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採用が強くなって、離職者が減少し、保育の質が上がる方法。【その1】

採用、離職、保育の質…この3つの課題が解消出来たら、どれだけ気持ちが楽になるのでしょうか?

保育経営者にとって、この3つは、常に直面する最大の課題です。もしかしたら完全には解決できない「永遠の課題」なのかもしれません。それでも、採用に関わるみなさんが、少しでも安らぎを得られるように、解決策を一緒に考えていきましょう。

3つの課題の整理

採用、離職、保育の質の3つの課題は、非常に密接に関係しています。

しかし、「密接な関係」と言っても、採用ができたら離職者が減るわけではありません。また、採用が成功したからといって、必ずしも保育の質が上がるわけでもありません。さらに、離職者の出ない職場が必ずしも質の高い保育を提供しているとも限らないのです。

どちらかというと、それぞれが足を引っ張りあっているのです。
良い採用ができないからすぐ辞める。
 ↓
すぐ辞めるから質が安定しない。
 ↓
その結果、採用が弱くなる。

このように、負の連鎖が生じているのです。これらの課題を整理して考えるために、まずは「離職」の問題に焦点を当ててみましょう。

「離職率を下げる方法はありますか?」

これは「採用がうまくいかない」という相談に次いで多い質問です。離職そのものは、善でも悪でもないというのが私の考えではあるのですが、早期離職だけは、誰にとっても最悪の結果です。

この早期離職の主な原因として、以下の2つが挙げられます。

①求める能力との乖離 

業務を遂行するために必要な能力が不足しており、そのギャップを埋められないことです。この能力には、基礎学力(読み書き計算)に限らず、基本的なオペレーションをこなす力、考える力、継続する力、観察力、そして誠実さなども含まれます。(能力については次回以降に解説します。)

このギャップを埋めるために、初期研修やOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)を実施しますが、入社初期に辞めてしまうことが「早期離職」と呼ばれる現象です。つまり、仕事を任せられる段階に至る前に辞めてしまうケースが「早期離職」になります。

教育研修の限界

研修で補うことのできる能力と、補うことが困難な能力(図①)があります。例えば、「怒られるけど報告する人」と「怒られるから隠す人」という二つのタイプを考えてみましょう。この背景には「誠実さ」という能力が影響しています。

そしてこの誠実さは、教育で補うことが困難な能力(図①)の1つです。

技術や業務知識は研修で教えることができますが、誠実さのような内面の価値観や性格を変えるのは非常に難しいのです。

誠実さに欠ける人は、職場で孤立したり、周囲との信頼関係を築けなかったりします。その結果、最終的に早期離職に至る可能性が高いです。一方、誠実な人は困難に直面しても問題を解決しようと努力しますが、誠実さがない人はその困難から逃げようとし、結果として退職を選んでしまうのです。

早期離職者を一方的に非難しているように聞こえるかもしれませんが…。
それは誤解です。
育てられない人を雇ってしまったという採用のミスなのです。私たち雇う側も決して万能ではありません。それぞれの園で育てられる人材のタイプがあるのです。自演で提供できる教育と応募者のタイプをしっかり見極めた採用をしなければならないのです。

また、教育で補うことができる能力には、短期で修正可能なものと、修正に長期を要するもの(図②)があります。指導者が「まだこれしかできていない」と感じる段階でも、教えられる側は「これだけやったのにできない」と時間の感覚のずれが生じることがあります。こうした認識の違いは、継続的な努力ができる能力に関係しています。

努力値が低い場合、困難な状況に直面したとき、その人は乗り越えるのではなく、離職を選択することが多いでしょう。

指導側の指導能力や経験不足
ギャップを埋められない原因は、本人の能力だけでなく、組織側の指導スキルに課題がある場合もあります。指導者の経験不足やスキルの欠如が、効果的な教育を阻害している事もあります。ですから、教育研修のシステムを整備し、指導者側のスキルアップも同時に進めていく必要があります。

教育システムを効果的に機能させるためには、MUST(必須)とWANT(望ましい)を明確に区別し、指導を見直す必要があります。
私がお勧めしているのでは、1か月、3か月、6か月、1年で何を習得しなければならないのかを明文化することです。そうすることによって、教える側も抜け漏れなく教える項目を把握でき、学ぶ側も今どこにいるのか確認ができます。

次回は、早期離職の2つ目の原因「志向の違い」について解説します。

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