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体臭の原因は汗だけじゃない?ニオイを発生させる意外な原因とは?

初めまして。COCO.libraryの新メンバーの亀迫です!
COCO.libraryでは2人目の男性スタッフで、
美容への知識が豊富な先輩方に囲まれて、日々精進しております。

突然ですが、仕事中の汗のニオイについて気になったことはありませんか?
暑いから汗をかくというよりも、プレゼン中の緊張で汗をかき、拭き取っているはずなのになんだかニオイが気になる・・・
こんな風に、意図せずかいた汗に対して、汗拭きシートなどで対策しても「何故か体臭が気になる」と悩んだことはありませんか?

実は、「ニオイ(体臭)は汗の影響だけでなく、日々の緊張や睡眠不足が影響している」ということが、様々な研究結果から分かっています。

普段、仕事中に緊張を感じやすかったり、睡眠時間を十分に確保することが難しい人はドキッとしたのではないでしょうか?(僕もその1人です・・・)

ニオイに関するアンケート調査によると、不快なニオイを感じとると、同僚や取引先の人であっても「一緒に仕事をしたくない」と感じる方が30%以上もいるという結果が得られました¹⁾。

実際にそんな風に思われていると思うと、ショックが大きいですよね。

今回は、知らず知らずのうちに発しているかもしれない、緊張や睡眠不足によるニオイの特徴やメカニズムについて、解説していきます。
また最後に取り入れやすいケア方法について紹介しますので、少しでも参考にしてもらえると嬉しいです!




汗以外のニオイの原因とは

まず前提として、私たちは汗臭を含めた体臭のもとになる「皮膚ガス」を体から発しています。皮膚ガスとは、人の皮膚から発生する微量な揮発性の化合物のことです²⁾。

それらの皮膚ガスが発生する経路は大きく3つあると考えられています²⁾。

①表面反応由来
└経路:汗や皮脂が皮膚上の常在菌や過酸化物と反応することで、皮膚ガスに変化して、皮膚表面から発散される。
②皮膚腺由来
└経路:汗腺や脂腺などの皮脂腺を通じて発散される。また汗の原料は血漿(けっしょう)なので、血中成分が汗腺から発散されることもある。
③血液由来
└経路:体内でのエネルギー基質(炭水化物、タンパク質、脂質)の代謝や生体内反応の過程で生成された血中の成分が揮発して、直接皮膚から発散される。

図1 皮膚ガスの経路
皮膚ガス測定は何に役立つか?, 関根嘉香他, におい・かおり環境学会誌, 48(6), 411, (2017) 図-1を参考に作成
図2 皮膚ガスの経路ごとのニオイ一覧²⁾
皮膚ガス測定は何に役立つか?, 関根嘉香他, におい・かおり環境学会誌, 48(6), 411, (2017) 表-1を参考に作成

①、②は汗や皮脂が主なニオイの原因なので、拭き取りや制汗などで対応できますが、③は血中の成分など体内環境が直接ニオイに影響することが分かります。

血液由来のニオイには飲食(ニンニク、お酒)や喫煙なども関わってきますが²⁾、今回は新たな視点である「緊張」「睡眠時間の不足」について紹介します!


ニオイの特徴とメカニズム

1.精神的な緊張によって発生するニオイ

近年、精神的な緊張時に比較的短期間で「油で炒めたようなネギ・ニラ様の匂い」を持つ皮膚ガスが発生する、ということが資生堂社から報告されました³⁾。

行われた試験は以下の通りです。

被験者40名の手首より先から発するニオイを、安静時と個室で初対面の人にインタビューされた時の2パターンのタイミングで、臭気判定士による官能評価・機器分析による評価を行った。

図3 ニオイの評価試験のイメージ
緊張時に皮膚から特徴的に発生する匂い成分, 勝山雅子他, 生物心理学と精神生理学, 36(2), 73, (2018) を参考に作成

この試験の結果では、被験者全員から「油でいためたようなネギ・ニラ様の匂い」が確認されたと報告されています。

詳しい発生メカニズムなどはまだ明らかになっていないとのことですが、精神的な緊張が体臭に影響していることが示唆されました。


2.睡眠時間が不足することで発生するニオイ

また、様々な研究報告からは、睡眠時間が不足すると血中のアンモニア濃度が増加し、鼻にツンとくるようなニオイが発散されることが分かっています²⁾。

アンモニアは、タンパク質やアミノ酸の代謝生成物として血中に存在している物質ですが、人体に対する毒性が高いので、ほとんどが肝臓で尿素に変換され、腎臓を通じて最終的に尿として排出されます。
しかし、アンモニアは尿として排出される以外にも、僅かながら皮膚からも発生していることが分かっています²⁾。

さらに、皮膚から発生するアンモニアは、運動や労働など身体への負荷精神的なストレス、肝臓でのアンモニア解毒作用が低下することによって増加することが知られています⁴⁾⁵⁾⁶⁾。

別の論文では、睡眠時間が短い期間(5時間±30分)と睡眠時間が長い期間(8時間±30分)で皮膚から発散されるアンモニア濃度を比較した結果、睡眠時間が短い期間の方が発散されるアンモニア濃度が増加したという結果も報告されています⁷⁾。

これらの情報より、睡眠時間が少ないと皮膚から発散されるアンモニア濃度が増加し、鼻にくるようなツンとしたニオイが強くなる可能性があることが分かりました。


緊張や睡眠不足が原因のニオイを抑えるには

ニオイそのものの消臭や抑制

これまでの説明で、精神的な緊張睡眠時間の不足によって特殊なニオイが生じる可能性があることをご理解いただけたと思います。

これらのニオイは血液由来なので、汗による拭き取りが難しいのが現状です。そのため発生したニオイそのものを無臭化させたり、抑制させることが必要になってきます。

それらの無臭化や抑制の方法については下記の記事にまとめていますので、気になる方は是非読んでみてください!(年齢ごとの体臭の変化やニオイを発生させやすい部位などもまとめられています。)

睡眠時間の確保が難しい方へ

睡眠時間が不足しているとアンモニア濃度が増加するリスクがあるため、出来る限り、睡眠時間を確保することをお勧めします!

とはいえ、すぐに睡眠時間を増やすことが難しいという方が多いと思います。

実は近年、食べ物と皮膚ガスの関係性についての研究が進められています。
例えば、オルニチンを摂取することで、運動によって発生する皮膚ガス中のアンモニア量を抑制する効果が示唆されています⁸⁾。
今後、食事の見直しでこれらのニオイ対策が出来るようになることを期待します。


ここまで読んでいただきありがとうございました。
今回の記事で「緊張や睡眠不足はニオイの原因」になることを知り、ニオイのケアだけでなく、ライフスタイルの見直しなどにも役立てていただけたら嬉しいです。

もし気になることや、この情報を調べてほしいなどがありましたらリクエストお待ちしております。


執筆:亀迫


参考文献
1) ニオイ(体臭)がすることで対人評価は「-54点」 印象に影響するのは視覚よりも嗅覚!?, 株式会社マンダム, news release, (参照:2024/06/24)
2) 皮膚ガス測定は何に役立つか?, 関根嘉香他, におい・かおり環境学会誌, 48(6), 410-417, (2017)
3) 緊張時に皮膚から特徴的に発生する匂い成分, 勝山雅子他, 生物心理学と精神生理学, 36(2), 73, (2018)
4) 生体情報センシ ングとヘルスケアへの最新応用“皮膚ガスの測定とヘルケアへの応用”, 関根嘉香, 技術情報協会, 404-413, (2017)
5) “医科アンモニア学”, 渡邊明治他, メディカルレビュー, 26-136, (1995)
6) ヒト皮膚から放散する微量生体ガスの測定と医療への応用, 関根嘉香, においかおり環境学会講演要旨集, 30, 8-9, (2017)
7) 睡眠不足に伴うストレスが生体発散物質放散量および知覚空気質に与える影響, 稲坂まりな, 日本建築学会環境系論文集87(792), 113-122, (2022)
8) アンモニア臭低減効果の検証, オルニチン研究会, オルニチンの研究サイト, (参照:2024/06/24)