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今一度、振り返る『君の名は。』から、こころ模様を学ぶ 第三回


note マガジン『娯』 シリーズ「君の名は。」

胸キュンとは?

第三回 音楽とのコラボ


 さて、これでnote版 マガジン 『娯』『君の名は。』シリーズも最終回となりますが、今回は映画に使われている楽曲を交えて作品全体の感想を記したいと思います。私は特に音楽の専門家でもないですし、音楽的な知識もあまりないのですが、とにかく感じたことを、ここに残していきます。

印象的な楽曲

ⅰ)タイトル曲『前前前世』

 私がタイトル曲を初めて聞いたのは、空の上だった。機内番組の『ANAホットヒッツセレクション』8月分で選択された一曲だ。機内で周囲の騒音環境やヘッドホンも音がよくなく細部は聞き取れなかったが、非常に印象に残るメロディーと、男性ヴォーカルの伸びやかで冴えた歌声に惹きこまれたのを覚えている。

 「RADWIMPS」というバンドもここで初めて知った。「カッコいい弱虫」というバンドの名前も一風変わっているが身の丈の自分を表現しているそうで、とても好感が持てた。

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  曲紹介で、『・・・』という映画のタイトル曲という紹介をしていたが、普段から映画への興味はあまりないため、このときは忘れてしまった。この曲と一緒に『欅坂46』の『世界には愛しかない』もセレクトされていたと記憶している。

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 その後、どんな人物が歌っているのか興味があり、You Tubeで楽曲を調べてみた。すぐにヒットして、再生回数を見てみるとすでに一千万回に近かった(2019年4月時点で211,589,967回!、2022年2月時点で、2.7億回!!!)。歌詞の内容もスケールが大きく哲学的な表現がちりばめられている。一言でいえば、超前向きなメガポジマインドに乗せて、ジェットコースター的展開で進む曲だ。

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 特にこの歌で、心に残る歌詞といえば、前半の「心が体を追い越してきたんだよ」や「はるか昔から知るその声に、生まれてはじめて、何を言えばいい?」そして後半の「君も知らぬ君とジャレて戯れたいよ、君の消えぬ痛みまで愛してみたいよ、銀河何個分かの果てに出逢えた、その手を壊さずに、どう握ったならいい?」

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 絵コンテを1年半見ながら楽曲を創っただけあって非常に完成度が高く、ラッドの野田さん自身もあるラジオ番組で言っていたが、本来ラッドの曲は自分がOKを出せばそれでおしまいなのだが、今回の劇伴は、新海監督がOKを出すまで繰り返し練られたので、その結果が出たと話ていた。

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 その中で「男女の恋愛のど真ん中を突いて下さい」という新海監督の要望があったのだそうだ。野田さんも今までのラッドのスタンスとして、恋愛を正面から謳い上げる楽曲は少なく、少し気持ちが引けていたところに、新海パワーが注入されて、真正面からド真ん中の恋愛ストライクゾーン目掛けて作られた楽曲になった。

 おそらく、これが現代日本社会で、少し気遅れしてた男女の心を刺激したことは間違いないだろう。

 

ⅱ)プロローグ曲「夢灯篭」

 今回の楽曲には、効果音としてリバース音(逆回転の音)を多用している。これも、時間を逆回しにするとどんな感覚に陥るのかを実体験するような遊び心があると感じた。「夢灯篭」はプロローグ用に作られた曲で、映画のはじめに流れるので特に印象に残る。

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 歌詞の内容も粋だ。野田さんの作詞は、奥深いといわれているが、この曲ものっけから炸裂した。感情の起伏に合わせて、メロディーも盛り上がるシンクロポイントが幾つもあった。歌詞の内容は、二人の「声」をモチーフに思いを綴り、その思いを諦めそうになっても、きっと未来には希望が持てる、そして、どんな困難にも何度でも乗り切っていこうという決意が込められた歌詞だ。

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 歌詞で気に入っているフレーズは「いつか行こう、全生命も未到、未開拓の、感情にハイタッチして、時間にキスを」そのほかにも甲乙つけがたい歌詞が沢山あるのだが、この感情にハイタッチして時間にキスというのは、やられた!と思う。どう頭をひねっても出てこないが、言われると妙に納得できるのが不思議だ。

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 映画では、この歌のときにはまだタイトルロールも一緒に流れているので、物語のプロローグだと思ってうっかり見ていると、かなり本編に関係性のある描写も出てきていて、目まぐるしく変化するカットに目が追い付かない印象があった。もしかしたら、このあたりも計算済みで、もっとよく見たいと思わせているのかもしれない。

ⅲ)クライマックス曲「スパークル」

 この楽曲は、聞けば聞くほど味が出るとでもいうのだろうか。始まりは単調なピアノのフレーズの繰り返しに単純な主旋律を乗せていくのだが、盛り上がりの展開がヤバいくらいにカッコいい!。あまり理知的な表現ではないが、映画でもクライマックスに使われている曲だけあって、盛り上げ方は半端ない。

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 特に、変電所の爆発の後、非常用発電が入り丁度サイレンが鳴りだす瞬間と曲とのシンクロが素晴らしかった。新海監督が、楽曲のために20秒くらいカットシーンを伸ばしたり、「1分29秒から入れましょう」など、秒刻みで曲と絵の校正を考えた結果の仕上がりであればそれも頷ける。

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 歌詞では、「ついに時はきた、昨日までは序章の序章で…経験と知識と、カビの生えかかった勇気を持って、いまだかつてないスピードで、君のもとへダイブを」そして、三葉が役場に走って向かう途中、彗星が二つに割れているのを見た次の瞬間、派手に転んで少し気を失いかけたときから、最後までの曲構成、ストーリー展開は圧巻だ。

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 ただ、この曲は「カラオケ」で歌うには全部で8分以上かかり、また、間奏も250秒!って歌の半分以上が間奏なので、どんなに歌唱力がよくても間が持たないこと請け合い。欲を言えば、この間奏の間の盛り上がるところの歌詞を作ってもらえれば、1フレーズ分は間奏が短くなるし、是非考えていただけたらと、思う。

ⅳ)エンディング曲「なんでもないや」

 この楽曲は三葉役の上白石萌音さんもカバーしているが、歌詞のはじめの方の「いつもは尖っていた父の言葉が、今日は暖かく感じました…」のところは三葉の心を表している。そして、後半は瀧の気持ちを歌っている。この歌詞も振るっている。

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 「タイムフライヤー」時間を飛び越す人、そして「時を駆け上がるクライマー」時を登る人、「君は派手なクライヤー」泣く人、など、そして曲名が、なんでもないや、というのも韻を踏んでいるのかもしれない。

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 「嬉しくて泣くのは、悲しくて、笑うのは、君の心が、君を追い越したんだよ」というのも心情をよく表現している。感情が錯綜して、お互いの気持ちが交わりそして離れてしまう、自分の心もうまく制御できずに自分の心が体より先に行ってしまうくらい切ない心を表現していると読んだ。

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 「時のかくれんぼ、はぐれっこ」というのもお互いの時間的、心理的距離感を表現した味のある歌詞だ。君のいない世界を「夏休みのない8月のよう」や「笑うことないサンタのよう」にはグッとくる。野田さんは本当にメロディーメーカー、ポエマーだと思う。

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 今回1週間おきに、結局6回見るという前代未聞の映画館鑑賞をしてしまった。今までだって「スターウォーズ」が3回で最高だったのに。そのほか外伝やデザイン&グラフィックマガジンの特集など、「君の名は。」の資料はかなり目を通した。

 そのためか、微々細々に渡るまで映画のディテールを掴むことができた。というか惹き込まれた。巧みで繊細に磨き上げられたストーリーと楽曲のコラボ、この作品を創作した監督とそれに関わった全ての方に感謝の意を述べたい。日本のこれからの未来に、行く末に、幸多からんことを祈る。

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