左腕でいいですか?
「左腕でいいですか?」
私の左腕にファイザー社製の新型コロナ用のワクチンをぶち込もうとしている看護師さんの一言だ。
「はい。」
よく考えずに、それがそれ以外の返答がないかのように左腕にワクチンを打つことを了承する私は、12時間後発熱と倦怠感にうなされる中で考えるのだ。
“本当に左腕でよかったのか?”
左腕はもちろん、【邪王炎殺黒龍波】を放った飛影の右腕よろしく、使い物にならない。
それだけにとどまらず寝返りを打つたびに激痛を伴う左腕は私の睡眠までも邪魔してくる。
本当に左腕にワクチンを打つことは正解なのだろうか?
左腕に打とうとした看護師さんの意図、それを了承した私の意図は当然「右利きだから右腕、右手の方がよく使う」から、より使用頻度の少ない左腕、左手を犠牲にしようというものだ。
右利きである私が右腕に打たないことによるメリットは沢山ある。
「鉛筆がもてる」「マウスを操作できる」「Suicaをイイ感じに扱い改札を通過できる」「スマホを美しく操作できる」
左腕ワクチン万歳である。
しかしそれは本当だろうか。
ペットボトルのキャップを開けるのは、右手だが、ペットボトルの本体を支えるのは左手だ。
キーボードにおいて使用頻度のたかいAやSを入力するのは左手だ。
腕時計を左腕につけるのは右手だが、時間を確認するために腕をL字に曲げるのは左腕だ。
“めちゃくちゃ頑張ってる。左腕。”
めちゃくちゃ頑張ってんじゃん。左腕。
左腕あっての右腕だし、そもそもどちらが犠牲になってもいいなんていう優劣はないのだ。
じゃあどこに打つのがいいのか、ふくらはぎか、太ももか、腹か・・・。
色々考えた。倦怠感と発熱でやられている中で考えた。
ふくらはぎはダメだ。歩けなくなる。
太もももダメだ。歩けなくなる。
腹もダメだ。お腹下しそう。
そう、やはり左腕だ。犠牲にするなら左腕でいいのだ。
初めてワクチンを開発したワクチン太朗博士だって、色々悩んだ結果、今の左腕に落ち着いているのだ。そこをポッとでの、年に1回インフルエンザのワクチンを打つ程度の私が問題提起していいわけがない。
みんな、ワクチンは左腕に打とう。
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