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【猫噺#4】高齢おひとり様が保護猫の里親になるまでの苦難(前編)

19歳で逝ったちびちび
 ウチで19年共に暮らした猫のちびちびが急逝したとき、もう新しい猫を迎えるのは止めようと思った。

 ただ、ちびちびが大好きだったCoCoは、毎日ちびちびの寝床の近くでまだ帰ってこないのかな、といった風に待ち続けた。

 何日かが過ぎ、CoCoもちびちびはもう帰ってこない、と悟ったようだ。
 その後、寂しさを紛らわせるかのように私にべったり、仔猫がえりしたようになった。

CoCo(左)とちびちび

 食べ物の好みもうるさかったちびちびだが、好きだったフードをお店で手に取り、ああ、もうちびちびは居ないんだった、と棚に返すこともあった。

 ウチに寄宿している猫たちは生い立ちが独特で、それぞれ食べられるフードがちがう。  
 全種をひとつのお店で調達するのは難しい。
 
 もう一匹だけ、受け入れようか。
 そんな考えがきざしていた。

 そのとき私は、待ち受ける苦難に気づいていなかったのだ。

様変わりしていた里親サイト
 自分が日本人男性の平均余命まで生き延びれば、いま受け入れた仔猫を最後まで世話できる。
 今回受け入れる猫が、天寿を全うしてやれる最後の猫になるだろう。

 これまでも何度か、猫の里親捜しのサイトにお世話になっていた。
 単身者への仔猫の譲渡はウエルカムでなくとも、飼育環境をみてもらい、誓約書を提出して譲渡してもらっていた。

 いまウチにいる茶白猫のCoCoとWAONは、里親サイトや譲渡会で譲ってもらった猫である。

CoCo(左)とWAON(右)

 
譲渡してもらう資格を満たさない!
 最後に里親サイトを通じて譲渡してもらったWAONクンはいま5歳。
 5年前と同じく、保護主さんに来訪してもらっても恥ずかしくないよう、掃除をしてトライアルを申し込む子を探してみた。

 CoCoが好きだったちびちびのような、小柄なメスがいいかな。
 まだ状況を把握していなかった私は、のんきな事を考えていた。

 里親サイトでめぼしい仔猫を観てみると、ほぼすべての保護主さんが『単身者不可』、『高齢者不可』、を謳っている。
 なかには、「連絡してこないでください」と強く拒んでいる方もいる。

 スタートラインに立つこともできず、門前払い。
 いったい、この5年ほどの間に何があった? 単身者、何をやらかした?
 

ニンゲン性を否定され?
 ネットで保護猫里親捜し、で検索すると、こうした譲渡条件への怨嗟に満ちた情報が上げられていた。
 どうやら、今の日本で保護猫の里親になれるのは、一部のエリート層のみらしい。

 さすがに凹んだ。
 自分のニンゲンとしての存在自体、否定されているようだった。

 もちろん正義は、譲渡側にあると理屈では理解できる。
 単身者が周りの人間関係が変わり、飼育を継続できない、として放棄する事案があったのだろう。
 また保護猫を譲渡してもらい、虐待したり実験に具したりする謎の組織(?)に警鐘を鳴らす人もいた。
 
 だから警戒されるのだろう、と頭では理解できても、自身の人間性を否定されるかのような扱いには、ひどく傷つくものがあった。

 それならば、と保健所での募集に目を移すと、どうしたことか里親サイトより条件が厳しい。
 家族全員の承諾があり、所員が飼育環境を確認し、飼育の講座を受講して始めて譲渡が許可される。譲渡の規則は地域によって異なるようだが、私が住む自治体は特に厳しかった。

 さらに緊急募集で、処分が迫っているので助けて下さい、という案件でも単身者不可、となっているのを目にして、さすがに呆れた。

 単身者に譲渡するくらいなら、処分されたほうがいいと言うことか? 単身者は虐待すると決めつけているのか?
 だんだんとこちらも被害妄想気味になり、卑屈な気分に陥っていた。

(【猫噺#5】高齢おひとり様が保護猫の里親になるまでの苦難(後編)に続く)
#エッセイ #猫 #保護猫 #里親  





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