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採用が強くなって、離職者が減少し、保育の質が上がる方法。【その2】

前回の補足解説から。早期離職の1つ目の原因は「能力の乖離」

「能力の乖離」の根本的な原因は「採用ミス」にあります。採用後の教育や研修で補える能力と、伸ばすことが難しい能力があり、後者の人材を採用してしまうことが問題なのです。

現在の人手不足を考えると、人材を厳選することが難しい状況にあるかもしれません。しかし、採用の強い園は「人員が充足していても、良い人材がいれば採用する」という姿勢を持って取り組んでいます。

下記の図をご覧ください。

過去の採用戦略セミナーより抜粋

人材の採用に関して①~④の4つに分類されます。
①足りているけど採用する
②足りているから採用しない
③足りないから採用する
④足りていないけど採用しない

②足りているから採用しない③足りないから採用するという行動は、きわめて普通の判断です。ですから、ほとんどの経営者がこの判断をすると思います。
当然ですが、②と③は状況が違うだけで考え方は同じです。人材の充足如何で、②にもなるし③にもなります。

ちなみに、ごく稀に④足りていないけれど採用しないという不可解な園(経営者)も存在します(本当に…)。

10年ほど前から「人数は足りているけど、良い人がいたら採用したい」という①足りているけど採用する考えを持つ園が現れ始めました。

この考えは「人材確保のための長期戦略」であり、結果的に採用コストを抑えることができるのです。

「人員が足りているから良い人材を採用できる」のではなく、「良い人材を採用しようとしているから結果的に人員が充足する」という逆転の発想です。この考え方が、採用の強化と人材の質向上を同時に達成するための重要なポイントとなっています。(ちなみに、これが今回のテーマの答えではありません。)

現在、採用に苦戦しているのは③足りないから採用する園、つまり④足りているから採用しないという、常識的な判断をしてきた園なのです。

結果論になってしまいますが、人材獲得において、一歩先に行くことができるのは、①足りているけど採用をするという戦略を選択することです。

前回の補足が少し長くなりましたが、今回は早期離職の原因の2つ目の要因についてお話をします。


②志向性の違い

2つ目の早期離職の原因は志向性の違いです。簡単に言えば「どのような保育をしたいのか?」という点です。

この質問にしっかり答えられる保育士は、多くありません。

実際に「自分達の園はどんな園だと思うか?」という質問をしてみてください。多くの職員が上手く答えられないか、「大変だけどやりがいのある園」と答えます(特にベテラン職員が多い回答です)。

そして、この質問に対する答えを持つことが「採用が強くなって、離職者が減少し、保育の質が上がる方法」の第一歩なのです。

保育学生の中で、この質問にしっかり答えられる学生は少数です。しかし、答えることが出来る学生は、複数の園をじっくり見比べ、自分の価値観に合った園を見つけようとしています。こうした学生は、観察力があり、将来の働き方を真剣に考えているのです。

こうした人材に来て欲しいと思いませんか?

早期離職を防ぐには、自分たちの園に合った志向の求職者を採用する必要があります。そのためには、自分達が「どんな園なのか?」を明確に伝えることが不可欠です。

この点をしっかり伝えずに採用活動を行うと、志向の異なる人材を採用してしまうことになります。

この志向のズレが早期離職に繋がります。では志向の違う人材を採用してしまう採用とは、、どんなものなのでしょうか?

私はセミナーで、福利厚生を前面に押し出して採用を行うべきではないと伝えています。たとえば、次の広告を見てください。

「行事少なめ」「土日休み」「残業無し」「今の職場が辛いあなた」「手取り30万」「持ち帰り無し」

このような広告を出すと、怠け者しか応募してこないように感じませんか?

実は、これらは全て人材紹介会社が発信する広告です。このような表面的な条件だけで集まる人材が、なぜすぐ辞めてしまうのか、その理由を考えるのは難しくありません。

もちろん、給与や労働条件は大切な要素です。誰でも、できれば高い給料をもらいたいし、休みもたくさん取りたいし、早く帰れるなら嬉しいものです。しかし、こうした表面的な条件だけでは、本当に求めている人材を引き寄せるのは難しいのです。

給与は既得権益

実際に、給与が高いからといって、必ずしも仕事への意欲が高まるわけではないという調査結果もあります。給与とは、入社時に得られる既得権益のようなものであり、昇給も同様です。初めは張り切って働くものの、やがてそれも既得権益になってしまいます。特に保育の仕事は、努力がすぐに成果として見えにくいものです。営業職とは異なり、結果が数値として現れにくいのです。

ですから給与で惹きつけることは、保育業界には向いていないのです(給与が低くても意味ではありません)。保育業界の採用において最も重要なのは、価値観の共有です。

価値観の共有には、ワクワク感を提供することが必要です。給与そのものではワクワクしません。人々がワクワクするのは、その園が何を成し遂げようとしているのか、どんな仲間がいるのかに対してです。

園の言語化

そのためには、「自分たちの園はどんな園なのか」をしっかりと言葉にすることが大切です。この言葉が園全体の共通認識となれば、求める人材の価値観を見極めやすくなります。

志向の異なる人材には、この言葉は響きません、しかし、それで良いのです。同じ理念や価値観を持つ人材を引き寄せることが、最も重要だからです。

これがいわゆる「園の言語化」です。

そして、この「園の言語化」こそが「採用が強くなって、離職者が減少し、保育の質が上がる方法」なのです。

組織の魅力を伝えることで、応募者が「この職場で働きたい」と思う環境を創り出すことができるのです。

結局のところ、採用において重要なのは、条件だけではなく、組織全体の理念や文化をしっかりと伝えることです。それによって、より適した人材が集まり、職場の活性化や人材の定着へとつながります。これらの取り組みを通じて、真に求める人材を引き寄せることが可能になります。

次は、園の言語化によって実際に起きた反応をお伝えします。


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