遇々」名で住職である夫と共に演奏し、お聖教の言葉に「浸かる」。
自身の仏道研鑽の一環として各種イベント企画・ディレクションを行う。僧侶、坊守。小粥と同じ1985年生まれ。

遇々(たまたま)

codamaと福山智昭による、めおとユニット。念佛系。

福山智昭(ふくやまちしょう)

明行寺住職。浄土真宗本願寺派布教使。笙演奏による仏徳讃嘆と仏縁の融合を模索中。


1日目 対談 : 「ご先祖さまに胴上げされている」

 同じ1985年生まれの二人の「信仰遍歴」を軸に、同時期の各々を振り返りつつ半生を語る前半。

 今回の「小粥展」をベースに、小粥さんの制作にまつわるあれこれを紐解いていく後半。

 絵画は当然、実物を前にしなければそれが何かを感じることは難しい(と私は思う)が、小粥さんの宗教感と、結果生み出される作品の関わりを知るうえで、興味深い時間だった。また、小粥さんという人の日常モードはとても明るく愉快なキャラクターで、お話しするのはシンプルに楽しい。それも、小粥さん風に言えば「流行りのコスメを語るかのように仏教について語る」ことができるという、得難い楽しさだ。

2日目 LIVE&PAINT : 小粥 × 遇々 「南無阿弥陀仏」

 トークモードとは打って変わって、目の前の支持体に仏尊をお招きするための器と化す小粥さん。終盤、一気呵成に描かれる線によってあらわれる様子に、思わず手が合わさる。和紙をクレヨンが染めていく音の、えも言われぬ尊さ。

 1時間、というタームだけを決めて、お互いに何をするかは特に打ち合わせることもなく臨んだライブ。演奏していた位置からは作品の様子が見えず、終了後、間近で目にした時は、震えた。
 ご参加くださったみなさまからは「あっという間だった」という声を多く聞いた。動画を確認すると、確かにあっという間だった(主観です)。



「小粥展」を終えて

 浄土真宗本願寺派の僧侶である私は、ご法要やご葬儀、その他のあらゆるお仏事は、この私一人のためのご縁であるとお聞きする。私の手があわさり、私の口からお念仏が出てくださる。それが遇々、これまたご縁によってその場をご一緒くださった方々のお念仏へと繋がっていく、かもしれない、のだと。
 この度の「小粥展」は、まさにこの私のためのご縁だった。

称名



※ 「小粥展」の告知の際に書いた記事。概要はこちらから。




精進します……! 合掌。礼拝。ライフ・ゴーズ・オン。