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【第三章】呪い

すると紋付袴の年配の男性がや割烹着を着た女性、その他にも紋付袴や黒留袖を着た女性やら何処にいたのか奥からバタバタと小走りできた。

「おかえりなさい」

と若者の中の誰かの母親なのだろう、とても品のある仕草の女性が言った。
他の親だろう人達も「ようかえってきた!」と笑顔で、それまで屋敷の中になかった華やかな空気と活気に溢れた。

若者たちは各々に、手入れの行き届いた和風庭園に行くものもいれば、台所で出来上がった料理をつまみ食いする子もいたりと自由に動き回る。
私はなぜここにいるのだろう?わからないまま様子を伺っていると、黒紋付袴を着ている中でも一番年長であろう老人が話しかけてきた。

「今日はとてもめでたい日なんじゃよ」

私は耳を傾ける。

かつてこの村で鬼との紛争がおきたとのこと、その時ここの村の長であるこの家は酷く恨まれ呪いをかけられたらしい。

「その呪いというのがじゃな、この家に産まれた子供をみつけては魂を喰らいにくるというものだ。要は末代まで祟る…といったものかの」

老人は縁側へゆっくり歩を進め、手入れの行き届いた和風庭園で遊んでいる若者達を遠い目で眺めていた。

「しかし鬼はこうも言った。『20歳まで隠れる事が出来たなら見逃してやる、鬼の嗅覚から逃げれるわけがないがな』と」
そう語ると老人は私の方へ向き直り鋭い目つきで私を見る。


その威圧感に鼓動が速くなるのがわかる。
『本当にここは夢の世界なの?』と疑う自分がいる。

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