エンジンがかかった瞬間～二年間待っていてくれたお客様のために
こんにちは、先ほどカオル母の「着せ替えあみぐるみマスコット」のワンちゃんの方の棚卸をしてきたCOCOA-MUのアカネです。
出品しているもの、していないもの、これから出品できそうな子、手直しが必要な子…と、色々チェックしましたが、まだまだ犬種が増やせそうでワクワクした棚卸でした。
本日はnoteさんの #エンジンがかかった瞬間 の応募を拝見して、「あっ、私今年、エンジンがかかった！っていう瞬間、あったよ！」と思い出し、こちらのテーマを今年の自分の記録としても書かせていただきます。
心の病を抱えて～ハンドメイドから離れた数年間
まず、エンジンがかかる前のお話を少しさせていただきます。
私は10年前～5年前ほど、家族でハンドメイドと喫茶の自宅ショップをしておりました。初めの一年ほどは順調でしたが、その後の数年間は自宅ショップの運営の厳しさを感じ、並行してハンドメイドイベントへの出展などをしたりと、何かと不安定な日々を送っておりました。
そんな中、私は過換気発作（いわゆる過呼吸）を起こし、救急車で病院に運ばれました。原因は多々ありましたが、一番は大きなハンドメイドイベント出展を前に、不安で不安で身体が悲鳴をあげてしまったのだと思います。
入院中も強い不安感が続き、発作も何回か起こしました。そんな私に担当の先生が「心の方の診察を受けてみないか」というお話をして下さり、心療内科の門をくぐりました。
そこで処方していただいた不安を和らげるお薬が、その時は身体に上手く合ってくれて、どうにかこうにか体調が落ち着き、退院することが出来ました。
退院後も主に家族に運営を任せながら制作は続け、自宅ショップ・ハンドメイドイベントへの出展を続けていましたが、途中で私も家族も精神的に力尽き、両方とも一旦止めることを決めました。一度環境を変えないと、私が何に対しても不安感を感じるという負のスパイラルから抜け出せないとの判断からです。
そこで一旦、私のハンドメイド制作は止まることとなります。少し体調が回復したころにハンドメイドサイトでのネット通販を始めましたが、主に母の制作したあみぐるみを出品し、私はほぼサポート役を担いました。そしてそのまま、2019年を迎えました。
突然届いたメッセージ～「あなたの作品が欲しいのです」
2019年の12月のことです。その頃の私は体調はほぼ安定していましたが、引き続き母のサポート役に徹していました。作品を作ることは3年ほどしていなかったと思います。そんな折、ハンドメイド通販サイトminneさんを通じ、一通のメッセージが届きました。
王様カエルの再販希望です。
COCOA-MUさんの作品が大好きです。
王様カエルも是非購入したいのです。
簡単にまとめますと、このような内容でした。
ご所望いただいたのは私の羊毛フェルト作品「王様カエル」です。
まずは嬉しさが込み上げました。こちらのお客様は自宅ショップを運営していた頃のお客様で、お住まいは北海道から遠い方です。帰省の折に立ち寄って下さり、作品を色々とお迎えいただいていました。
しかし、次にやってきた気持ちは「今の私は王様カエルが作れない」でした。比較的体調は安定していたものの、羊毛フェルト作品を制作する気持ちは「しゅん」としぼんだままで、作品作りに対しての気力、体力があるとは到底思えなかったのです。
ですが、こちらのお客様はCOCOA-MUの作品を長い間とても大切にしていただいていることが、メッセージから伝わってきました。ハンドメイド作家として、これ以上ない幸せなことです。
そんなお客様に私が出来ることは何か、と考えた時、やはり作品を作ってお返しすることだ、と思いました。でもすぐすぐ作れる自信がなかったので、素直に体調のこと、再販はお約束出来かねること、ですが、作品を大切にしている方に是非お迎えして欲しいので、お待ちいただけないだろうか、という返事を出しました。
お客様は優しく仰ってくれました。
まずはご自分を大切にして下さい。その上でもし作っていただけるのなら、いつまでもお待ちしています、と。
とても嬉しく、また至らない自分に申し訳なさでいっぱいになりました。でも、いつか、その時は分からなかったいつか、このお客様に「王様カエル」をお届けしたい、その気持ちは療養の中でも持ち続けることとなります。
「王様カエル」が完成した！～直後の大きな体調の変化で…
そして時は2020年の秋。心身ともに少し余裕が出来た私は、ゆっくりゆっくりニードルを刺しながら、「王様カエル」を完成させました。しかし、本当に待ってていただけているのか、今作った「王様カエル」でご満足いただけるかどうか、そんなジワジワっとした不安から、お客様に完成をお知らせすることが出来ませんでした。
そうしている内に、また大きな不安の波が私を襲いました。体調にもそれが大きく現れ、翌年2021年…つまり今年になりますが、1月に一か月の入院をすることとなりました。
退院後は前回の入院ほど回復は早くなく、一人で外出が出来なくなったり、自宅にいても不安に飲まれてすぐ泣いてしまったり、とにかく辛いとしか表現出来ない時期が続きました。当然ネットショップの事務など出来るわけもなく、そちらもお休みをして、本当に少しずつ少しずつ、一日一日をどうにか過ごすという日々が続きました。
作業療法で得たもの～私はモノづくりが好きだ
以前書いたこちらの記事に、作業療法に通えたお陰で、私がハンドメイド活動に戻れた経緯を簡単にまとめてあります。
作業療法で、手芸キットの作品を作るうちに、ふっと心の中に小さな火がともりました。
「私は私のオリジナルの作品が作りたい」
それまでどんな切欠に巡り会っても、ここまでの気持ちが湧くことはありませんでした。
キット作品作りをしていく内に、私の心の奥にあったオリジナル作品を作る楽しさ、そして手に取っていただけたお客様の笑顔。
私が思い出したのはとてもとても大切な思い出達でした。
モノ作りは楽しい。そして、それを手に取っていただけたら、とても嬉しい。ハンドメイドの初心に立ち返ることが出来たのです。
二年間待っていて下さったお客様をまた笑顔にしたい～エンジンがかかった瞬間
2021年秋。私は意を決してお客様に「王様カエル」の写真を付けて、メッセージをお送りしました。
長いお時間をいただいてしまい申し訳ありません。「王様カエル」が完成しております。まだお待ちいただいていらっしゃいましたら、お迎えいただけますと幸いです。
返事は間もなく届きました。
とても、とても、嬉しいです。急ぎませんので、是非お迎えしたいです。
くれぐれもご自愛ください。
パソコンの前で、涙が流れました。欲しいものには「すぐ欲しいもの」と「何年たっても欲しいもの」があると思います。「王様カエル」はお客様にとって後者であり、約2年お待たせしたにも関わらず、お迎えいただけること、そしていつも第一に私の体調を心配していただいているお心遣いがありがたく、嬉しくて、何度も何度も目元を擦りました。
「王様カエル」は無事お客様の元にお迎えしていただき、お写真までいただきました。「王様カエル」が、お客様の笑顔に繋がったのが嬉しかったです。
これら全て、COCOA-MUの作品です。私のカエルだけでなく、母の編みぐるみもあります。とてもとても作品を大切にして下さっていることが写真から伝わってきます。
このお写真をいただいた時が #エンジンがかかった瞬間 です。
このお客様は勿論、色んなお客様が笑顔になれる作品が、また作れないだろうか。
作品が作りたくて作りたくてたまらない。
色んな作品が作りたい。
私もお迎えして下さったお客様も「楽しい」「嬉しい」で繋がれるような作品作りがしたい。
色んな場面で灯った小さな火達が、私の羊毛フェルト作品作りのエンジンをかけてくれたのです。
エンジンがかかったその後～作る楽しみ、繋がる楽しみ
エンジンがかかったその後はといいますと、minneさんでの通販活動を再開しました。
私もですが、日々をぼんやり過ごし、あまり糸に触れていなかった母にも連鎖でエンジンがかかり、二人で作品制作に励んでいます。
作っている時間も楽しいですが、作品をお迎えしていただけることも嬉しく、先ほどのお客様にもまた新作をお手に取っていただき、こちらの写真をいただきました。
新作はCOCOA-MUの巫女トラですが、こちらでお送りした以外の小物も足して、飾り付けを楽しんでいる様子が目に浮かびます。再来年がご自分の干支だというお話も伺いましたので、また喜んでいただけるような作品が作りたいと思います。
勿論、こちらのお客様だけでなく、COCOA-MUの作品を手に取っていただけた全てのお客様には感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございます。
また、活動を再開した後はこちらのnoteやInstagramにもチャレンジして、ネット上ではありますが人の繋がりも楽しんでいます。色んな作品や価値観に触れて、いい刺激をいただき、作品に反映していきたいです。
まだ病は抱えているけれど～エンジンは温かい
今回は私の #エンジンがかかった瞬間 をお話させていただきましたが、いかがでしたでしょうか？
改めて文字にして振り返ると、なかなか怒涛の十年を過ごしたなぁと感慨深いものがあります。
心の病はなかなか難しく、少しずつ良い方向に向かっているとは思うのですが、また落ち込む時期もくるかもしれません。
ですが、私はもう知っています。
「私には何もできない」なんてことはないことを。
これからも楽しく、なおかつマイペースに羊毛フェルト作品やCOCOA-MUとしての活動を続けていきたいと思います。
私のエンジンは温かいです。
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