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文学部卒から会計士試験に合格するまで

 私は大学時代、文学部に所属していた。文学部心理学科に在籍していたので、将来は臨床心理士や、近い領域の福祉職(言語聴覚士など)に就くつもりでいた。そのために積極的に職場訪問等させてもらっていた。しかし、それらの資格を得るには大学院ないしは学部卒業後の専門学校に通わなくてはならなかった。ゼミの先生にお願いして推薦書など書いてもらって受験したが、何と面接の場でお金があるか聞かれた。奨学金やバイトなどで何とかしようと漠然としか考えていなかったが、お金に余裕がないなら将来厳しい事になるから、やめておいた方がいいと言われ不合格。理不尽な思いをしたものだった(もちろん、今振り返ると的確なアドバイスを頂いたと思う)。

 それで急遽就活に参戦することになったわけだが、当時は就職氷河期。その後半ではあったがまだまだ厳しく、同級生の中には100社近く受けている友人もいた。圧迫面接なんかも横行していてメンタルが病んでいく友人も多くいた。私自身は圧迫されると反射的に適当にフワッと流すことができたので次回面接に進めたりしていたが、様々な仕打ちやお祈りメールに内心舌打ちしながらようやく不動産営業職のオファーを頂いたりはした。文句は言っていられない環境ではあったけれど、興味がもてず断ってしまった。

 さていよいよ行き詰っていたときに、小学生の頃に嫌々やらされていたソロバンのことがふと頭をよぎって、従妹が簿記の試験を受けているのを思い出したりしていた。また、バイト先の先輩に会計士受験者がいて、それまでは全く興味がなく聞き流していたのだが、そういえば会計士ってどんな仕事かと思ったのが受験のきっかけだった。

 大学からもらった奨学金を使わずに取っておいたため、大手の会計士受験予備校に通うことができた。しかし、企業取引の基本すら知らないためイメージがわかず取っ掛かりに非常に手間取った。予備校に通いながらも、結局は自分のペースでしか進められないとわかり、とりあえず問題を解きに行って自分が知らないこと、知ってたけど間違ったものを漏らさずメモした。その傍ら、初歩の初歩である簿記3級から始めて、左手での電卓打ち練習も毎日やった。巷にはいろいろな勉強法が紹介されていて参考にしようとしたが、緻密な学習計画などは自分の理解と暗記の定着度合が読めず、何よりめんどくさ過ぎてやってられなかった。テキストや答練問題を積み上げたら自分の身長を超えるような高さになる勉強量をこなす事が要求されているのだから、そんなことをするぐらいならテキストを1ページでも前に進めなければならない。そんな中で計算問題でも理論問題でも、ミスノートを作ることだけは最低限継続して、ミスを暗記するほど見返していた。やはり勉強法は単純で継続可能でなければ意味がない。

 ざっくり言うと、計算問題はインプットとアウトプットの比率が2:8、理論対策は5:5ぐらいだろうか。計算対策はひたすら問題を解いてミスノートをつけていくだけだった。理論対策のコツは、自分なりには「広く浅く、だんだん深く」を意識した。当然浅い知識と理解では合格は無理。全く知らなければ部分点ももらえないため、先ずは広く浅く。深く理解するとはどういうことかというと、合格のために有効なのは他の論点との類似点、相違点を把握すること、その理由を考えることかと思う。例えば、異なる会計基準同士で、認識や測定に違いがあるのか無いのか、違いがある理由は何か、違いが無い理由は何か、国内基準と国際基準の差異の根底にある考え方の違いは何かといった事を会計基準の結論の背景などから読み取るといいだろう。このあたりは予備校のテキストにまとめてあると思うが、自分なりに考えて課題意識を持って取り組まないと無味乾燥で頭に入って来ないのではないだろうか。

 このような勉強法を続け、しばらくは成績も振るわず悶々としていたが、分かる瞬間は突然やって来るもので、階段状に成績の上がる時期が合格までに3回ほどあったと思う。論文式試験直前は身内のトラブルが発生して勉強に時間を割けない日が多かったため焦りがあったことを思い出す。それでもミスノートの復習だけは欠かさなかった。実際問題として難しすぎる問題は出るが、出たとしてもほとんどの人は解けないし、部分点でももらえれば勝ちだと思うが、みんなが解ける問題を落としたら多分合格はない。そういう意味でもミスノートをつけて自分のクセを掴んでおくことは重要だ。ちなみに、簿記検定の結果は、3級70点、2級80点台、1級98点だった。最後に受けた1級は理論穴埋め問題をひとつ落としたものの、計算は満点だった。難易度が上がっても点数が伸びたのはおもしろいものだと思ったものだ。

 そして、ちょうど貯金が底をついて来月の支払いどうしようと思っていたところで合格通知が届いた。正確に言うと、内定先の上司が私より先に合否情報を把握していて、その上司からの電話で合格を知った。ドキドキしながら財務局の掲示板にある合格発表を見に行くつもりだったのに…

私のミスノートの付け方は以下で取り上げている。



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