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【小説】陽羽の夢見るコトモノは

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ある日突然自宅が神殿になってしまったら。いつも通りアルバイトに行くしかないじゃないの。神さまとの、穏やかな日常生活のお話、なのかな?
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2023年1月の記事一覧

【新連載】陽羽の夢見るコトモノは(1)

【新連載】陽羽の夢見るコトモノは(1)

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陽羽はこの日も機嫌がいい。たまたま入ったモスで注文したポテトSサイズの中に、陽羽の中指より長い一本が入っていた。それだけではない。オニポテの衣が、実に絶妙な揚げ加減だった。

中指より長いポテトを一口食べる。まだ三分の二くらい残っている。それだけで、陽羽の心の中に埋め込まれたセンサーは、喜びを表すごとく七色に輝く。

陽羽はモスのガラス窓から外を見る。口もとをもぐもぐさせた自分が映って、思

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陽羽の夢見るコトモノは(2)

陽羽の夢見るコトモノは(2)

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(2)ブレックファースト突如現れた少女は、伊織の携えていたエコバッグの中の菓子パンに興味を示した。

「おなか、すいてるの?」

エリーゼが問うと、少女はこくんと頷いた。

「だってさ。そのパン、くれない?」

遠慮というものをまるで知らないエリーゼに気圧されて、伊織はおずおずとエコバッグを渡した。菓子パンを手にした少女は「ありがと、いおり」と礼を述べた。

(……って、ええっ?

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陽羽の夢見るコトモノは(3)

陽羽の夢見るコトモノは(3)

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(3)公園伊織が暮らすのは一人暮らし用のアパートなので、この同居が大家さんにばれたら追い出されるかもしれない、という危惧があった。

朝、ゴミ出しに行くときもエリーゼは、バリバリのパンクスタイルにピンクヘアをばっちりきめるものだから、目立つなというほうが難しかった。

「あいさつ? しといたよ」

あっけらかんとエリーゼが言う。聞けば、ゴミ置き場を掃除していた大家の遠藤洋

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