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決心して親知らずを4本一気抜き。弱さと再び向き合う。

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人はいつも失ってから大切さに気が付くし、仲の良い友達のらしくない言動に苛立ってしまった後に”お前には出来てるのか?”って鏡の中の自分に笑われたりして、逆説的に自分の内面を理解するというのがよくある。

「抜くか…」と自然に心が決まった時に、
“親知らずを抜く”というのが、
私の中で大きなプレッシャーだったんだなと気が付きました。

なんて書くとたいそうな理由や経緯がありそうに聞こえますが、
まぁようするに「怖かったから避けてた」だけなんですけどね。

事の経緯、という意味では、語ろうとすれば色々あるのが私の不合理な身体ではあるのですが。
ま、でも、怖いよね。親知らず抜くの。ね。
無理無理って思ってました。

だのに急に4本一気抜きを決心して帰ってくるのですから、本当に自分という人間はアンバランスなのだなと思う。

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数年ご無沙汰している歯医者さんを予約したのが5月10日頃。
S先生が育休から復帰してるという噂を(同じ歯科に通う彼から)聞いて受診を決めたのです。女神みたいに優しいのです。

先生が復帰してなかったり、退職していたら、他の歯科をまた探していたように思う。

受診した時点で、もう抜いちゃおって思っていたのですが、まだ4本いっぺんにとまでは自分も考えていなかった。

口内写真、レントゲン、CTを撮り直して、歯肉の点検とかもして

「抜けますよ。抜いちゃいますか?いっぺんでも、1本ずつでも。」

…心なしか口調が明るい。時々思うけど、歯科医師ってちょっと変態的だよね。

「え、4本一気にですか??」

「佐藤さんの場合は4本大丈夫そうです。女性の方は時々いらっしゃいますよ。男性は、1本ずつって方が多いかな。」

「なんか入院して…という感じではなくて、ここでですか?日帰り?」

「2時間以内で全部抜けますよ。麻酔をしっかりさせて頂いて痛みは無い状態をきちんと確認しながらすすめます。」

この歯医者さん、確かに設備も良いものを揃えているし、麻酔医との連携をとっている歯医者さんなのですごいなと思っていたけれど、親知らず一気抜きもままある話らしい。なんなら飛び込み抜歯もするらしい。

希望なら保険外で全身麻酔プランもできるがやっぱり高額なんだって。
“寝てたら終了プラン”でやってる芸能人の話をよく聞くけれど、つまりあれはみんな保険外で高額払ってるんだな…!やっぱり!!


もう「抜く」ことは心に決めたんだけど、いっぺんにってアリなのか?!!

親知らずでも通常の歯でも、抜歯したら、しばらく傷が癒えるのを待つ期間がある。

私はその待つ期間も不安を感じながら過ごさないとならないのが無理だと思った。
と、いう事にもこのさなかに気が付いた。

美容院でも歯医者でも、予約していくところが苦手だったけど、何日も先までソワソワしちゃうから苦手なんだ。
なんでそのくせ人との約束をうっかり前日になって思い出したりするのだろう。

自分の基準が分からん。

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親知らずを一本ずつ順番に抜く場合、
抜歯して、一週間痛みに耐えて、また抜歯して…の繰り返し。
無理無理。そんな毎日が1カ月~2か月続くって方が無理。いよいよ不眠になる。


『4本で。一気に抜きます。』

一回で全部の痛みが済むならその方が楽だ。ご飯なんてしばらく食べられなくってもおかゆと茶碗蒸しで耐えられる。

どうせ外出自粛中だ。

あとなんか、早く楽になりたいって思っていた。なんでだろう。
痛みに耐えるとかではなくって、もうこれを手放してしまいたいって思っていた。

一日で済むならそれがいいや。
そうしよう、そうしようって。

「そうですか。なるべく治癒が早くなるようにしますからね!じゃあ~予約日を決めますか?2時間とって頂きたくて、あとは何かあった場合の対応のしやすさとしては午前中にして頂く方が~…」

・・・やっぱり、ちょっと嬉しそうに聞こえる。歯科医師って変態だ。

ということで、その日のうちに5月26日に親知らず4本抜歯の予約をとったのであります。

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結果からいうと、親知らずたちは何の問題もなく綺麗に抜けました!

そして今、全然元気です!

普通に食べてます!


きっと直後の経過もすこぶる良好だったのだと思います。抜糸の時に「だいぶ綺麗に治ってますね~」ってゆうてた。

余談ですが、歯科では抜歯も抜糸も紛らわしいから、抜糸は「ばついと」とか「いととり」と言うのが通例ですって言ってました。へぇ~。

手術時間は2時間の予約枠でしたが、実質抜歯は4本30分くらいで終わったらしい。
麻酔から縫合、消毒まで1時間とちょっとでした。

しかも4本ともまったく傷なく、割ることもなくポロっと抜いてくださいました。
ありがとうございます。

不安な時にはいっぱいググって情報を得て落ち着く傾向のある私は、
今回もたくさん体験談や歯科医のブログを読んだのですが、手術時間が短い方が治りも良くなる傾向らしいです。

先生、本当にありがとう。

あといつもニコニコやさしい衛生士さん、スタッフさん、ありがとう。

あと新米スタッフさん、大丈夫です。初めは仕事に精一杯で細かいケアにまで回れないのは仕方がないことです。
どうせマスクですし全然大丈夫だったような気がします。口元の血ぐらい自分で拭けますよね、大人ですから、失礼しました。

退室の時に先生が口がまだ血だらけなの気づいてくれて拭いてもらった。立ったまま拭いてもらうのやや恥ずかしい(笑)

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歯医者さんでも、なんでも、
「大丈夫?」って言われると
「大丈夫です」って返してしまいませんか?

なかなか、「やばいです。怖い怖い。」って言える人いないと思うんですよ。
大人だけじゃなくて、子供でもそうだと思う。

3年前の療養期間にも思ったんですけれども、私きっと恐怖とかストレスとかの自己認識が遅いんですよね。

いつも、もうギリギリアウトくらいで「ごめんなさい…」って。

でもその「大丈夫です」って、嘘とは違うんですよ。

きっと分かってくれる人がいるはずなんですけれど、
その時は大丈夫だって思っているというか、そういうもんだって思っているんですよね。

ガタガタ震えながら
「私は異常ではないです。このくらい別に。」とか言ってるんですよ、おかしな奴ですね。(笑)

この自己暗示が強さになる時もあって、
記憶は薄いけどたくさんの人の前でちゃんと話せてたり、自分を保つために活かせるといいストレスであることもある訳で…

でも心の声はともかく、身体からの反応を無視し続けていると、だんだん自分を守る判断基準さえ失うようになる。



『どうなったらダメなんでしたっけ?』みたいな、訳わからない質問をしそうになる。

『正常ってなに?』考えたらダメなこと考える。

自分が無理だって思ったら、それは無理なんですよね、もう本当は。

どうなったらダメなんだっけ?
どれが正解なんだっけ?
なんて、人に聞く前に自分に聞いてあげなさいよってぇ。

人の話や本に書いてることは情報として持っていても、判断基準まで人に預けちゃうようになったら破綻しちゃう。

どうやって生きるかとか、どんな仕事をしたいかということと同じのはずなのに、私のような人間はどうして、身体のことになると色々と脇においていってしまうのでしょう。

もう訓練しないといけない。
「大丈夫?」「ちょっと…」ってゆう訓練。

歯を抜いて、家に帰って、止血を確認してから鎮痛剤飲んで横になって
やっと、体の力が抜ける。
『緊張してたね、自分。お疲れ。』

鎮痛剤が効いて心の余裕がでてきたときに『わたし、まだまだだな…』って思ったんですよね。反省しはじめる。

こういうところに生きずらさが出てるよね。

「親知らず抜こう」って決めた時には、肩の荷が下りた感覚があったんです。
どこかで潜在意識的に、ずっと気になっていたんでしょうね。

しかも抜歯の日が月食と重なっていて、何か自分自身がまるごとリニューアルできるような気持ちだった。

でもいざ抜くぞ、という時に、いつもの癖が。

「大丈夫ですか?」「大丈夫です。」「このまますすめますか?」「はい。」

淡々。淡々とですね。口では。

麻酔中、汗かいたんでしょうかね。顔がゆがんだんでしょうかね。

「ちょっとだけ休みましょうかね。時間多めにとってありますからね、大丈夫ですよ。お天気も良くて良かったですね~」って先生。ほんとに優しい先生でしょ。

その後口ゆすぐ時に一回お水こぼしてますからね、わたくし。手、震えてましたね。

でも震えてたの緊張だけじゃないんだろうなぁとも思っていて、予想だけど。
たぶん体的に、外からのものを処理するのとても苦手なんですよね。

バファリン飲むたびに吐き出したりしていたので、消化したり濾過したり循環したり基本的に下手くそなんだと思う。

薬品がはいると体の中テンパるんだろう。

こういうのを総じてストレスというのでしょう。

整体の先生にも傷の治りよりも血行とかストレスとか心配されていた。

「一時的に血液が上にワーって登りますから、足マッサージしたり手を広げて呼吸したりしてくださいね。いい匂いかいだりして。頭だけが体じゃないぞ〜って、言い聞かせて。」

整体の先生もおかしくて優しい。


***

歯科治療って麻酔が一番痛いし、嫌だ。

そんでなんか、拒否しにくい。

そもそも麻酔完了しないと治療に入れないから、

本題に入ってないのにNGだしちゃっていいの?とか。

この一本が効いてきたら次のは痛くなくなるんじゃないかな?とか。

ちょっとドキドキしてるだけで気持ち悪いとかもないしな…とか。

ストップしてもらうのが躊躇われる要素満載。

でも頭で考えたら手を挙げられないんですよね。私のような人間は。
もう「やぱ無理ですぅ」って言えばいいのにね。もうね。

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その後、色々ご心配をおかけした方からお見舞い連絡をもらったりしたのですが、そういえば、人に説明するときにもそうなんだなって思ったんですよ。

「大丈夫ですよ~」「いい歯医者さんなんですよ~」「もうあんまり痛くないんですよ、意外と平気です!」

とかペラペラ言ってました。
いや、これも嘘とかじゃないんですよ!

実際、痛み耐えられないのも3日くらいで、あと薬でうまいことできてましたし。
先生も上手にやってくださったんだと思っていますし。
失敗なんてことはないなって思って臨みましたし。

だから、嘘ではないんだけど、
なんかペラペラとしゃべったもんだな~と振り返って思ったんですよね。

その連絡とかしていた頃の状態だと、

痛みは強くないけど、水平にはまだ寝られてないし、
食べ物は流動食だし、口の中不快感があるから外出する気に全然ならないし、寝てたい。

本当は、そう。
ありのまま言うと、こんな感じなんですよね。

でも別に、思っていたほど苦労もしてないし、痛くなかったんですよ。
どちらも本当のことなんですよね。

だからもっとコミュニケーションのバリエーションとして、言い方というか表現方法を変えてみたり出来たらいいのになと。

身近な人にくらい、嘘でも事実だけでもなくって、何かまるっと雰囲気ごとお届けすることができたらいいなと思ったのです。

身勝手なこと言ってますね。
大人だから体調不良を言い訳にしない!というのもありますよね。その通りです。

でも私は仕事もプライベートもまぜこぜの生活をしてるから、仕事仲間とも色んなことを共有してきているのに、
体調のことだけ全隠しってのは難しい。

ワークシックバランスってゆう言葉が最近出てきたらしいですけど、まぁそういう事なんですよね。

仕事も生き方も体のことも、全部並列横並びに考えていきたい。
この体で生きてきたし、この体のまま仕事もちゃんとしたいのです。


これからも時々、
頭痛いとか、起きられませんとか、蕁麻疹でましたとか言うと思う。

でも私個人としてはそれは日常の一部で、
“お〜またかよ”
くらいのことだったりもして、

薬の効きが悪かったり、
体を温めたほうが良かったりで
待ち合わせ間に合わないかも…
とか、
メンタルにもきてるから態度に出てしまうけどスルーしてほしいな…
湿疹出てるけどすぐひくし心配しないで…

というときには自己申告するんですよね。

ご迷惑おかけしますm(_ _)m


でも逆に自己申告出来てるときは全然問題ないと思って頂いて良いのかなと。

ほっとけば薬が効いてくるし、
あったかいもの食べれば元気でますし、(笑)

不用意発言については、、、
ごめんなさいm(_ _)m
家に帰ってめっちゃ反省する日もあります、ごめんなさい。
気がつけてさえいなかったら本当にごめんなさい。


問題は、
「大丈夫、大丈夫」しか言わないときのほうが根深い。しかも不機嫌。
本当に不機嫌よくないですよね…。

これってどう乗り越えるのでしょうね。

「大丈夫?」
「大丈夫です。」


親知らず抜いて、新しい景色を見るのかなと思っていたら
改めて自分の課題に向き合うきっかけだったなんて、人生かんたんには進まないな。




山手線停電で迂回ついでに探検しに行った、なーんもない高輪ゲートウェイ駅の眺め。

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