天国と地獄

 最近祖父をなくした。祖父の死を経験し、悲しんだ。しかし、その次に考えたのが、天国や地獄の有無についてである。私よりも深い悲しみに暮れていたのは、母だった。その光景を見たときに思ったのが、心から天国があって欲しいということだった。

 そこで思ったのが、天国や地獄は、単に残された人間の悲しみを紛らわすためのものなのではないかと言うことだった。そんなものは存在しないが、死んだ人間を、死んだ、と受け入れたくない、という心理から生まれたものなのではないかと思った。存在しているかわからないのにもかかわらず、それを信じていることが、その人の死から逃げていることのように感じた。どんなに宗教に入っておらず、どの神も信じない人間でも、1度は天国で会おう、などと思ったことがあるだろう。私は、心から天国があって欲しい、と思った時、この考えが思い浮かんだ時点で、死と向き合わず、受け入れることができていない自分がいることに気づいた。

 なので、もし天国や地獄の存在がない世界だったらと考えると、人間は、死と真正面から向き合わなければいけないだろう。もう天国や地獄が存在しているこの世界では、想像すらできないが、とても恐ろしいことであるだろう事は簡単に想像できる。死と真正面から向き合うなくても良いように天国と地獄が存在している事が、身近な人の死を経験した自分にとって唯一の悲しみからの救いであるし、これからもそうだろうと強く思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?