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【短歌】操車場にオレンジ色の孤独たち発車できるとまだ信じてる

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心のままに詠んでみました。ベクトルを定めないスタイルで綴ります。
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2019年1月の記事一覧

短歌 影 十首

短歌 影 十首

永遠という幻は芳しく多くの人を惑わす魔物

ひとはひと わたしはわたし それだけのことを解すのにきのこが生えた

横顔を射抜く真冬の夕焼けがずっとあなたを責め続けてる

もう今日は帰らないでね いつもよりたくさん米を炊いちゃったんだ

もしもまだ間に合うならばごめんねを伝える相手がいる いかないで

太陽は雲に隠れてちょうどいい 影のない人はたいてい嘘つきだから

舗道には二人の影が踊ってる さよ

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短歌 目 十首

短歌 目 十首

生真面目は褒め言葉ではありません そろそろ上着を脱いだならどう

目に映るすべて愛してみたかった かつてあなたがそうしたように

嘘をつくとき両の目がよるという癖に気づいた私はえらい

目薬を五階からさすチャレンジはギネス記録になるのでしょうか

まなざしは雨が降るとき柔らかく春の予感を呼び覚ましてく

古本屋で再会した「書を捨てよ、町へ出よう」を凝視する夜

前髪が目にかかってる

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短歌 休日 十首

短歌 休日 十首

mixiにつけてる君のぼやきなど今どき誰が読むというのだ

真剣な顔でスマホを操って今日この頃の愚痴を彩る

ぽつぽつと消えてゆく泡を含んで甘ったるいと文句をつける

ふたりして不機嫌な日は毛布から出ずにキャンディー壊し続ける

理想郷それは二丁目はす向かい ファミマのとなりの我が家のこと

今年こそ痩せると決意してポテトサラダを食べてからのマカロン

女の子だった頃もあり

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短歌 ピアス 十首

短歌 ピアス 十首

カルーセル止まらぬうちに咳隠す くるくるくるって楽しいねって

難しい顔をして聴くJ-POP あたしひとりで死んでいくんだ

手を振って笑ってないで今すぐにロックスターとして突っ込んで

受話器から聞こえる声を握りしめ硬化してゆく夢のあとさき

海のない街で育った君の口からウミネコの鳴き声を聞く

指先も濡れているからもう少し待っててピアス外したら鈴

飴玉を転がす舌の色見

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短歌 スイーツ 十首

短歌 スイーツ 十首

しゃぼん玉ぱちんと割れて独りきり冷めた紅茶の行く末を知る

カスタードプリンに宿る悪意とは甘い時点で君と等しい

マカロンの作り方より単純な私のこころ早くいなして

あかんべえザラメのような恋をした 甘ったるくて舌に居残る

チョコレート欲しけりゃ二月十五日を私と一緒に待ってみて

レシピには載らない君のぐうの音を聞きたいために涙を隠す

新しい靴を履くとき思い出す 黒猫の

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短歌 灰色 十首

短歌 灰色 十首

これ以上嘘はつけない幸せになったところでそれ嘘だから

テーブルにとまった羽虫を潰してほんの小さな罪に溺れる

もう誰も思い出さない忌念日が私の手帳にシミをつけてる

笑うしかない僕らには嘆く暇なんてないからもう笑うしか

手編みしたマフラーなんて今どき首に巻いたら絞められそうだ

色のない街に暮らして君だけが私のなかで色づいている

灰色はネズミ色ともいわれるしもう少しだけ可愛くてい

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短歌 冬空 十首

短歌 冬空 十首

底冷えの街に暮らして明日もまた同じ夕陽を待ちわびている

街はもうクリスマスなどは置き去りそんなものさと笑うみなさん

から回る歯車抱いて星空を見上げ損ねる日々を重ねる

ほらここが孤独の巣だと指をさす左の胸の16ビート

僕たちはひとつになれずこの街で影と涙を落とし続ける

たなごころ開いて閉じてまた開く ぬくもり確か憂いも確か

正しさは窮屈だから三つ編みはほどいてしまえ優しくなれる

くるく

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