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絵仏 0.0

 小粥さんという絵師がいる。
 単身ネパールに渡って緻密なチベット仏画を仕上げて戻ったかと思えば、「株式会社涅槃」(そういえば何の会社なのか知らない)で神仏を登場人物としたゆるめの漫画を描いていたりする。

 2021年9月に「修行vs煩悩 - 日本仏教のある現在地 -」と題し、真宗大谷派の僧侶であり漫画家・作家・イラストレーターのみつざわひろあきさんと、いつからかInstagramで気になって仕方なくなっていた小粥さんの二人展を企画させてもらった。そんなところからのご縁で、小粥さんが九州初の個展を行うにあたり「一緒に」と声をかけてくださったことは、身に余る光栄、小躍りしながら了承し、会場となる熊本市にある浄土宗のお寺、大宝山来迎院の副住職、小川大心さんを交えて打ち合わせ、この企画が世に生まれ出た。

 仏教ファンの方、絵仏萌えの方、勤行フェチの方、のみならず、なんとなくお寺なんかにも行ってみたいかなという方々も、新しい楽しみ方みつかる、かもしれません。ためしにぜひ、お運びください。

九州初・小粥展 in 大宝山来迎院


イントロダクション

  宮崎出身でありながら、これといった関わりを持つ機会のなかった熊本で、九州初となる個展をひらく巡り合わせが、奇しくも作家自身と仏教と絵画の三つ巴を紐解く端緒となった。
 
 描くことは「祈りをかたちにする」こと、と語るその筆があらわすものは、浄土真宗の開祖とされる親鸞が「法身はいろもなし、かたちもましまさず」と伝えるもの、それ自体といえる。一方、6世紀前半の日本に仏教が伝来して以降、その儀礼や修行に欠かすことができないものとして発展し、生み出され続けたのがあらゆる仏教美術である。遥か2500年前のインドから東へ東へと海を越え、「今」この身に届く「よすが」を、小粥展から垣間見ることができるのではないだろうか。
 
 小粥は、思春期に密教寺院で行われた断食行に繰り返し参加したり、脱サラ後に高野山で住み込みの給仕をしたりと、いわば修行的に自意識と対峙するなかで不動明王様との繋がりを感じる一方、生家の宗旨は浄土真宗で、常に共にあり、無条件に応援・庇護してくれる先祖の存在を、阿弥陀如来様に重ねている。そんな二尊との縁が、作品や信仰の土台となって人生の節目に入れかわり立ちかわり訪れる。本展では、二尊すなわち「自己の追求と一如としての自己」が貫く以下の4つの制作領域を見ることができる。

 
 第一に、2014年から2022年10月にかけて8度ネパールに渡り、単身現地の画工の門を叩いて制作した《チベット仏画》の掛け軸。これは本来、仏僧が修行の一環として描くものである。釈尊誕生の聖地を抱くネパールで自身を追いつめ、画道修行がそのまま仏道世界への沈思へと繋がっていく。仏法と絵画の両道が修行のうえにリンクし、その道を歩む足取りがそのまま生業へと繋がる契機となっている。
 
 第二に、神仏に帰依する修行者でもある小粥が、画布の上に降り立つ神仏を自らの筆致で顕現させる《絵師としての作品》。ミケランジェロが既に石の中にある像を彫り出したように、ミック・ジャガーが宙に浮かぶメロディを歌いあげたように、小粥が描く対象を自ら意図して選択することはなく、作品は自然(じねん)と縁によって定められ、可視化されてゆく。
 
 第三に、《1000曼荼羅プロジェクト》と題しInstagramで発表を続けるオリジナル曼荼羅。DM等から依頼を受け、得た情報や受けた印象から対象を寿ぐ曼荼羅を制作している。幸福への祈りを描き出すことで、自身をも拯われていくことを経験するこの作品群は、現在150を越えている。
 
 最後に、同じくInstagramで発表を続ける《ゆるく連載、【漫画で親しむ仏教】》シリーズの原画を展示する。主に仏尊を登場人物とした「株式会社涅槃」で繰り広げられる日常を描く本作について、小粥本人の言は「推し活を見せびらかしている」。仏道を歩むよろこびを伝える正道ともいえるアプローチである。
 
 その他、これまでの展示でいつも好評を得ているネパールを中心とした旅の絵日記を展示する。ここでは小粥の人柄や生の声に触れることができる。
 
 「人身受け難し、いますでに受く。仏法聞き難し、いますでに聞く」2500年前から変わらない、三帰依文の冒頭の句である。一切衆生をもらさず拯う阿弥陀如来様を御本尊と仰ぐ大宝山来迎院での今回の個展。そこから紡ぎ出される仏縁に、合掌。


九州初・小粥展

2023/2/25(土) 12–18時、26(日) 12−17時
※ 入場無料 (下記「記念イベント」開催時を除く)
※ イベントへのご参加をご希望の方は、以下の予約フォームをご記入の 上お申し込みください。尚、お支払いは当日会場にて現金でお願い致します。

▽ 記念イベント予約フォーム ▽
https://00m.in/fHoaz

▽ 詳細はこちら ▽

▽ 大宝山来迎院 ▽


記念イベント

1 . 対談:
小粥 × codama 「ご先祖さまに胴上げされている」

  2/25(土)  open. 13時半 / start. 14時 –
  ¥2,000 (1drink + 特典つき / 定員 30名)
  ※ 特典...善女龍王ポストカード+非売グッズ

2 . LIVE & PAINT:
小粥 × 遇々 「南無阿弥陀仏」

  2/26(日) open:14時半 / start:15時 − 
  ¥3,000 (1drinkつき / 定員 30名)


作家・出演者紹介


小粥  (こかゆ)

小粥

1985年生まれ、大分県国東市在住の仏画/曼荼羅絵師/イラストレーター。 学生時代は彫塑専攻で石膏像を制作していた。ネパール放浪中にチベット仏画に出会い、日本とネパールを往来しながら仏画/曼荼羅の制作を始める。壁画曼荼羅や創作仏画など、型にとらわれない作風と複数のタッチを持つ。2019年、悪性リンパ腫と診断され長期療養に入るも現在は寛解している。

  毎日同じスケジュール、同じ食べ物でも苦にならない。神仏問わず祈る。ひとりでどこへでも行く。


codama (こだま)

codama

 アーティスト。ピアノの弾き語りや、音楽ユニット「ブランコノリ」での楽曲制作他、「遇々」名で夫である住職と共に演奏しお聖教の言葉に「浸かる」。
 自身の仏道研鑽の一環として各種イベントの企画・ディレクションを行う。僧侶。坊守。小粥と同じ1985年生まれ。


遇々 (たまたま)

遇々

 codamaと福山智昭による、めおとユニット。念佛系。


福山智昭 (ふくやまちしょう)

福山智昭

 明行寺住職。浄土真宗本願寺派布教使。笙演奏による仏徳讃嘆と仏縁の融合を模索中。


主催


浄土宗 大宝山来迎院

大宝山来校院

 1300年の歴史がある浄土宗のお寺。熊本駅のほど近く、万日山(まんにちやま)の麓にあり、熊本市指定有形文化財の活人形『聖観世音菩薩像』が祀られている。本尊は鎌倉期に造られたとされる阿弥陀如来像。

 お寺は人々が集い、つながる場所。誰もが気軽に「ふらっと立ち寄れるフラットなお寺」として多世代が集まる地域のサードプレイスを目指している。


小川大心 (おがわだいしん)

小川大心

 来迎院副住職。1978年生まれ、熊本市出身。約13年の会社勤務を経て、2016年から来校院の副住職を務める。
 僧侶と一緒に楽しみながら書を学ぶ、大人のビギナーズ書道サークル「お寺de書楽」を主催。その他、様々なイベントを毎月開催。


精進します……! 合掌。礼拝。ライフ・ゴーズ・オン。