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そんなに大きな声は出していない

『大きな声で話さないで!』

 たまにこんなことを言われる。
 はっきり言えば実に不愉快だ。
 別に大きな声でなんか話していないし、普通に話しているだけだ。
 まあ、ボクは地声が大きいから大きい声に聞こえてしまうのかもしれない。

 時と場合によっては普通の声でも大きく聞こえてしまうことも分かる。
 赤ちゃんが寝ているところで話されるとそうかもしれないし、深夜だと静かに話す必要もあるかもしれない。
 ただ、大抵こんなことを言われるのはそういう状況ではない。
 こちらが挨拶をしたときである。

『おはようございます!』
『ちょっと、大きな声出さないで』

 大きな声であいさつしてはいけないのか?
 そう思ってしまう。
 てゆうか、大きな声に聞こえる理由ぐらい言ってくれてもいいじゃないか。

『おはようございます。すみません。ちょっと近所の手前、少し控えめな声でお願いしますね』

 こう言われれば、こちらもそんなに腹立たしくはない。

 ただ何が大きい声なのかという感じ方は人ぞれぞれなので、ボクは『すみません』と小さな声で素直に謝る。その人と話すときは普通よりも小さな声で元気なく話すようにする。そうすれば満足なのだろう。
 だけどこちらとしてはそんな話し方をしていては気が滅入ってしまう。

 だけどもボクは何も大きな声で話したくて話しているわけではない。
 職業病というのもあるのだ。
 介護の仕事についてもう20年以上は経つが、高齢者は大抵耳が遠い場合があるので、大きな声で挨拶しないと聴こえないという事実もある。

 てゆうか……
 大きな声で挨拶するのはそんなにいけないことなのだろうか?

 むしろ褒められるべきことをしているではないか。

 もちろんそれも時と場合にもよるのかもしれない。
 でもさ。
『大きな声を出さないで』って言われる時って、大抵そんな状況じゃないような気がするんだよね。
 どう感じるかは人それぞれだから、絶対にボクが正しいとは言わないけど。

 いや。
 だからこそ、素直に言うことは聞いている。
 でも不満はあるのだ。

 そもそも人が何かを話そうとしていることを遮ってまで『大きな声で話すな』とはちょっと失礼な話ではないだろうか。

 相手の話が終わってからでもいいだろう。
 それを言うのは。

 こんなことを言ってくる人は、こちらの声が大きくてうるさいと感じているのだろう。
 うるさい人とは話したくないのだ。
 人の挨拶を遮ってまで『大きな声を出すな』などと失礼なことを言ってくるのだから。

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