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橋の向こう側〜前編〜

気が付くと私は川沿いの土手に立っていた。

正面からは多くの人がバタバタ賑やかに話しながら向かってくる。後ろを見ると山があり神社の近くの川によくかかってそうな赤い橋があった。
皆その橋に向かって走る人もいれば、歩きながらゆっくりわたる人もいる。

私は向かってくる人をよけながら橋とは逆の方に歩いていこうと歩を進めた。なぜなら賑やかな和太鼓の音がするからだ。

『もしかしてお祭りなのかな?そしたら出店とかあるかも〉ベビーステラあるかなぁ』なんて思いながら・・・。

歩きながらゆっくりと周りの景色を見渡すと違和感を感じ始めていた。
土手の下は川になっているのだが、水は渇水に近い状態なのに根こそぎ倒された大木が転がっていたり、横転した車があったり穏やかな光景ではない。

そして私と同じ方向に歩く人はほとんどおらず、背中側にある赤い橋を皆めざしているのだ。その橋の向こう岸を見てみる凄い行列ができているのだが、ここ違和感があった。

凄い行列にも関わらず誰ひとり口を開くものがいない…静かなのだ。

「お母さんこっちこっち、早くいかないと!」

私の目の前に母と娘の親子があわただしくやってきた。
娘が母親の手を引き早歩きで赤い橋の方へ誘導している。「ほんとにこっちなの?戻った方がいいんじゃないの?」と不安げな母親は娘に話す。「大丈夫だから!ほら早く!!」と手を引く娘。
「はいはい・・・仕方ないわね」とほほ笑みながら歩く親子を私はじっとみていた。

続く

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