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「ふんいき」をさり気なく良くする。とよなか地域創生塾第7期「DAY7(Bコース) 空間をつくってみよう!/歴史を残してみよう!」開催レポート

講義形式で行う会としては最終回を迎えた、とよなか地域創生塾第7期 DAY7。今期より、「A:イベント・メディアコース」と「B:空間活用コース」の2つのコースにわかれて講座を進めています!(他の回の様子を知りたい方は、とよなか地域創生塾のnoteをチェックしてみてくださいね。)

1/26(金)は、「B:空間活用コース」の「DAY7 空間をつくってみよう!/歴史を残してみよう!」を実施しました。DAY7ともなるとお知り合いの方が増えてきて、チェックインの近況報告も各グループで盛り上がっていました。

今回の講師は、株式会社ナノメートルアーキテクチャー一級建築士事務所の三谷裕樹さん。
現在は名古屋にお住まいなのですが、なんとご出身が豊中!今回の会場、庄内コラボセンターの最寄駅である庄内駅も普段から使っていたそうです。

大きな公共建築物から小さなリノベーションまで数々の建築物を手がけている三谷さん。今回は、公共建築物の中でもまちづくり的なものを中心にお話ししてくださいました。ぜひ身の回りの建物をこうやって活かせないかな?など、想像を膨らませながら読んでみてくださいね!

文:水野来実(みずの・くるみ)

場の「ふんいき」に興味を持った学生時代

今、ひとことでなにをしようとしているかを表すと「『世界のふんいきをさり気なく良くする』ことを考えながら建築に向き合っているということかな」と話す三谷さん。

昔からファッションや映画、音楽が好きで「真面目に遊んでいた」そう。高校卒業後はフリターとして仕事をしていましたが、20歳ぐらいのときに、「どうやったらその場所の『ふんいき』みたいなものが良くなるのだろう?」ということに興味を持ったそうです。

場所の「ふんいき」は、誰がつくっているのか。家具、明るさ、音楽、香りなど、空間を構成する要素はいろいろありますが、そのさまざまな要素を統合しているのが建築家という仕事だと知り、今も場の「ふんいき」に関心を持ちながら建築のお仕事をしているそうです。

これも建築!大杉に新たな価値を産んだプロジェクト

初めにお話しいただいたのは、災害により倒れてしまった岐阜県瑞浪市大湫町にある樹齢670年の御神木・大杉の撤去復旧作業と町のシンボルとしての保存活用を行ったプロジェクト。

建築は、通常なにもないところから建てていくことが多いですが、今回はすでにものがあり、しかもそれが御神木というプロジェクト。47mもある御神木をどのように復興するか、再定義するかを問うものでした。三谷さんも初めは分からないことだらけでしたが、町民や専門家、行政機関の方々と対話を重ね、プロジェクトを進めていったそうです。

今までは御神木が町の人たちを見守ってきたが、今度は町の人たちが少しずつ拭き掃除をしたりして、御神木を見守りながら暮らしてほしい

木に大きな屋根をかけることも考えたそうですが、町の人口構成やこれから先も残していくことを考え、大きなメンテナンスが発生しないように最低限の屋根を設計。町のみんなでしめ縄をつくり、木にかけ、完成した時の写真はみんな笑顔。とても素敵な光景でした。

また、切った残りの木材は、お盆をつくったり、お守りをつくったり、ビールの香り付けに使用したり。さまざまな方と関わりながら、たくさんの価値を生み出す資源になっています。

ちなみに、このプロジェクトは全国的にも注目され、日本建築設計学会賞を受賞したそう!2024年4月に大阪梅田で展示と公開審査があるそうなので、機会があればぜひ行ってみてください!

困った木。これらを集めて建築物に。

来年開催される大阪・関西万博のサテライトスタジオの設計にも関わる三谷さん。活動をする中で「困った木」をどのように活かすか、という問いが浮かび上がりました。

勝手に困った木と定義づけていますが、本当は木は困っていないですよね。困っているのは人なわけで。また、かこいの中に木という漢字が困るという文字なのも面白いなと」

困った木の定義

「木と一口に言ってもいろんな木があります。これらの困った木を再活用したり、循環のことを考えたりしながら、日々学んでいるところです。

建築って建物を建てるだけじゃない!そんなことが感じられる2つのお話でした!

スナックをオフィスに。まずは自分たちが入ってみる。

現在のナノメートルアーキテクチャーさんのオフィスは、なんと元々スナックだった場所とのこと。初めは設計の依頼で関わっていた場所だったのですが、コロナの影響でプロジェクトがストップ。だったら、僕たちが入ろう!ということでオフィスにリノベーションしたそうです。

特徴的なのは、大きなテーブル。ワンルームの空間しかないこともあり、デスクとテーブルを混ぜながら、いろんな機能をもつテーブルをつくったそうです。バーカウンターが椅子になっていたり、少し怪しい雰囲気が残っていたりするのも面白いポイント!

「どのエリアでも一緒だと思うのですが、街ってどんどん無難になっていくんです。その中で良くも悪くも怪しい場所、変な場所って意外と残っている。なので、まずは僕らが実験台として入って、そういう場所でなにかを仕掛けていけたらなという思いでやっています。

また、最後のまとめの時にもこのことにつながる話をされていました。

「これは自分の造語になるんですが、『美機能』ということを考えています。機能美ではなく、美機能。場所の美しさやかっこよさの魅力がないとやっぱり機能的にはならなくて。純粋に機能だけ追求していくと、それはそれでつまらないものになるという感覚がある。美しい部分があってこそ、みんなが活動しよう、関わってみようという気持ちになる。

それこそ、庄内の街にもバーやスナックとしてはもう使えないけれど、新しいなにかになっていく場所や建物もあると思いますし、眠っているけれどこれからなにかに生まれ変わっていくというところもあると思います。場所の魅力を再発見できれば、また生まれ変わっていくんじゃないかなと。」

面白い空間の鍵は、クセを与えること

愛知県長久手市のリニモテラスという公共施設の事例に、淀川区の就労支援施設の事例。合計5つの事例紹介、またその時に考えていたことを伺い、レクチャーの時間が終了しました。

その後は数人のグループに分かれ、意見交換を行い、質疑応答の時間に移ります。

どこから聞けばいいかな?と悩みながら、1つ目の質問をする株式会社ここにあるの藤本。

藤本「社会全体として、機能がすごく絞られていっている場所が多くなっていると思っていて。例えば、お寺は行政や学び(教育)、シェルターや信仰の場として多目的的に運用されていたけれど、今はそうではない。宗教儀礼と葬儀しか、基本的にはなくなっているんです。三谷さんの活動や取り組みは、それをちょっと滲ませていく、ちょっとずらしていくみたいなことなのかなと思ったのですが、そうした活動になっていった背景などはあるんでしょうか?」

三谷さん「そもそも、僕があんまり建築をつくりたくて建築をやっているわけではないというところがあると思います。基本的には『その場所を楽しくしたい』ということを考えてやっていて。施主や発注者からある特定の用途を言われたとき、もちろんそのことも考えるんだけど、あえて外す部分も出すんです。必要だと言われるものを間に受けてそのまま返しても面白くない。だから少しクセを与えて返しています。空間にクセを与えることで、なにか新しい空間をつくるきっかけになったり、想像力が生まれたりするんです。

そんな空間を意識して設計しているとおっしゃっていました。

!と?のバランス。提案時の秘訣

レクチャー時に「びっくりしている状態と、はてなの状態が良いバランスの時がうまくいく」と話していた三谷さん。質疑応答の時間でこの話の具体例が出ていました。

藤本「そもそも建築家の仕事って、施主さんや発注者の要望を聞くところからはじまることが多いですよね?」

三谷さん「はい。でも、施主さんはなにがほしいか全部は分かっていないんですよ。例えば住宅でいうと、天井が高いのがいいとか、収納がたくさんほしいとか、みんな当たり前のことを言う場合が多い。なので、その中にある真相を引き出すのが僕らの仕事で。いろんな写真を見せたり、趣味の話をしたりして、可視化されていない部分を引き出していく。でもめちゃくちゃく聞いたからと言ってわかるものでもない。」

藤本「あぁ、面白いですね。」

三谷さん「だから、ある程度まで聞いたら、提案をする。そしてそこからチューニングをしていく感じですかね。」

藤本「それがそのさっき言っていた、!と?のバランスが取れるような落とし所を探して提案するってことなんですかね。」

三谷さん「そうですそうです。ただただびっくりするものだけを出してもダメだし、そこでこれはダメなんだ、攻めすぎなんだとわかることもあるので、反応を見て修正していく感じです。」

とても難しそうなバランスですが、だからこそ面白い空間が完成するのだろうなと感じたコメントでした!

プロの距離感

公共施設の建設時に一緒にワークショップをしたり、親身にヒアリングなどをしたりしていると、施主さんや発注者、ワークショップの参加者の方々と仲良くなることもあるんだそう。

しかし、仲良くなりすぎると提案がしにくくなることも。プレゼン前には飲みに行かないなど、施主さんや関係者とはある程度の距離を保ちながらプロジェクトを進めていっているそうです。

三谷さん「僕らは結局、その場所に住まないんですよね。なのである程度の距離を保つことは重要だと思っています。」

藤本「なるほど。住まなかったり、日常には利用したりしないことに対しての割り切りみたいな部分はどのように考えていますか?それでも、年に一回は見に行ったり、連絡を取ったりするんですか?」

三谷さん「あ、行きますよ!店舗さんだったら、日常的に行ってみたり、新築だと一年検査というものがあるので、その時に『ちょっとここが使いにくかった』とか『こここんな使い方ができてとてもいいよ』とか、僕らが想像できてなかった残念なことやよかったことを聞けたりするんですよ。」

自分の建築物の使用感から学ぶ姿勢はとてもかっこいいなと。近づいたり、離れたり。それがプロの距離感なんだと感じました。

本気の建築を見に行く

参加者さんからも複数質問があり、終わりの時間が近づいてきました。

「三谷さんのインプット方法は?」というような三谷さん自身に迫るものから、「今、公園の中に公共施設をつくっているんですが、どういう場所にするか決まっていなくて心配。空間の解像度を高めていく方法はありますか?」など、自分の経験ややっていることと絡めた質問もあり、とてもいい時間でした!

最後は三谷さんから、

「建築って日常的に触れすぎていて、あんまり意識しないと思うのですが、本気の建築を見に行っていただきたい、と思います体験してみると、生活の視点や街の楽しみ方も変わってくるので、今日の話からそれを感じ取ってもらえていたら、僕は嬉しいです。」

というメッセージをいただきました!

次回は余白の時間

DAY8はAコース、Bコース共通の余白の時間。これまでの学びの振り返りと今後のアクションを考えていきます。

どんなアクションが生まれるか楽しみです。次回のレポートもお楽しみに!

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